Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第538号(2023.01.05発行)

編集後記

帝京大学先端総合研究機構 客員教授♦窪川かおる

◆明けましておめでとうございます。2023年は第4期海洋基本計画の開始が予定されている。第3期の検証を踏まえ、いよいよ深刻化するさまざまな海洋問題の解決に向けて、また海洋産業の発展に向けて、産官学連携、国際連携が進む年であろう。本年最初の号では、海洋の安全保障、持続可能な漁業と地域、海洋教育の3件を取り上げた。海を守り、利用し、知る方策を今年も読者と共に考えていきたい。
◆中国海警船による尖閣列島への領海侵入が常態化している。2021年は10年前の倍の40日、接続水域への入域は332日とほぼ毎日になった。中国海警局は2013年に創設され、2018年には人民武装警察部隊の指揮下に入った。軍事的活動と法執行活動の両面を持つ組織であり、制定された海警法の下に運用されている。そこには、国連海洋法条約によれば本来管轄権を行使できない海域における海警の業務を合法だとする条項がある。また海警船による領海侵入の先には、尖閣列島で操業する日本の漁船拿捕の恐れ、日本の巡視船への武器使用の可能性が危惧される。これらを合法とする海警法と国際法との齟齬について、坂元茂樹神戸大学名誉教授から検証結果をご寄稿いただいた。是非ご一読ください。
◆海業(うみぎょう)は、これからの漁業、水産業と共に漁村地域経済を支える第3の柱であり、「地域」が海と結びつく多種多様な経済活動全般である。2022年に相次いで閣議決定された新たな水産基本計画、新たな漁港漁場整備長期計画、「経済財政運営と改革の基本方針2022」の中に明記されている。婁小波東京海洋大学副学長・学術研究院教授より海業の全体像と社会的意義についてご教示いただいた。意義のひとつは、水産物の自給力の維持であり、そして自給率の向上に役立つことである。今後の海業への理解増進が期待される。
◆2019年に運用が開始された「海しる」(正式名は海洋状況表示システム)は、世界中からアクセス可能なデータベースで、海に関する多様な情報を一元化して一つの地図上で見ることができる。現在、250項目以上の海のデータが利用可能である。その「海しる」を学習で利用するための海洋教育コンテンツが2022年9月に公開された。世界の海から身近な海まで、どの海域の何を知りたいか、場合によっては好奇心の向くままに、海の状況を知ることができる。学年、単元ごとに分類されており、学校現場の利用も期待される。そこで、筆者の海上保安庁海洋情報部の海洋情報利用推進課海洋空間情報室の山尾理室長から読者へのお願いがある。使ってみて意見・感想をいただきたい。子どもたちの学習教材の向上のために、海への興味の喚起のために、ご協力を賜りたい。(窪川かおる)

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