Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第508号(2021.10.05発行)

編集後記

帝京大学先端総合研究機構 客員教授♦窪川かおる

♦第4期海洋基本計画において重点的に取り上げるべき科学技術・イノベーションの課題を議論するため、海洋技術フォーラムの令和3年度第1回シンポジウムが9月6日に開催された。政策研究大学院大学の田中明彦学長の基調講演に続き、洋上風力、国際海運ゼロエミッション化、海底鉱物資源、海洋空間計画のそれぞれの分野の第一人者による講演、浮体式洋上風力をテーマとするパネルディスカッションがあり、日本の実情と今後への提案など高密度な議論が展開された。参加者は出入りを含めて1,000人以上だったという。2050年カーボンニュートラル達成に向けた海洋産業の進展が注目される。
♦洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会は、2020年12月に「洋上風力産業ビジョン(第1次)」を発表し、本格的な洋上風力の導入に向けたスタートを切った。(株)三菱総合研究所サステナビリティ本部寺澤千尋主任研究員より、そこで設定された3つの目標と注意すべき視点を教えていただいた。例えば、導入目標は国の認定を受けた案件形成目標であること、発電コストは発電原価を指すことなどで、寺澤氏は、注意深く内容を理解し議論を進めていくのが重要だと説く。官民協議会での議論に注目し、洋上風力の進展を期待したい。
♦新型コロナウイルス感染症による医療のひっ迫で、医師の地域偏在・診療科偏在の問題を改めて思った。平時でもへき地離島には医療の心配がある。小泉圭吾医師は、周囲約4km、人口300人弱の鳥羽市神島の診療所所長であるが、令和2年度国交省スマートアイランド推進実証調査に採択されたオンラインを基盤とする新しい離島医療の提案者でもある。それはクラウド型電子カルテと遠隔診療支援プラットフォームによるTRIMetバーチャル鳥羽離島病院の開業だという。離島に暮らす住民に素敵な人生を送り続けて欲しいと願う医療改革を是非ご一読いただきたい。
♦練習船おしょろ丸を有する北海道大学水産学部・大学院水産科学研究院は、2016年より日本財団「海と日本PROJECTサポートプログラム」の助成を受け、「海の宝をめぐる学びと体験 マリン・ラーニング」を進めている。プログラム代表の川合祐史副研究院長よりそれについて詳細をご寄稿いただいた。WEBコンテンツも含む展示型イベントには全国で毎年数万人以上が参加しているという。また「海の宝」作品コンテストは、全国の中高校生が応募する。2019年にはWEB上の「バランスド・オーシャン」教育プログラムを開始し、水産科学の次世代育成が期待される。(窪川かおる)

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