Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第420号(2018.02.05発行)

編集後記

東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

◆水産業におけるIT活用の発展が著しい中で、日本のICT漁業・養殖業の横展開が、インドネシアの海面養殖業で実施されている。それについて公立はこだて未来大学マリンIT・ラボ和田雅昭所長よりご紹介いただいた。ICTを資源管理のための情報共有に不可欠な道具だと漁業者が納得し、実際に使う側とICT開発側との無理のない共同作業が必須であるなどの説明に頷きつつ、両者の相互理解が進む過程には思わず引き込まれる。
◆横浜国立大学統合的海洋教育・研究センター(海センター)は、海洋基本法施行の2007年に、海に関する部局横断的な研究・教育の推進を目的に設置された。海洋基本法に謳われる目標の実現に向けた10年間の貢献とその成果を水井涼太講師にご寄稿いただいた。大学院副専攻プログラム「統合的海洋管理学」での人材育成、多様な共同研究の推進、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)での学際的海洋研究、市民向け公開連続講座による発信や海洋都市横浜との連携など、成果は数えきれない。「日本財団」助成研究プロジェクトの終了を機に改組し、2018年度から「大学院教育強化推進センター」として大学院教育システムを継続し、学際的海洋研究も続行する。海センターが撒いた種は発芽し、花が咲きつつある。実がなるのはもうすぐである。横浜国立大学の海洋研究・教育のさらなる発展を願う。
◆2月6日は海苔の日である。1966年に全国海苔貝類漁業協同組合連合会により定められた。その由来は701年の大宝律令に遡る。江戸時代には、品川から大森にかけて海苔づくりが盛んであったが、東京湾の開発とともに縮小し、1964年には終了した。今でも大森駅周辺には海苔問屋が多い。大森には、海苔養殖の歴史を伝えるユニークな大田区郷土資料館「海苔のふるさと館」がある。その活動を小山文大館長よりご紹介いただいた。
◆この施設には海苔のあらゆる情報が詰まっている。その中にイギリスの海藻学者ドゥルー女史による海苔養殖への科学的貢献がある。彼女は、夏から秋に行方不明であったノリが、実は微小な胞子となって貝殻に潜り込み、それが糸状体になると再び胞子となって海中に放出されていることを1950年頃に発見した。ノリが見えなかったはずである。彼女はこれを九州大学瀬川宗吉教授に伝え、熊本県の試験場で人工種苗法が開発された。海苔養殖業者は、生産性の不安定さと厳しい労働から解放されたのである。 (窪川)

第420号(2018.02.05発行)のその他の記事

ページトップ