Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第461号(2019.10.20 発行)

海底ケーブル敷設修理船の役割と社会貢献

[KEYWORDS]ケーブルシップ/社会貢献/光海底ケーブル
国際ケーブル・シップ(株)代表取締役社長◆安楽孝明

1980年代後半に運用を開始した大西洋ならびに太平洋を横断する光海底ケーブルを皮切りに多くの国際光海底ケーブルが建設され、現在では、国際通信の99%以上は、総延長が地球30周分にもなる全世界の海底ケーブルを経由している。
平穏と思われる海底でも地震などの自然災害や漁労などによる人為的な活動が海底ケーブルに障害をもたらすことがある。
海底ケーブルの建設や修理作業を行う国際ケーブル・シップ(株)の取り組みを紹介する。

ネット社会を支える海底ケーブル

1988年〜1989年に運用を開始した大西洋ならびに太平洋を横断する光海底ケーブルを皮切りに多くの国際光海底ケーブルが建設され、今日では全世界の海底ケーブルの総延長は地球30周分(約120万km)にもなります。また、ケーブルあたりの通信容量は当初の280メガビット/秒から60テラビット/秒(テラはメガの100万倍)以上へと飛躍的に拡大しています。
これにより、かつては衛星通信に依存していた国際テレビ伝送も海底ケーブルが主たる媒体として利用されており、株取引やEコマース、YouTubeなどの動画サービスなどを含め現在では国際通信の99%以上は海底ケーブルを経由しており、海底ケーブル通信の途絶は通信そのものの途絶に直結すると言っても過言ではありません。
このような海底ケーブルの建設にあたっては多額の資金を要するため、(株)海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)、世界銀行、アジア開発銀行の資金が活用される事例もあります。

光海底ケーブル/ 右から左へ浅海用→深海用となり、外力による影響の少ない深海用ほど細径となる

海底ケーブルの障害

平穏と思われる海底でも地震などの自然災害や漁労などによる人為的な活動が海底ケーブルに障害をもたらすことがあります。特に海底で発生する地震は海底地すべりを誘発させ、そこに敷設された海底ケーブルに甚大な被害をもたらす場合があります。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、計20カ所以上の海底ケーブルの障害が確認されました。国際ケーブル・シップ株式会社(KCS)の所有する海底ケーブル敷設修理船KDDIオーシャンリンク(KOL)は11カ所の修理作業に従事し、実に150余日を費やして漸く当該修理工事を完了しました。福島第一原発の事故による影響を懸念して多くのケーブル船事業者が躊躇するなか、防護服やサーベイメータによる空間線量の計測などによる防護体制を整え、他のケーブル船に先んじて最速で現場に入り修理作業を開始しました。修理作業に加え、KCSは海底ケーブルの建設にあたっても、海底の状況に応じたより安全なルートや敷設方法を提案し、災害に強い海底ケーブルネットワーク作りに寄与しています。

北海道胆振東部地震における海上基地局としての対応

2018年9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震では、主力電源である火力発電所の罹災により大規模停電が発生し、被災地では携帯基地局の補助バッテリーの枯渇により携帯電話網がシステムダウンしました。
KCS/KDDIではケーブル船KOLに搭載された携帯基地局設備を人命救助や被害復旧に生かすため、地震発生の当日のうちに緊急出港させ、早くも罹災2日後には新日高町の沖合にて臨時の海上携帯基地局を開局して携帯ネットワークを復旧させ被災地の孤立防止に寄与しました※1

ケーブル船KDDIオーシャンリンク全景、総トン数9,510トン、太平洋の概ね西半分という広範囲な保守範囲を持つため、ケーブル船としては高速(15ノット)の船速を有する

ケーブル船の特徴

光海底ケーブルの修理には海上の一定点に止まる必要があるため、ケーブル船にはGPSの測位信号を利用し、風波に抗してプロペラや舵、スラスターを調整し船を所定の位置に半ば固定できるダイナミックポジショニングシステム(DPS)が装備されています。また、ケーブルの繰り出しや巻上げに使用するケーブルエンジン、船首または船尾のシーブなどがケーブル船の特徴的な装備として挙げられます。2,500mの水深でのケーブル作業が可能な水中ロボットも船上に装備されています。
通常は50数名が乗船し、多い年には年間200日以上運航し海底ケーブルの敷設や修理に従事します。

ケーブルエンジン(左)、船首のシーブ(右)

ケーブルの接続技術

光海底ケーブルの建設・修理には、光海底ケーブル同士を接続する技術が不可欠です。現在の光海底ケーブルの接続はケーブルの製造メーカの違いによる構造や通信容量の異なる海底ケーブルを相互に接続できる「UJ(Universal Joint)」と呼ばれる接続技術が全世界的なデファクトスタンダードになっています。この技術はUJ Consortium※2と呼ばれる企業連合によって開発され、25年という長期間の実用に耐える機材の設計と高品位の技術標準が制定されています。
ケーブル建設・修理の際のケーブル接続では、このUJ Consortiumが詳細に定めたカリキュラムによる技術訓練を受け、認定された接続者のみが従事することで長期間の接続品質を担保しています。UJ Jointerとしての資格は2年毎に更新訓練を受けることにより資格更新がされるルールとなっており、KCSはUJ Consortiumのメンバーとして技術開発や評価に積極的に関わっています。また、KCSでは接続技術を訓練するInstructorの資格を有する複数名の社員を本邦で唯一有し、自社のトレーニングスクールでUJ Consortium 認定の初期認定訓練や再認定訓練を提供するなど、社内外の接続技術者の養成に寄与するとともに接続技術の評価試験なども行っています。
このようにKCSのケーブル船は卓越した技術に裏打ちされた本来のケーブルの建設と修理に加え、災害の復旧においてもインフラを支える使命を全うすることより広く社会に貢献しています。(了)

  1. ※1海上からの携帯ネットワーク復旧の日本初の事例となった
  2. ※2UJ Consortium についてはhttps://ujconsortium.com/ を参照
ページトップ