Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第352号(2015.04.05発行)

第352号(2015.04.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所名誉教授)◆秋道智彌

◆待ちに待った春到来。この4月から海洋政策研究財団が改組され、笹川平和財団海洋政策研究所となった。引き続き、読者各位とともに海をめぐる多様な問題について考えていきたいとおもう。
◆今回の記事を読んで、海の空間的な広がりに思いをはせることができた。冒頭でフランス国立海洋開発研究所のY・エノック氏は海の健康度を地域的な広がりからメスを入れる取り組みについて紹介されている。海の健康度は、人間の場合とおなじくいくつもの指標を元に診断される。しかも、リージョンとして海を捉える発想は、東アジアにおけるわが国の位置を考える布石となる。日本海、東シナ海、オホーツク海、フィリピン海を含めた地域海において、今後ともに海洋資源だけでなく安全保障の観点も含めた海のガバナンス論が注目されるだろう。
◆わが国の海洋教育の現状を考えると、歴史、地理などの教科を超えた地域海へのまなざしが重要ではないかという思いに至る。ブルーシー・アンド・グリーンランド財団の菅原悟志氏の海洋教育への思いと取り組みは注目すべきだ。国民の海離れ傾向は、海という空間を日常から遠ざけ、体験を通じた海に関する学びとその意味をないがしろにしている。地域海における諸課題をふくめ、未来を見据えた海洋教育こそ国、地域、学校が一体的に進めるべき現代の課題であることはまちがいない。スマホの画面ではなく、青い海を眺め、潮風に吹かれ、海水にふれる体感を通じて豊かな創造性をもつ子どもたちを育てたいものだ。
◆大人を含め子どもたちに伝えたいのは、人間が大型船や航空機を利用して大陸間移動するようになるはるか前から、生き物たちが海を越えて生き続けてきたことを学んでほしい点である。国立極地研究所の渡辺佑基氏が指摘されるように、大回遊する魚や海鳥の生きざまからみれば、世界の海は案外せまいのかもしれない。世界の海で発生している人間の領有権争いなどは生き物から一笑にふされるだろう。海の生き物から、東アジアの「井の中の蛙」と言われたくはないものだ。(秋道)

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