Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第38号(2002.03.05発行)

第38号(2002.03.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者 ((社)海洋産業研究会常務理事)◆中原裕幸

◆「手術はしたが患者は死んだ」にならざるを得ないところまで日本経済は来ていると、立花隆氏は言う(朝日新聞、2月10日)。同氏はその結びで、「ニューディール政策のような未来に夢と希望を持たせる、未来投資型の事業を国家主導で起こすことである」と説いている。はたと膝をうった読者諸氏も多いのではなかろうか。沿岸域から200海里EEZや大陸棚まで、それぞれの海域における調査、開発・利用・保全に関する海洋プロジェクトこそが、これに合致する未来投資型の国家事業ではなかろうか。果たして文部科学・学術審議会海洋開発分科会の答申案では、10年先を見据えたわが国の海洋問題に関する国家的展望と方向性が示されるであろうか?

◆「海が今、死にかけている」と警鐘を鳴らしているのは日本滞在も永いJ.モイヤー氏である。海洋環境改善事業という「手術」はもう手遅れであろうか。いや、わが国の海にも場所によってはまだ健全さを何とか保っている海域もあるのではないか、瀕死の重症の手前段階に踏みとどまっている海もあるのではないか。しかし、見かけ上回復しつつありそうな海も実はまだ最悪状態を脱していないのかもしれない。そうした「現状に気付くこと、そのための教育活動」を謳い、「ローインパクト」の姿勢でそれを実践する同氏の草の根における活動は、全国各地の多数の知られざる同様の実践と共鳴しあって、大きなウネリを形成する素地となるにちがいない。拙稿でも紹介したが、「海洋・沿岸域の健全さなくして地球上の持続性ある開発はありえない。」

◆故Borgese女史の足跡に敬意を表し、改めて冥福をお祈りするとともに、SustainableDevelopmentの実践の世紀を切り開くのが、後に続くわれわれの使命と心しなければなるまい。合掌。(了)

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