Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第213号(発行)

「環日本海オアシス都市」を目指して

KEYWORDS 境港市/環日本海/物流拠点
境港市長◆中村勝治

鳥取県境港市は、天然の良港として古くから港を中心に発展してきた。
これから迎える「環日本海時代」を前に、本市では対岸諸国との地理的優位性を活かし、西日本における「北東アジアのゲートウェイ」としての地位を確固たるものとしていくことは、本市のみならず、鳥取・島根両県にまたがる中海(なかうみ)圏域全体の発展につながるものである。

港とともに歩む
境港市は、鳥取県の北西部、弓浜半島の北端に位置し、島根半島が天然の防波堤の役割を果たす自然条件に恵まれ、古くから港を中心に発展してきました。江戸時代は、諸国の千石船の往来で賑わい、明治以後は日本海国内航路の要衝として、中国や朝鮮半島の各港と航路で結ばれ、日本の主要港湾として対岸貿易が盛んでありました。
戦後、大陸との定期航路は閉ざされましたが、1951年には重要港湾(商港)に指定され、日本海側では数少ない5万トン級船舶にも対応できる岸壁の整備も進み、現在では大連や上海、釜山港と週4日、5便の定期コンテナ航路で結ばれるなど、日本海側有数の国際貿易港としての整備拡充が着実に進んでいます。
環日本海拠点都市会議による交流促進
境港市と北東アジアを結ぶ定期航路
戦後途絶えていた日本海沿岸諸国との交流が近年活発になっており、とりわけ北東アジア経済圏域の発展可能性が有望視されています。
このような認識のもと、人的交流のみならず、物流の拡大による環日本海圏域の一体的発展を目指し、1994年から、中国、韓国、ロシアの環日本海沿岸の都市と「環日本海拠点都市会議」を毎年開催しています。第1回の会議から、環日本海地域の各港を結ぶ定期航路の必要性を参加各都市で確認してきましたが、その成果として2000年4月に束草と琿春を結ぶ定期フェリー航路が開設されました。現在では、境港と東海(トンヘ)(韓国)、ウラジオストク(ロシア)の3カ国を結ぶ定期貨客船航路の計画が韓国の船会社によって進められており、2009年6月末には就航する予定です※1。
環日本海時代を切り拓く定期貨客船航路
境港が競争力を持った港となるためには、他の港に先駆けて対岸諸国を結ぶ「海の道」を開設し、「人・モノ」の交流を促進して名実ともに北東アジアに向けた西日本のゲートウェイの地位を確立することが必要であると考えます。
本市の位置する鳥取・島根両県にまたがる中海(なかうみ)圏域は、自然豊かで、数多くの歴史文化施設があり、韓国・ロシアでも人気の温泉やゴルフなどが楽しめるため、1年を通じて海外から多くの観光客に来ていただけるものと期待しております。2007年に県境を越えて発足した中海市長会※2(松江市・安来市・米子市・境港市)で、外国人観光客の受け入れ態勢整備を急ピッチで進めているところです。また、貨物についても、貨客船の定時性をPRするとともに、シベリア鉄道の活用も視野に入れ、山陽・関西など西日本一円にポートセールスを展開して、貨物の確保に取り組んでいきたいと考えております。
環日本海定期貨客船航路の実現による経済効果は約100億円が見込まれており、地域経済活性化の起爆剤になりうるものと大いに期待しているところです。航路の安定維持に向け、鳥取県や中海市長会で連携して取り組んでいきます。
■境港市全景
■ガントリークレーン/■荷積
6月にウラジオストク~境港間の定期貨客船が就航の予定。環日本海の3カ国を結ぶ航路が生まれる。
リサイクルポート指定に向けた取り組み

世界的に環境への関心が高まるなか、地球温暖化等への対応策として「モーダルシフト」が推進されています。また、資源の保護・育成・有効活用に加え、限りある資源をより効率的に流通させ、リサイクルを進めていく資源循環型社会の構築が求められています。
世界同時不況により国際物流が縮小するなか、港湾の利用促進を図るうえで、本市では、これらを踏まえ資源循環型企業の誘致を推進するとともに、リサイクル事業専用岸壁の整備計画を基に、海上輸送によるリサイクル資源の国際的な静脈物流の展開を目指し、鳥取県とともにリサイクルポート指定に向けた取り組みを進めています。

「環日本海オアシス都市」を目指して

本市は、重要港湾・境港に加え、韓国・仁川空港と国際定期航空路線を結ぶ米子空港など、海と空の「港」を兼ね備えています。また、環日本海諸国と近接するという地理的優位性を有しており、山陰、山陽、四国および関西など、西日本の北東アジアに向けたゲートウェイを目指したまちづくりに取り組んでいます。
本市は、官民一体となって環日本海経済圏の貨物や観光客の開拓・確保を積極的に行い、「人・モノ」の「交流」によるにぎわいを創出し、地域の活性化につなげるとともに、水(海)に恵まれ緑豊かな自然環境のもと、市民をはじめ本市を訪れるすべての人々に「やすらぎ」と「うるおい」をもたらす「環日本海オアシス都市」を目指してまいります。(了)

※1  「日韓露定期貨客船:来月末に就航予定 DBSクルーズ社が料金発表」(2009年5月21日 毎日新聞朝刊より)
※2  中海市長会HP

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