Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第517号(2022.02.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

◆国連環境計画(UNEP)が2009年の報告書で、藻場など海洋生態系によって吸収・貯留されるCO2をブルーカーボンと名付けて以来、ブルーカーボンは温室効果ガス対策として注目されている。日本は、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルを2050年までに目指すことを宣言した。排出する温室効果ガスのうち約9割がCO2である日本にとって、その削減と吸収は焦眉の課題である。
◆波の影響を緩和し護岸を保護する消波ブロックは、国土保全や防災上の観点から欠くことができない。鍵本広之電源開発(株)茅ヶ崎研究所所長からは、性能アップとコストダウンを実現した銅スラグモルタル製の消波ブロックについてご説明いただいた。銅スラグモルタルは、通常のコンクリート製消波ブロック製造の際のCO2発生量を43%削減する効果をもった低炭素素材とのことである。さらに同消波ブロックに付着した海藻によるCO2吸収によって、「環境調和型ブロック」にできないかとの取り組みを続けているとのこと。その成果に期待したい。
◆日本には416の有人離島が存在する。(一社)離島百貨店の杉崎存紗氏と小池岬(株)離島キッチン代表取締役から、これらの離島同士や離島と離島ファンをつなぐ事業提案や事業推進のサポートを行うプラットフォーム「離島百貨店」の活動と離島で獲れる魚介類の付加価値を高めようとして始まった離島キッチンプロジェクトについてご寄稿いただいた。離島キッチンプロジェクトを支えているのが、2005年に隠岐諸島にある海士町で導入された冷凍新技術CAS(Cells Alive System)であることは初めて知った。東京日本橋の総合アンテナショップ離島キッチンのホームページをのぞいて、その魅力に触れてもらいたい。
◆ヨッティング・フォトジャーナリストでバルクヘッドマガジン編集長の平井淳一氏からゴミのないきれいな海でのセーリングができるように、セーラーが進めている海洋保全やサステナビリティ活動についてご紹介いただいた。欧州で開催される国際ヨットレースでは、「ノンプラスチック」がキーワードになり、ペットボトルなどのプラスチックを使わない大会運営がなされているとのこと。日本でも、子どもたちを集めたセーリング体験イベント「フューチャーズ座間味レガッタ」で、海岸のゴミ拾いなどきれいな海を守る活動が行われているという。セーラーのみならずわれわれ一人ひとりがきれいな海を守るために何ができるかを考えたい。(坂元茂樹)

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