Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第470号(2020.03.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦3月3日は雛祭りである。日本の五節句のひとつだが、その由来は中国にある。3月初めの不浄を払う行事であったが、日本に伝わった後に女子の健康と成長を祈る桃の節句になったという。疫病が流行れば穢れを祓い清めるしかなかった時代のことである。現代の医療の進展は別世界である。しかし、今回のクルーズ船に対する対応では、新型コロナウィルスの感染阻止に難しさがみられた。医療だけでなく船や海に関する専門家の意見も求められることであろう。あらためて、海を知り、船を知る海洋リテラシーの大切さを思った。
♦香川大学地域強靭化研究センター長の金田義行特任教授に「海学」の勧めをご寄稿いただいた。海学は、「海を学ぶ」また「海から学ぶ」ものである。たとえば東日本大震災で明らかになった様々な課題への対処や海洋観測網の整備などに両視点が活かされている。また若い世代への海学の啓発も大切である。さらに、海洋に自然災害の発生システムがあることを学び、多方面から海を理解することで、海学が、海との共存、地球との共存のためのガイドラインのひとつとなることを目指している。
♦琉球王国は、首里の王による強力な中央集権の下、15世紀には東アジア有数の交易国家となり、小さな島国が明との外交と交易を成長させ発展させていた。当時の成功の仕組みについて沖縄県浦添市立図書館館長の上里隆史氏より詳細な解説をいただいた。琉球王国は、港湾都市の那覇並びに附属する王都が突出した都会と、それ以外の農村社会の二重の社会を特徴とした港市国家であったという。その歴史は、現在のわが国の国際化に対する示唆に富むもので、多彩で多様な地方の特徴に通じるものであると上里氏は考えている。2019年10月31日の首里城焼失の重大さをあらためて想う。
♦東海大学海洋学部は、1962年に松前重義が設置した日本で初めての海洋に特化した学部で、東海大学の創設者の理念は今も心を打つ。その海洋学部に2020年で50周年となる博物館が付属している。東海大学海洋学部博物館の伊藤芳英係長に博学連携による海洋教育プログラムについてご紹介いただいた。博物館と学校教育の連携以外に産官との連携も好評だという。教育プログラムのひとつは、深海魚ミズウオを材料とした海ごみの環境教育プログラム、もうひとつは、海洋プランクトンを餌とするシラスを使って食物連鎖や自然の大切さを学ぶプログラムである。博物館の活動を是非ご一読ください。(窪川かおる)

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