Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第395号(2017.01.20発行)

編集後記

国立研究開発法人海洋研究開発機構アプリケーションラボ所長◆山形俊男

◆冬の寒さをものともせずに、近くの公園では子どもたちが元気に駆け回っている。それを見下ろす白木蓮の枝先には多くの蕾が膨らみ始めた。英国詩人シェリーは「冬来たりなば春遠からじ」と詠んだが、ラニーニャ現象も終息に向かい、今年の春は例年より早めに訪れそうだ。
◆国内ではあまり大きな話題にならなかったが、米国のオバマ前大統領はアラスカ沖と北東部ニューイングランドからチェサピーク湾におよぶ広大な海域で石油と天然ガスの新規開発を無期限に禁止する決定を下した。カナダ政府もこれに呼応し、北極圏のカナダ海域全域を今後の洋上石油・ガス権益リースの除外区域に指定した。任期満了を目前にして、北極海域の海洋環境と生態系の保全に向けた強力な手を打ったことになる。トランプ新大統領が国連の持続可能な開発目標(SDGs)と整合的なエネルギー政策を取るのかどうかは世界が注目するところである。
◆今号の最初のオピニオンでは(国研)海洋研究開発機構の白山義久氏に新しい海洋研究船「かいめい」の役割について解説していただいた。海底資源、深海の環境と生態系、海底地質構造、それぞれの調査において最新鋭の機器と機能を備えた新造船である。慣熟航海を終えて本格的な調査が始まれば、多くの貴重なデータが続々と得られるであろう。持続可能な開発には海洋の調査研究は不可欠であり、この面での飛躍的な進展が楽しみである。
◆次のオピニオンでは山形県海洋教育研究会の佐藤 淳氏に森、川、海を繋ぐ沿岸域における海洋教育の実践活動について紹介して頂いた。海を守り、活かし、興すには海に親しみ、海を知ることがまず大切であり、それには親しみやすく具体的な海の学びのプログラムを充実させる必要がある。地域の様々なステークホールダーや大学と連携し、更なる展開を期待したい。
◆最後のオピニオンでは内航船に初めて女性船長を誕生させた(有)三原汽船の三原廣茂氏に男女共同参画に向けた熱い取り組みについて語って頂いた。こうした先駆的な試みを更に支援すべく、国土交通省は女性船員の活躍促進に向けて「海の女子会」を企画しているが、男女共同参画に向けた具体的な取り組みが行われるようになったのは素晴らしいことである。新古今和歌集の代表的な女流歌人である藤原俊成卿女は、『無名草子』のなかで「いでや、いみじけれども、女ばかり口惜しきものなし。昔より色を好み、道を習う輩多けれども、女のいまだ集など撰ぶことなきこそ、いと口惜しけれ」と撰者にもなれない女性の地歩の低さを作中人物に嘆かせている。「・・・男性と同じ仕事をして、同じ待遇、同じ給料、昇進を得るという硬い決心があった。むろん差別はしてほしくない」という女性たちの言葉に大和撫子の変わらぬ強さを見ることができた。 (山形)

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