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オーシャンニューズレター

第364号(2015.10.05発行)

第364号(2015.10.05 発行)

「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟した富山湾について

[KEYWORDS] 世界で最も美しい湾クラブ/美しい富山湾クラブ/立山連峰
美しい富山湾クラブ理事・事務局長◆高桑幸一

富山湾は、海越しに見える雄大な立山連峰の景観が素晴らしいだけではなく、定置網による水産資源保護活動やシロエビなど興味深い動植物が存在することが評価されて、「世界で最も美しい湾クラブ」への加盟が承認された。
富山湾のブランド力にさらに磨きをかけ、その魅力を国内外に発信するために「美しい富山湾クラブ」が誕生し、これまでにない発想と展開で活動を行っている。


世界で最も美しい湾クラブへの加盟

2014(平成26)年10月、富山湾は「世界で最も美しい湾クラブ」への加盟が承認されました。世界で最も美しい湾クラブとは、ユネスコが支援する国際的組織で、フランスのモンサンミッシェル湾、アメリカのサンフランシスコ湾、ベトナムのハロン湾など、世界的に著名な38湾が登録されています。その中に日本から平成25年度に松島湾が、そして平成26年度に富山湾が加盟を認められたのは、とても栄誉なことだと思います。

雄大な富山湾の景観

■富山湾の雨晴海岸から見える立山連峰

富山湾は、海越しに見える雄大な立山連峰の景観が素晴らしいだけではなく、次の基準を満たしていると判断され、加盟が承認されました。
・湾は保護政策の対象:定置網による水産資源保護、清掃活動による海岸保護
・興味深い動植物が存在:ホタルイカ、寒ブリ、シロエビ
・地域住民にとって象徴的存在:海越しの立山連峰、蜃気楼や埋没林などの神秘
・周辺地域に経済発展の潜在性:漁業の振興、湾クラブ加盟を活用した観光振興
右図を見ていただければおわかりいただけるように、氷見から見た立山連峰は、1,000m位の裾野から3,015mの頂上まで、良く見えることが分かります。海越しに見える山といえば、伊豆から見た富士山も素晴らしく、立山連峰の迫力ある神々しさとは違って、優美な姿はさすがに世界遺産です。
さて、立山連峰の景観はどのくらい世界的に珍しいのかを、海から3,000m級以上の山が見えそうだと言われている場所について、地図と標高データで調べてみました。
地中海からアルプスが見えるのではないかと期待しましたが、1,000m級の山と丸い地球に阻まれて、全く見えないようです。ナポリから見たベスビオス山について紹介された記事もありますが、1,000m級の山に過ぎません。また、太平洋からアンデス山脈が見えるのではと言われますので調べてみると、チリのバルパライソから最高峰のアコンカグアは見えませんが、5,000mの高地が見えるようです。しかし、知られていないと言うことは、それほどの景観ではないのでしょう。以上、調べた範囲では立山連峰と富士山の景観は世界的にも抜きん出て素晴らしいことが分かります。もし、この記事を見られた人で、海から3,000m級の山脈が見える景勝地をご存じの方がおられましたら、お知らせ頂ければ幸いです※。
富山湾は、雄大な景観が素晴らしいだけでなく、ほんの50数kmの距離で標高3,000mから流れ落ちる激流がそのまま海底1,000mにまでつながっていることで、不思議な世界を見せてくれます。表面を流れる流量と同じくらいの水が地下水となって、海底から湧出し、蜃気楼を現出させたり、太古の世界の埋没林が海中に保存されたりするほか、その美味しい水が、ホタルイカやシロエビなどの美味しい海の幸を育んでくれるなど、実にミラクルでデリシャスな富山湾です。

美しい富山湾クラブの設立

世界に認められた富山湾ですが、問題も多く残っています。海岸の清掃活動にも関わらずゴミはなくならず、温暖化の影響か漁業資源の減少が懸念され、漁業就労者が減少し続けています。また、せっかくの景観を活かした湾岸にカフェは少なく、リゾートホテルも少ないようです。課題だらけのように思いますが、逆に、まだまだ富山湾の魅力を向上させる余地がたくさん残されているとも言えます。このため、世界に認められた富山湾のブランド力に磨きをかけ、その魅力を国内外に発信して多くの人に来て頂くと共に、後継者を育てて永続的な活動を行っていくことを目的に、「美しい富山湾クラブ」が2015年5月10日に設立されました※。
名誉顧問に石井隆一富山県知事、顧問に湾岸9市町長、会長に永原功北陸経済連合会名誉会長、副会長に髙木繁雄富山県観光連盟会長と板倉 均北日本新聞社社長、理事長に四方正治富山県セーリング連盟会長、そして理事には湾岸の各観光協会、仕事を営んでいる漁協、農協、商工関係の団体、海でヨットやボートを楽しんでいる団体、海岸清掃ボランティア団体、ユネスコ協会などに就任頂くとともに、オブザーバーに、水族館や博物館、行政、そして笹川平和財団海洋政策研究所所長にも就任頂きました。地域と分野を横断した組織を横糸と縦糸のようにつなぐことによって、今までにない発想と展開を行っていくことで、さらに富山湾の魅力を向上させることができたらと期待しています。

美しい富山湾クラブの活動

■美しい富山湾クラブのオブザーバーに就任して頂いたタモリさん

■世界で最も美しい湾クラブのロゴマーク

その最初の取り組みとして、富山県セーリング連盟が開催するタモリカップ富山大会において、タモリさんに美しい富山湾クラブのオブザーバーに就任頂きました。タモリカップは地形好きで、ヨットマンのタモリさんが主催する、日本で一番多くの人が集まる楽しいイベントですが、県内外の人に富山に来て頂き、富山湾の素晴らしさを知っていただくと共に、富山の賑わいを創出する起爆剤にできればと思います。
次に計画しているのが、「世界で最も美しい富山湾ロゴマーク」と「湾アップ提案」の募集です。現在は、世界で最も美しい湾クラブのロゴマークを活用していますが、富山湾の素晴らしい景観をイメージしたロゴマークを作成することによって、富山湾への関心を高めるとともに、富山湾のブランドイメージを向上させることができないだろうかと考えています。また、富山湾に関する施設や商品に使用して頂くことにより、施設の知名度と商品力の向上に寄与できたらとも期待しています。
「湾アップ提案」とは、富山湾をより魅力的にする提案を広く募集し、素晴らしい提案については、行政や各組織の協力を得て実現していきたいと考えています。どんな提案が出てくるか楽しみです。一つ一つ実現していくことによって、10年後はさらに素晴らしい富山湾になっていると期待しています。この記事を読んでおられる皆様からも、ご提案を頂けましたら幸いです。ぜひ、世界で最も美しい富山湾にお越し頂き、雄大な景観を楽しんで頂くとともに、甘エビやシロエビ、寒ブリやホタルイカなどの美味を味わって頂き、さらに今後の変遷も見守って頂けますようお願い申し上げます。

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