Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第482号(2020.9.5 発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦海の輸送は日本の輸出入貨物の99.6%になる、と話すと生徒達から一斉に驚きの声があがる。この数字で海への関心度が一気に上がる。もう一つある。地球上に存在する海水の量を、直径13cmの半円を地球だとして書き入れると、シャープペンシルの芯より細い約0.1mmの厚さになる。聾学校の高校地学の一コマである。意外に狭い海だからこそ海の環境を守ることは本当に大切だと説明が続く。工夫で頑張る先生方を応援したい。
♦新型コロナウイルスにより外航海運業の課題が明らかになった。その対策への国内の動向と船員交代の国際的動向について関西外国語大学の宮下國生教授に詳説していただいた。まず、国土交通省海事局安全政策課の通達を受けて、(一社)日本船主協会は、『新型コロナウイルス(COVID-19)に関するガイダンス』を公表している。船員が発症した場合の措置を重要項目としているという。さらに船員交代について国際海事機関がその措置や手順を示すとともに、法的可能性を検討するに至ったが、入港拒否が続く中で、まだ厳しい状況にあるという。船員保護を願って止まない。
♦海は大気中に排出された二酸化炭素の約1/4を吸収し、地球温暖化の進行を遅らせていると言えるほど単純ではないと、気象庁気象研究所研究総務官でIOCCP-GOOS生物地球化学パネルの共同議長である石井雅男氏に論説いただいた。現状は、温暖化加速の可能性とそれに伴う海洋酸性化による危機感が強まっているという。温暖化の進行に抗する手段は、海洋観測の地道な継続による信頼できるデータの提供であると石井氏は強調する。そして「国連海洋科学の10年」にある炭素循環についての価値連鎖の概念は、海の問題解決への道程と私達の関わりを気付かせてくれる。是非ご一読いただきたい。
♦1980年代前半には日本~欧州間の貨物輸送にシベリア鉄道が利用されていたが、その後輸送コストの逆転などで利用が激減した。しかし発災時等の代替輸送手段の確保として海上輸送以外の検討が必要であると、2013年の国土強靭化基本法と国土強靭化計画に指摘されている。シベリア鉄道を用いてパイロット輸送を実施した国土交通省大臣官房の宮島正悟参事官よりその重要さをご教示いただいた。当時より輸送日数や輸送品質に改善が見出されている。さらに極東港湾への就航便数が増加すればシベリア鉄道の利便性が高まる可能性があるという。今後の輸送手段の多元化の検討に期待したい。(窪川かおる)

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