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第528号(2022.8.5 発行)

カーボンニュートラルポート(CNP)の形成に向けた取り組み

[KEYWORDS]水素・燃料アンモニア/陸上電力供給/国際協力・国際連携
国土交通省港湾局産業港湾課企画調整官◆伊藤寛倫

港湾・臨海部は、わが国のCO2排出量の約6割を占める発電、鉄鋼、化学工業等の多くが立地する産業拠点であり、港湾地域における集中的な脱炭素化の取り組みは、わが国の2050年カーボンニュートラルの実現に効果的・効率的である。
このため、国土交通省では、水素・燃料アンモニア等の受入環境の整備や、港湾地域の脱炭素化を図るカーボンニュートラルポート(CNP)の形成に取り組んでおり、わが国全体の脱炭素化に貢献することを目指している。

CNPの形成に向けた取り組み

港湾・臨海部は、わが国のCO2排出量の約6割を占める発電、鉄鋼、化学工業等の多くが立地する産業の拠点である(図1)。また、これらの産業等の脱炭素化に向けて活用が見込まれる水素・燃料アンモニア等の輸入・貯蔵等の場となるとともに、これらの脱炭素燃料の利用等によるCO2削減の余地が大きい地域である。このため、港湾地域において脱炭素化に向けた取り組みを集中的に行うことは、わが国の2050年カーボンニュートラルの実現に効果的・効率的であると考えられる。本稿では、港湾における脱炭素化の取り組みの柱の一つであるカーボンニュートラルポート(CNP)の形成に向けた取り組みを紹介する。
国土交通省では、水素・燃料アンモニア等の大量・安定・安価な輸入・貯蔵等を可能とする受入環境の整備や、港湾地域の脱炭素化を図るCNPの形成に取り組んでおり、わが国全体の脱炭素化に貢献することを目指している(図2)。
1点目の水素等の受入環境整備については、温室効果ガス削減の取り組みに重要な水素や燃料アンモニア等を利用するために、大量かつ安定・安価な調達を可能とする国際サプライチェーンが必要となる。水素・燃料アンモニアは化石燃料に比べて高額であるが、海外でブルー水素やグリーン水素を安価に製造し、大型船で日本に輸入することができるようになれば、コストが低減し、水素・燃料アンモニアの利用が進むと考えられる。国土交通省としては、海外での積出港における水素や燃料アンモニア輸出に対応した岸壁等の環境整備については、案件に応じて(株)海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)による民間事業者との共同出資によるリスクマネーの供給やハンズオン支援の活用について検討を進めていくとともに、国内では、港湾において必要な水素や燃料アンモニアの輸入・貯蔵等が可能となるよう、共通インフラの整備等に対する支援や、港湾の施設の技術基準の見直し等を検討することとしている。2点目の港湾地域の脱炭素化については、停泊中の船舶への陸上からの電力供給設備の整備、低炭素型荷役機械の導入、水素燃料化した荷役機械の導入、次世代船舶に対するLNG・水素・アンモニア等のバンカリング(燃料供給)等による港湾オペレーションの脱炭素化と、石炭火力発電における燃料アンモニアの混燃など、港湾・臨海部に立地する産業等の脱炭素化に取り組んでいく必要がある。
港湾・臨海部に立地・利用する多種多様な事業者等がこのような取り組みを行う上で、各事業者個別ではなく、官民・事業者間が連携して取り組むことにより、より多くの水素・燃料アンモニア等の需要を創出することができ、安定・安価な供給の実現にもつながる。このため、港湾・臨海部において官民・事業者間の連携を図るプラットフォームとして、2021年1月から3月にかけて、まずは全国の6地域の7港湾(小名浜港、横浜・川崎港、新潟港、名古屋港、神戸港、徳山下松港)において、地方整備局および港湾管理者が事務局となって官民一体の検討会(CNP検討会)を開催し、港湾・臨海部のCO2排出量、水素・燃料アンモニア等の需要ポテンシャル、利活用方策等について検討を行った。各港湾に立地する企業の特性、取り扱う貨物の種類等を踏まえ、港湾ターミナルにおける停泊中の船舶への陸上電力供給、荷役機械の燃料電池化、大型車両の燃料電池化、火力発電等における水素・燃料アンモニアの利用、これらの水素・燃料アンモニア等に係るパイプラインや貯蔵タンク等の受入環境の整備など、各港湾におけるCNP形成の方向性が示された。
その後、国土交通省港湾局は、2021年6月から同年12月に「CNPの形成に向けた検討会」を開催し、同年12月に『CNPの形成に向けた施策の方向性』および『CNP形成計画策定マニュアル(初版)』を公表した。今後、同マニュアルや令和4年度に創設した港湾管理者によるCNP形成計画の策定への支援制度を活用しつつ、各港におけるCNP形成計画の策定を促進することとしており、官民の関係者は同計画に基づく取り組みを進めていくこととなる。国土交通省としては、令和3年度から神戸港等において着手した陸上電力供給設備の整備を着実に進めていくほか、令和4年度から水素を用いた荷役機械の導入等に向けた実証事業等に取り組むこととしている。加えて、水素・燃料アンモニア等の輸入拠点港湾、港湾ターミナルの脱炭素化の取り組みを評価する認証制度等についても検討を進めていく。

■図1 発電所・製油所や産業が集積する港湾
■図2 カーボンニュートラルポート(CNP)の形成

国際協力・国際連携によるCNP形成の推進

海外の港湾でも脱炭素化の取り組みが進展している。例えば、米国のロサンゼルス港およびロングビーチ港では、CAAP(Clean Air Action Plan)が策定され、周辺の大気汚染防止や脱炭素化に向けた取り組みが進められている。この一環で、コンテナ船、クルーズ船等を対象に陸上電力供給が実施されており、コンテナ船では総寄港回数の80%で陸上電力供給または相当する措置を実施することが義務付けられている。同港においては、このほか、水素燃料電池化した荷役機械やコンテナトラクターの実証事業が行われるなど、先進的な取り組みが行われている。
また、2021年4月の日米首脳会談の共同声明において、「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」が立ち上げられ、その中で日米両国がCNP形成について協力することとされた。2022年3月には、「日米CNPワークショップ」が開催され、日米間の具体的な協力も進められている。さらに、2021年9月の第2回日米豪印首脳会合において「日米豪印海運タスクフォース」が立ち上げられ、その中でグリーンな海運ネットワークを形成していくこととされた。このほか、2022年2月、フランス大統領主催により開催された「ワン・オーシャン・サミット」において、2028年までに陸上電力供給に最善を尽くすこと等を内容とする共同声明が発出され、現在、日本の4港(東京港、横浜港、大阪港、神戸港)を含む30者が署名し、日本を含む14カ国が賛同している。
このような国際的な協力・連携を行いながら、CNPの形成を推進していくこととしている。(了)

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