Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第464号(2019.12.05発行)

編集後記

帝京大学戦略的イノベーション研究センター客員教授♦窪川かおる

♦師走に入った。師走の語源は諸説あるようだが、1年の終わりは誰でも忙しい。恒例行事が入ると尚更である。そのひとつは大掃除だろう。年末には古刹の本堂の大掃除がしばしば放映される。1年のほこりを拭い、新たな年を迎えるためとはいえ、水仕事や屋外作業は寒くて冷たくて辛い。しかし、年末の大掃除は、けじめと文化継承の大事な行事である。
♦2019年7月1日、わが国の商業捕鯨は、科学的根拠に基づいて水産資源を持続的に利用するとの基本姿勢の下に再開された。200海里水域内の限定である。その前年2018年12月26日にわが国は国際捕鯨委員会(IWC)から脱退している。東京海洋大学海洋政策文化学部門教授の森下丈二氏より、約30年の商業捕鯨モラトリアムを経てわが国が脱退を決意するまでの経緯をご寄稿いただいた。森下氏はIWC日本政府代表(2013年から2019年)、同議長(2016年から2018年)を歴任され、長年IWCに携わっておられた。本稿の最後は、捕鯨問題が生物資源や国際社会の広範な問題のシンボルになると結ばれている。
♦本誌のバックナンバーを見ると、捕鯨問題を扱った記事は、森下氏のものを含めてNo.5(2000年)、No.42(2002年)、No.60(2003年)、No.108、No.127(2005年)、No.144(2006年)、No.189(2008年)、No.235(2010年)とある。ご関心のある読者は本誌とあわせてお読みいただければ幸いである。
♦NPO法人ヴォース・ニッポンは、海上輸送に関わる企業が運用する自社船で協力する「篤志」の海洋観測をサポートしている。代表理事の中島直彦氏より観測方法や利用などについてご寄稿いただいた。今までに日本とタイランド湾あるいはオーストラリアを結ぶ航路で観測が実施され、2017年からは日本通運(株)のRoRo船「ひまわり8」に観測機器を搭載して東日本沿岸航路での観測が行われている。精度よく経時変化が取れる貴重なデータである。取り組みの発展を期待したい。
◆大阪湾は、大阪港、神戸港、関西空港など主要な港や空港がある。これらは湾奥部に集中するが、その水質環境はよくない。しかし、湾口部には浅場や藻場があって、アマモが生息し、のり養殖やワカメ養殖ができる地域があるという。湾奥部の環境を湾口部に近づけたいとNPO法人大阪湾沿岸域環境創造研究センター専務理事の岩井克巳氏は考えている。2025年の大阪・関西万博の会場は湾奥部にある人工島なので、豊かな大阪湾を実現してアピールすることを目指しているという。大阪湾に魅力を感じる機会となることを願う。(窪川かおる)

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