Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第513号(2021.12.20発行)

編集後記

日本海洋政策学会会長◆坂元茂樹

本誌442号で山形俊男前編集代表が述べたように、「地質学の時代区分によれば、われわれは安定した気候の『完新世(Holocene)』に生きているはずであるが、人類の活動に起因した地球環境の急激な変化により、地質年代に『人新世(Anthropocene)』を導入しようとの議論が生じている」。提唱者であるステフェン教授らによる「人新世」という言葉はどうやら市民権を得たように思われる。
◆平朝彦東海大学海洋研究所所長からは、人新世研究の拠点を目指す同研究所の活動についてご寄稿いただいた。東海大学海洋研究所は、2021年度から、海洋環境保全を基軸に島嶼部の海洋管理制度を研究する国境・離島研究センター、三保半島にある年間を通じて水温17℃の地下水を利用した三保サーモンのブランド化などの研究を行うアクアカルチャー・テクノロジーセンター、富士川河口から急斜面が一挙に1,500mの深さまで連なる駿河トラフから成る駿河湾における総合的海洋研究コアプロジェクトの3つの組織で活動している由。海洋を中心に添えた地球・人間の持続性研究を、国際連携を通じて取り組む同研究所の活躍に期待したい。
◆森田孝明長崎大学研究開発推進機構長特別補佐から、海洋エネルギー産業の拠点形成を目指す長崎県の活動についてご紹介いただいた。海洋未来イノベーション機構を立ち上げた長崎大学は、2019年に日本財団との連携により「長崎海洋開発人材育成・フィールドセンター」を開設し、2020 年にはアジアで最初となる洋上風力発電の人材育成拠点である「長崎海洋アカデミー」を発足させ、80社の企業が参加するNPO法人長崎海洋産業クラスター研究推進協議会が運営を担っている由。先行するエジンバラ大学は産学の連携による次世代人材育成システムの「IDOCORE」を構築しているとのことで、同大学と連携しながら「日本版IDOCORE」を目指す長崎大学の動きを注視したい。
◆(公財)笹川平和財団海洋政策研究所と(株)三菱総合研究所の共催で開催された「海の万博」セミナーシリーズの総合司会を務めた2021ミス日本「海の日」の吉田さくら氏からご寄稿いただいた。万博が開催される大阪は、2019年のG20大阪サミットで、「ブルーオーシャン・ビジョン」を採択し、会場の夢洲は海に囲まれた人工島であり、海の魅了を伝え、イノベーションによる様々な課題解決策を示す場になる必要があるとの吉田氏の指摘は重要である。持続可能な海洋に向けて私たちができることは何かをみずみずしい感性で語る論文をぜひご一読ください。(坂元茂樹)

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