Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第422号(2018.03.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆東北地方太平洋沖地震は7年前の3月11日に発生した。今年もこの日を前にし、東日本大震災からの復興が続いていること、日本列島と周辺の海が揺れ続けていることを思う。地震・津波の発生メカニズムの解明は続けられ、津波警報の早期発表と精度向上につながる。現在、海底地震津波の大規模な常時観測網が、日本海溝(S-net)と南海トラフ(DONET)で稼働している。継続と長期の科学技術政策が必要である。その上で地震・津波警報が出たらどうするか。社会と科学をつなぐ研究者の役割も大きい。
◆福島県の放射能汚染の問題は、長期にわたり漁業に大打撃を与えた。新地町の漁師のドキュメンタリー映画制作への思いを山田 徹監督よりご寄稿いただいた。放射能汚染水問題が続く限り本格操業には至らない上に、原子力発電所の地下水バイパス計画に巻き込まれる漁師の苦悩。そして再開した海の神様の祭りの高揚。いずれの時も、漁師として生き、漁師として海を守ろうという漁師の誇りで満ちている。一方私たちは、と最後に厳しい問いがある。ぜひ、ご一読いただきたい。
◆東日本大震災の教訓は数多ある。その最大のものは、地震・津波の想定時も発生時も、過小評価をしてはならないことである。そこで、津波の想定に物理的根拠と歴史的根拠の2段階が設けられ、それぞれに対して防災・減災対策が講じられている。その一端を関西大学の高橋智幸氏よりご紹介いただいた。地域防災力の向上への能動的防災教育、海面の流れを観察する海面レーダーの研究開発と普及が進められている。教訓を生かす責任という心強いメッセージもいただいた。
◆南海トラフ巨大地震による津波が想定されている黒潮町は、『黒潮町南海地震・津波防災計画の基本的な考え方』に基づいた取り組みを、行政と住民とが一体となり実現させている。黒潮町長の大西勝也氏より教えていただいた。新想定は衝撃的であるが、海を否定せず、海の恵みに感謝し、次世代にふるさとを引き継ぐ営みは変わらないと町長は宣言している。 (窪川)

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