Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第488号(2020.12.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦2020年10月21日、国土交通省において第13回海洋立国推進功労者が表彰された。受賞者の皆様に心よりお祝い申し上げたい。国土交通省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省の5省が実施し、科学技術、水産、海事、自然環境など海洋に関する幅広い分野にわたる表彰は、海洋国家にふさわしい。4名3団体の御功績は本誌487号の巻末に掲載されている。その中に東海大学海洋学部の名がある。功績の内容は、海を総合的に学べる日本で唯一の「海洋学部」とある。国連海洋科学の10年が2021年から始まるが、その10年間、海洋国家を支える人材育成が重要であるがゆえに心強い受賞である。
♦2020年7月25日にパナマ船籍の貨物船WAKASHIOがモーリシャス沿岸で座礁した。8月になると油流出によるモーリシャス沿岸の海洋生態系への被害に関心が高まった。WAKASHIOは長鋪汽船(株)が所有し(株)商船三井が傭船した船舶であり、損害賠償責任と賠償額が注目されている。流通経済大学法学部の大西徳二郎准教授より、この事故を例に海商法について論考をいただいた。油流出による海洋生態系への影響は大きな事故だけに限らない。科学技術と法律と海運業と、様々な課題を共有して解決を目指している。
♦三重県南伊勢町の田曽白浜海岸では、流れ着く人工物、海藻などの漂着ごみを人の力だけでなく、農耕用トラクターも使って効率よく処理している。2年余り前から始めた海岸を耕すこの取り組みを、日本ヘリシス(株)の稲田竜太代表取締役より教えていただいた。ウミガメの産卵に配慮し、砂中で海藻を自然分解させるなど、海岸の自然も守っている。コロナ禍が明けた暁には、多くの人々が海岸に戻り、人と自然とが共生しながらさらに地方創生事業も発展することを期待したい。
♦(国研)海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、2019年度に海洋科学技術戦略部(MaSTS)を設置した。その中にある広報課は、研究成果の発信と人々の海洋リテラシー向上という重要な役割を担う。コロナ禍にある2020年、様々なアウトリーチを迅速に展開している。その活動をMaSTSの豊福高志部長と同広報課の市原盛雄課長代理にご紹介いただいた。JAMSTEC for Students、JAMSTECチャンネル“海の研究”こども質問部屋、オンライン講座、書籍の書評動画企画、高知コア研究所のサイエンス相談窓口など、子どもから大人まで誰もが楽しく海とその研究者を知ることができる。50周年になるJAMSTECのポストコロナを見据えたさらなる飛躍が楽しみである。(窪川かおる)

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