Ocean Newsletter
第213号(発行)
海上保安庁のPRグッズ「七管・門司かるた」を作った理由
海上保安庁は創設60周年を昨年迎えたものの、まだまだ認知度が低いと感じています。海での事件・事故をなくすためにも、警察や消防のことを誰もが知っているように、海上保安庁のことも知ってもらいたい。子供も大人も。
そのきっかけになれば......。そう願って、私はこの「七管・門司かるた」を作りました。
海上保安庁って、知っていますか?
ここ数年、近所の小学校を訪れて出前授業をする機会があり、児童たちに「海上保安庁って知っている? 知っている人は手を挙げて」と聞くと全体の1割程度しか手が挙がりません。
「じゃあ、『海猿』※1を知っている人は?」と聞くと、全体の9割の手が挙がり、「知っているよ!見たよ!」という元気な声があちこちから返ってきます。
「海猿は、海上保安官なんだよ。私たちと同じ、海上保安庁の職員です」。そう言うと、驚く子供たち。そして「海猿だ。かっこいー。凄ーい」という視線を投げてきます。これで掴みはオッケー!子供たちの視線を集めて、海上保安庁の仕事についてスムーズに授業を進めることができます。
しかし、ここで私が思ったのは、今はテレビドラマや映画で話題になった『海猿』を知っている子供たちがいて、わりとすんなり海上保安庁の業務のことを受け入れているけれど、今後、年月が経ったらどうなるのか? ということです。
もっと知ってもらいたい
これらを各イベントの際に配ってきました。しかし、こういうものは受け取ってもらっても「ふーん」だけで終わってしまうことが多く、そこから海上保安庁の業務について興味を持つ事は少ないようでした。
警察の110番、消防・救急の119番という緊急ダイヤルをほとんどの国民が知っていますが、海上保安庁の118番を同じように知っているかと聞くと必ずしもそうではありません。
新たな広報グッズを作ろう!

『かるた』ならば子供たちも興味を持ってくれるはず。言葉の意味がわからなくても最初は遊びから入って、徐々に興味を持ち、そして大人に札の意味を尋ねれば聞かれた大人も海上保安庁について知ることになるのでは!?
あ-愛します・守ります・日本の海
い-五つの使命を果たします
う-海の『もしも』は118番
するすると数点の読み札が頭に浮かび、ワクワクしてきました。
「作れる。いや、作る!」すぐに決心しました。
その日から、仕事を終え帰宅するとすぐにパソコンにかじり付き、家事の最中も頭の中は『かるた』で一杯になりました。
一人で考えるには限界があり、周囲の数人に助言を求めました。時には懇親会で飲んでいる最中に「このセリフどう思う? これはどう?」と質問攻めにしたこともあります。だんだん読み札の案が固まってくると、絵札の作成にも取り掛かりました。親しみやすいように絵札には、海上保安庁のマスコット・キャラクターである『うみまる&うーみん』(モデルはタテゴトアザラシの子供)を極力使うことにし、イメージにあうイラストがない場合は自分で作画することにしました。
できるものから作り始め、8割ほど進んだところで壁にぶつかりました。どうしても思いつかない言葉があるのです。『な』『は』『へ』『も』『れ』『わ』この6文字でした。
な-七管、も-門司、わ-わいわいセブン......。私が今、所属している第七管区海上保安本部の地方ネタなら浮かぶのです。しかし、せっかく作るのだから全国版として完成させたい! しばらくの間、悩みました。
悩みに悩んだ数日間。やはり全国版の読み札がどうしても思いつかずに下した決断は、
な-七管のフラッグシップ 巡視船ちくぜん
は-初日の出は 118度の方向に
へ-部埼(へさき)灯台 九州で現存する最古の灯台
も-門司かるたで 知って学んで 海保の事を
れ-レトロの街をイメージ 門司レトロ灯台
わ-わいわいセブン 友の会 七管支部情報誌
という地方の読み札にしたのです。それに合わせていくつかの言葉を全国版から地方版に変え全体のバランスを整えました。
「かるたを作る!」。そう決心してから約一カ月半が経過した1月末、『七管・門司かるた』の電子データが完成したのでした。
続いて、門司海上保安部のホームページ※2に掲載するため、一つ一つに解説をつけてHTMLファイルを作成。そして、誰でもダウンロードして遊ぶことができるように、A4用紙に4文字分ずつ(読み札4札・絵札4札の合計8札)レイアウトしたPDFファイルを作成しました。最後に、実際にその原稿を印刷して厚紙に貼り、切り分け、数セットのかるたを作り職場でお披露目することができました。
『七管・門司かるた』の先へ
こうして完成した『七管・門司かるた』を近隣の小学校などへ寄贈したり、イベントで一緒に遊んだりするなどし、徐々に浸透させていっています。今後も、新しい広報グッズを考え、作成しPRを続けていこうと思っています。もちろん、かるたの全国版を作ることも諦めていません!
最終的な願いは、海での哀しい事故がなくなること。そして青く美しい海を未来に永遠に残すことです。(了)
※2 門司海上保安部HP / かるた紹介ページ
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