Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第459号(2019.09.20発行)

編集後記

同志社大学法学部教授♦坂元茂樹

♦2019年現在、詳細な海底地形データは全地球のわずか15%しか明らかになっていない。海底地形の解明は、津波の予測や船舶の航行安全にとって不可欠である。2030 年までにそのデータを100%にしようという試みが、日本財団と大洋水深総図(GEBCO)の共同プロジェクト「Seabed2030プロジェクト」である。2004年より日本財団はGEBCOと協力して、海底地形図を作成する専門家の育成を米国ニューハンプシャー大学で行い、すでに39カ国90名のフェローを輩出している。
♦米国の非営利組織「XPRIZE 財団」が主催する水中探査ロボットによる水深4,000mの海底地形データ収集を目指す国際コンペティションで、このフェローによる日本財団奨学生チームが優勝した快挙につき、海野光行(公財)日本財団常務理事からご寄稿いただいた。世界中に散らばったメンバーによる優勝は、多様性がもつ力を再認識させる。ぜひご一読を。
♦波利井佐紀琉球大学熱帯生物圏研究センター准教授からは、地球温暖化の影響により白化する沖縄でのサンゴ礁研究の現状についてご寄稿いただいた。海水温が浅場より低く保たれている深場は、白化を招く高水温からのサンゴの避難地となる可能性があるという。世界に先駆けた沖縄における深場サンゴ礁の研究に期待したい。
♦石原広恵東京大学大学院農学生命科学研究科助教からは、2020東京オリンピック・パラリンピックの開催に際し、2018年4月に発表された『持続可能性に配慮した水産物の調達基準』と漁業・養殖業の持続性の関係についてご説明いただいた。同基準は、国連食糧農業機関(FAO)が定めた『責任ある漁業のための行動規範』を満たしつつ、漁業関係者の労働環境に配慮して生産された水産物を使うことを条件としている。2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピックから始まった制度であるが、こうした調達基準を満たしたことを示すのが、認証制度、推奨リストである。この制度は消費者側のニーズは満たすが、認証コストをカバーするだけの原価の値上げができない生産者側の問題が潜むという。(坂元茂樹)

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