Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第466号(2020.01.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

あけましておめでとうございます。2020 年もよろしくお願い申し上げます。
♦今年は海洋の大きな話題が続く。まずは6月2日から6日までリスボンで国連海洋会議が開催され、続いて6月8日に世界海の日となる。そして7月23日の「海の日」を祝い、7月24日からは東京オリンピック・パラリンピックが開幕する。さらに「国連の持続可能な開発のための海洋科学の10年」が9月の国連総会に提案され、承認されれば2021年より開始される。世界でもわが国でも、大小様々な海の話題が詰まった1年となるであろう。昨年来より注目されている海洋プラスチック問題も、これからが本番である。
♦昨年6月にG20大阪サミットが開催され、海洋分野の2つの議論に注目が集まった。これについて、外務省国際協力局長(前地球規模課題審議官)の鈴木秀生氏に解説をいただいた。ひとつは海洋プラスチックごみによる新たな汚染を2050年までにゼロにすることを目指す『大阪ブルー・オーシャン・ビジョン』である。わが国では、2018年に『海洋プラスチックごみ対策アクションプラン』が策定され、この問題の解決への取り組みが始まっている。もう1つはIUU(違法・無報告・無規制)漁業対策である。いずれの問題も私たちの生活に直結するものである。是非お読みいただきたい。
♦「ブルーカーボン」は、グリーンカーボンの対語として2009 年に誕生した概念であるが、その重要さがますます重くなってきた。シルヴァストラム気候アソシエーツ湿地科学・沿岸域管理主任研究員のSteve Crooks 氏と同気候政策・財政主任研究員Moritz Von Unger 氏よりブルーカーボンの意義と利活用について教えていただいた。ブルーカーボンを全地球規模で適用し展開するための行動は6つあるという。そのうちのひとつにグリーンボンド市場の成長に続く経済効果の可能性があげられている。巨大な温室効果ガスの吸収源・貯蔵庫としてのブルーカーボンの生態系の保全と利活用の進展を期待したい。
♦大学の運営費交付金の減少や教員数の減少が、大学教育の質や研究力の劣化につながることが懸念されている。海洋学とその周辺分野の人材育成にも大きな影を落としている。海洋学の学際性を維持し充実した教育を実施する方法として、東北大学名誉教授の花輪公雄氏より「大学教育コンソーシアム」構想をご提案いただいた。その柱は多様な教員を有する複数の大学の協働である。同様な発想で2016年度に立ち上がった「火山研究人材育成コンソーシアム構築事業」は現在も拡大中であるという。先達の御尽力に学び、海洋分野の人材育成を急がなければならない。(窪川かおる)

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