Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第248号(2010.12.05発行)

第248号(2010.12.05 発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(東京大学大学院理学系研究科教授・研究科長)◆山形俊男

◆今年もはや師走が近づいてきた。政治や経済の世界からは鬱陶しいニュースが聞こえてくるばかりだが、科学の世界では根岸英一、鈴木 章両博士が合成化学への著しい貢献でノーベル化学賞を受賞し、惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワの物質を持ち帰るなど素晴らしいニュースが続いた。自然界ではラニーニャ現象がこの冬に最盛期になる。夏の猛暑で近海の水温が高いことを考慮すると、平成18年豪雪のような状況が出現しても不思議ではない。この冬は荒天に注意したい。
◆今号ではまず山根広大、大竹二雄両氏が宮古湾を産卵場にし始めたニシンの生態について報告する。湾奥の伏流水の存在がその生育に重要な役割をしているという。まさに森・川・海の総合的管理の重要性を裏付ける成果である。工藤君明氏は中国で進展著しい深海技術について紹介する。トップダウン型の研究開発は決断も早く、極めて効率よく進む時がある。一方で、ボトムアップ型の研究開発は資金も不足がちで、効率もよいとはいえないが、時に画期的な発見を生むことがある。海洋開発においても二つのアプローチを調和的に進めることが重要であろう。上原春男氏は海洋温度差発電が海水淡水化、希少金属回収、漁場形成などで極めて有効であることを具体的な数値を示して力説している。再生可能エネルギーに関しては、潮汐、風力、太陽光による発電などが実用化しているが、海中のシステムに関してはその耐久性を向上させるだけでなく、氏が説くように複合的に活用することがコスト削減につながり、ビジネスモデルへの道を開くことになるのであろう。これは海水ウランの捕集についても言えることである。(山形)

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