Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第213号(発行)

編集後記

ニューズレター編集代表(総合地球環境学研究所副所長・教授)◆秋道智彌

◆コンパクトビレッジとは耳慣れないことばだ。本誌で大分大学の佐藤誠治さんが国東半島の沖に浮かぶ姫島を取り上げ、島の元気のもとについて語っている。姫島にかぎらず、漁村は集住地区を作る傾向がある。猫が狭い路地をウロウロし、お母さんたちのにぎやかな声が響きわたる。瀬戸内海沿岸では、女性たちがお父さんや息子の獲ってきた魚を売り歩く姿がかつては見られたものだ。姫島でもそうした光景を見ることができるのだろうか、などとおもいながら楽しく読ませていただいた。
◆平成の大合併を拒否した町や村は全国にいくつもある。本誌で以前に登場した岩手県上閉伊郡の大槌町、和歌山県東牟婁郡の太地町などもその例だ。大槌も太地も島にあるのではないがともに漁村である。アワビやサケで著名なのが大槌。捕鯨で有名なのが太地である。合併をしなかったのは、町に自信があったからばかりとはいえない、いろいろな事情もあるだろう。姫島の人々が抱える将来への不安は「比較的恵まれた経済条件と生活環境」に共通するという佐藤さんの解釈を、姫島以外の場所でも検証したら面白いのではないだろうか。
◆島根県境港は漁業の盛んなところとばかり思っていたらとんでもない。大型コンテナ船に対応できる立派な港湾をもち、環日本海の海上輸送の拠点を目指すという。これも元気の出る話だ。境港市長の中村勝治さんの意気込みを感じる。ただし、環日本海オアシス都市は境港だけではく、敦賀、舞鶴、新湊、新潟、小樽など、日本海にある多くの港との連携も重要ではないだろうか。都道府県や地域ブロック別の考えよりも、海のネットワークは広域的でしなやかさを特徴とするはずだからだ。
◆海上保安庁の松下由紀香さんの「かるた」作りも楽しい話だし、PRグッズとしても奇抜な発想だ。それにしても、正月にかるたで遊ぶことがどれだけ全国で行われているのか。ゲーム機に熱中する子どもの顔が目に浮かぶ。ここで駄作を一つ。わ-われはカズノコ ニシンの子。  (秋道)

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