Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第314号(2013.09.05発行)

第314号(2013.09.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表((独)海洋研究開発機構上席研究員/東京大学名誉教授)◆山形俊男

◆この夏は8月12日に四万十市で観測史上最高の41℃を記録するなど、連日の猛暑で、日本列島周辺の海水温も上昇し、海洋生態系にも大きな影響が出はじめた。北海道東の海域ではクロマグロの豊漁があったが、一方で親潮系冷水の南下が重要な秋のサンマ漁が心配である。沖縄の海では海水温が30℃を超えて、サンゴの白化現象が深刻化している。中国南部の半世紀来という干ばつ、中国東北部から朝鮮半島北部を経て、東北、北海道南部に帯状に伸びる前線帯での集中豪雨、米国中西部で多発している山火事など、世界各地で異常気象の振幅が大きくなっている。気象庁が集中豪雨の警報で「これまでに経験のないような大雨になっており、直ちに命を守る行動を取ってください」という表現を採用するに至ったのは象徴的である。これから秋霖前線が活発になる時期になる。更に注意を怠らないようにしたい。
◆極域の海氷が減り、この夏は北極海航路も熱い。中国の国有海運大手である中国遠洋運輸は大連とロッテルダムを結ぶコンテナ船の試験航行を開始した。スエズ運河を経由するこれまでの航路に比べて最大で二週間程度短縮できるようである。旭化成ケミカルズなども、ノルウェーと倉敷市の水島コンビナートの間にナフサタンカーを就航させた。地球の温暖化は人の健康、生態系、産業・経済など実に多くの分野で影響を示し始めた。
◆今号では柱本健司氏に、(公財)かながわ海岸美化財団による、20年以上にも及ぶ海岸清掃活動について寄稿していただいた。海岸ごみの約7割は川から流入するものだという。この神奈川県の活動が全国に広がり、海に接していない自治体も含む流域単位で、産官民が協働する体制が確立して欲しい。川は海と沿岸域を結ぶが、沿岸域を繋ぐ拠点として海の駅が全国各地に展開され、既に140カ所以上にも及ぶ。海を楽しむマリンレジャー拠点の充実は海洋基本法の精神がめざすところでもある。森 裕貴氏には海の駅を推進してきた2組織が連携し、本年6月に発足した「海の駅ネットワーク」について解説していただいた。道の駅と同様に、地域の特性を生かして、人と人、地域と地域を繋ぐ、豊かなビジネスモデルの展開も楽しみである。本号の最後のオピニオンはインドネシアのバリ島を拠点にして世界の環境問題に関わってきた高間 剛氏によるものである。サーファーでもある高間氏は、海の現場体験こそ海洋環境問題に情熱的に取り組むのには重要であるという。昨今、机上の作業が多くなった編集子には耳の痛い提言である。(山形)

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