Ocean Newsletter

オーシャンニュースレター

第528号(2022.08.05発行)

編集後記

帝京大学先端総合研究機構 客員教授♦窪川かおる

◆気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書によれば、大気中の二酸化炭素は、そのおよそ30%が海に吸収され、海洋生態系で吸収・固定される。そのため温暖化対策に海藻の役割が期待されている。日本は、海藻が生育する沿岸に恵まれ、海藻の食文化やアマモ場再生のような海洋生態系の回復に力を入れてきた。最近は、藻場再生を視野に入れた海藻の大量培養に成功したとの報もある。沿岸域および森里海の温暖化対策は身近な出来事である。
◆国土交通省港湾局産業港湾課の伊藤寛倫企画調査官よりカーボンニュートラルポート(CNP)について詳細を教えていただいた。CNPは港湾における脱炭素化の取り組みのひとつで、水素やアンモニアを受入れる環境の整備、港湾オペレーション、そして港湾地域の脱炭素化を進めようとしている。2021年には6地域7港湾で官民・事業者間が連携するCNP検討会が実施され、その後もCNP形成計画が次々に進められている。一方、2021年9月には日米豪印海運タスクフォースが始まるなど海外との連携も進む。国内外で活発に進められている脱炭素化計画についてご一読いただきたい。
◆海の生物多様性は、生態系の健全性に関する指標であり、気候変動の影響を知る手がかりとなる。最近は、環境中に残存する生物由来のDNA、すなわち環境DNAの配列と量を調べ、その時その場における生息種とその数をある程度知ることができる。北海道大学水産科学研究院の笠井亮秀教授は、全国22河川の河口域の環境DNAを分析して186種の魚類を同定し、河川ごとの種数と環境要因および土地利用との関係を分析した。そこからは、森川里海の複雑な連環が豊かな沿岸を作っていることがうかがえる。調査と保全に向けた成果を期待したい。
◆福井県立若狭高等学校(旧小浜水産高校)の小坂康之教諭より、高校生が開発製造した鯖缶を2020年12月に宇宙ステーション滞在中の野口氏が食すまでの一部始終をご寄稿いただいた。飛び散らない液汁、味付けなどの課題を克服し、2018年11月1日に宇宙日本食認証を得ている。この鯖缶開発には、前身の小浜水産高校時代から小坂教諭が全力で取り組み、実学である海洋教育を教育改革にまで引き上げた軌跡があり、海洋教育にとって現場である海と対峙することの大切さが示されている。(窪川かおる)

第528号(2022.08.05発行)のその他の記事

ページトップ