◆わが国の海洋に関する諸施策は、海洋基本法および海洋基本計画に基づき、総合的かつ計画的に推進されている。おおむね5年ごとに同基本計画の見直しを行い、必要な変更が加えられている。現在は、2018年開始の「新たな海洋立国への挑戦」を基本計画の柱とする第3期海洋基本計画が進行中である(本誌第431号参照)。2021年12月、2023年に予定されている第4期海洋基本計画の策定に向けて、日本海洋政策学会・日本沿岸域学会合同アピール委員会が、『海洋・沿岸域の総合的管理の実現に向けたアピール~第4期海洋基本計画への政策提言~』を発表した。 ◆同委員会の共同委員長を務めた脇田和美東海大学海洋学部教授にその提言の内容をご紹介いただいた。示された内容は、地方公共団体が主体となり、海洋空間計画を策定すべきとする提言1、国の海洋空間計画を用いた排他的経済水域・大陸棚の総合的な管理の推進を目指す提言2、海の安全および安全保障の現実的な確保を目指す提言3、脱炭素社会の実現の鍵となる次世代の海洋産業の育成・創出を目指す提言4、そのためには海洋に関する人材の育成およびあらゆる人の理解の増進と国際協調の推進を目指す提言5の5つの提言である。将来にわたり海の恩恵を享受し、持続可能な生活を実現するために、ぜひこの提言をご活用いただきたい。 ◆人工ふ化への適応現象を「家魚化」と呼ぶことをご存じでしょうか。野生サケにこだわる札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表の森田健太郎氏に、豊平川に野生サケを増やすための同プロジェクトの活動につきご説明いただいた。野性味を高めるため放流数の見直しを行い、遡上数を1,000尾と定め、科学的見地に基づく放流数の順応的管理の提案とともに、サケの産卵環境や稚魚の成育環境の保全と再生の両立を図る試みは注目に値する。 ◆長津一史東洋大学社会学部国際社会学科教授には、東南アジア島嶼部、フィリピンのスル諸島、マレーシアのサバ州、インドネシア東部で海上や海辺に住む人口約110万とされるバジャウ人の資源利用の技法についてご寄稿いただいた。東南アジア海域世界の住民のなかでも離散移住の傾向が強いとされるバジャウ人のその理由が、中国向け輸出海産物であるナマコやフカヒレの採捕であると聞くと、市場経済の浸透力の強さを感ぜざるを得ない。彼らが海で生きていくための生存戦略は海の資源の確保であるという。ぜひご一読を。(坂元茂樹)
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