Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第187号(2008.05.20発行)

第187号(2008.05.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表(総合地球環境学研究所副所長・教授)◆秋道智彌

◆陸地の都市や山野河に細かい地名がつけられているように、海にも名前がある。オホーツク海、瀬戸内海、響灘、紅海などのように、海自体だけでなく海底地形にも名前がある。私が調査を行ってきた八重山諸島の石西礁湖(石垣島と西表島、竹富島、小浜島、黒島などで囲まれた海域)には、じつに数千以上の海底の岩や地形について名前のあることを、すでにいまから20年ほど前に明らかにした。たとえば、ナグラヌヘーヌ13ピルタチヌー。名蔵湾南で深さが13尋の場所を指す。これらは、漁の知恵とでもいえるが、一部の海人(ウミンチュ)だけが共有する海の文化といえる。
◆一方、本誌で海上保安庁の春日茂氏が取り上げておられる国際標準の海底地名の課題は、研究面だけでなく、海洋管理上も重要であるという。海底地名ではないが、その命名をめぐり、国際的にかならずしも国の意見が通用するとは限らない可能性も考慮しておく必要がある。とくにわが国の場合、日本海側の海の名前や島をめぐる国際的な問題が尾を引いていることは周知の事実だ。海底地形の第一発見者が命名についての優先権をもつとして、詳細なデータなしにその権利を行使できないとすれば、海洋の技術と管理が登録を制する鍵となる。この点で、海洋政策の総合性が問われる訳であり、政策担当者と技術のドッキングの好例となることは間違いあるまい。
◆海洋政策のなかで、海洋管理ももっとも大きな課題のひとつだ。本誌で名古屋市立大学の赤嶺淳氏が取り上げておられるナマコ資源の管理問題は、わが国が取り組むべき重要課題であり、世界の中で指導性を発揮できる分野であることが納得できる。海底に横たわるナマコのいる海にいちいち名前がつけられているわけではないが、「ナマコ戦争の海」という不名誉な名の海底名称など願い下げだ。  (秋道)

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