Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第457号(2019.08.20発行)

令和最初の記念行事観艦式とその由来

[KEYWORDS]観艦式/自衛隊記念日/国際親善
防衛省海上自衛隊海上幕僚監部観艦式事務局長、一等海佐◆金子純一

10月14日、「令和最初」となる観艦式が4年ぶりに実施される。
観艦式は部隊の士気を高めるとともに、自衛隊に対する国民の理解と信頼を深める機会でもある。
関連行事として前日および前々日の事前公開、前の週末の10月5、6日には横浜、横須賀などでの広報イベントも計画されており、多数の御来場を頂きたい。

観艦式の由来と帝国海軍の観艦式

観艦式は、観閲官が艦隊を観閲することにより部隊・隊員の士気を高め、併せて、自衛隊に対する国民の理解と信頼を深めるものであり、国際親善や防衛交流を促進する機会にもなっています。観艦式の起源は1341年、英仏戦争のとき英国王エドワード3世が自ら艦隊を率いて出撃する際に、その威容を観閲したことに始まるといわれています。
一方、わが国の観艦式に関する歴史は1868(明治元)年天保山で行われたことに始まります。同年3月、明治天皇陛下をお迎えして、大阪・天保山沖で実施された「艦兵式(軍艦叡覧)」が観艦式の始まりであり、このときは天保山の陸上から参加艦をご覧になりました。当時の参加艦は各藩所属の6 隻でした。また、このときはフランスの軍艦も参列し、大阪湾において藩所属の軍艦とともに21発の礼砲の発射を行ったとあります。
「観艦式」という言葉が最初に使われたのは、1900(明治33)年神戸沖で行われた大演習観艦式でした。また、帝国海軍最後の観艦式は、1940(昭和15)年横浜沖において実施された紀元二千六百年特別観艦式であり、艦艇98隻、航空機527機が参加した大規模なものでした。
なお、観艦式の実施方式は、停泊方式と移動方式があります。停泊方式は観閲を受ける艦艇(受閲艦艇)が整列して停泊している間を、観閲官を乗せた艦艇(観閲艦艇)が航行する形態です。移動方式は観閲艦艇および受閲艦艇が双方とも航行しながら観閲する方式になります。停泊方式は受閲艦艇が航行しないことから狭い海域で行うことが可能ですが、移動方式は双方の艦艇が航行することから広い海面が必要です。近年のわが国における観艦式は移動方式で場所は相模湾で実施しています。

海上自衛隊と観艦式

平成27年度観艦式の様子

海上自衛隊としては、1957(昭和32)年から記念行事の一環として観艦式を実施しております。
2002(平成14)年には海上自衛隊創設50 周年の節目として、国際観艦式を東京湾において停泊方式で実施しています。このときの規模は、諸外国艦艇11カ国17 隻の参加を得て海自艦艇24隻とあわせて晴天のなか粛々と実施されました。このように、海上自衛隊においても観艦式は回を重ね昭和で17回、平成で11回実施しています。
諸外国でも観艦式は実施されており海上自衛隊の艦艇も参加しております。過去数年だけ見ても、2017(平成29)年5月にシンガポールで行われた国際観艦式に護衛艦「いずも」、「さざなみ」が参加し、同年11月にタイ王国で行われたASEAN設立50周年記念国際観艦式には護衛艦「おおなみ」が参加、このときは「おおなみ」の乗員が市中パレードにも参加し、陸上行進を整斉と行いタイ王国市民からの賞賛の声を得ております。最近でも2019(平成31)年3月のマレーシアで行われた国際観艦式に護衛艦「あさぎり」が、同年4月に中国の青島で行われた人民解放軍海軍成立70 周年多国間海軍活動の国際観艦式には護衛艦「すずつき」が参加しており、いずれの寄港地においても観艦式を通じて各国海軍との親交を深めております。
わが国の直近の観艦式は2015(平成27)年に実施されています。出港地は横浜、横須賀、木更津であり、浦賀水道を南下した後、相模湾にて実施されました。観閲官である内閣総理大臣は艦艇および航空機を観閲、その後、護衛艦による祝砲発射や航空機による対潜爆弾投下などの訓練展示により海上自衛隊の能力の一端をご覧になりました。また、外国艦艇は5カ国(アメリカ、オーストラリア、フランス、インド、韓国)6 隻の参加を得ております。その他、航空自衛隊のブルーインパルスも参加し、華やかさを添えました。
なお、観艦式では国内外の要人並びに数万人もの一般の方々を安全に迎えるため、各部隊はさまざまな準備を実施します。岸壁においては、一般の方々でも安全かつスムーズに自衛艦に乗退艦できるよう隊員が準備を入念に行います。また、自衛艦では、旅客船と異なり一般の方々にとってバリアフリーとは言えない突起物や、足元の段差などがあります。これらを取り除くことはできませんが、目立つようにテープを貼り注意喚起をしたり、急角度の階段では警戒員を配置したり、安全確保のための準備を入念に行い、乗艦者を迎えております。

令和最初の観艦式

今年の秋4年ぶりに10月14日に観艦式が実施される予定です。その前日、前々日には観艦式事前公開が実施されるほか、前の週末である10月5日および6日には横浜、横須賀などで広報イベントを計画しており、観艦式全体を盛り上げていきます。また、体験航海の一般公募を8月31日まで海上自衛隊のホームページで受け付けております。
すでに観艦式に先駆けて観艦式のロゴマークおよびキャッチフレーズを一般から公募し、数多くの応募をいただきました。この中から、新しい時代にふさわしい「君の未来、この海とともに。」がキャッチフレーズとして選定されました。また、ロゴマークは、右図のような海に舞う日本の代表的な花である桜がデザインされ、海を舞台に活躍する海自艦艇、航空機が航行、飛行するさまを印象深く表現されている作品が選定されました。
令和元年度観艦式に関する情報は海上自衛隊ホームページにおいて令和元年度観艦式特設ページを設けて掲載中です。内容は逐次更新しておりますので、是非ご覧ください。(了)

令和元年度観艦式ロゴマーク。わが国を代表する花である桜をコンセプトとして作成されている。

  1. 令和元年度観艦式について。https://www.mod.go.jp/msdf/fleetreview/2019/

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