Ocean Newsletter

オーシャンニューズレター

第13号(2001.02.20発行)

第13号(2001.02.20 発行)

編集後記

ニューズレター編集委員会編集代表者 (横浜国立大学国際社会学研究科教授)◆来生 新

◆「河豚の身のしらさぎに似て春寒き」(渡辺桂子)。河豚のように2月は微妙で繊細な月である。暦の上ではすでに春だが、時に余寒を感じたり、同じ寒さでも少し春めく春寒の日があったり、春一番の生暖かい風が吹くこともある。季節の変わり目の中で、ひとりひとりの感覚の違いが大きく作用するヒューマン・ファクターの月であるのかもしれない。

◆期せずして、13号には、海にかかわる人間ひとりひとりの感覚・感性の違いが、さまざまな活動の違いをもたらすことを前提に、その多様な動きが最終的に社会的決定として実現される収斂の過程に、われわれがいかにかかわるべきかを考えさせるオピニオンと投稿を掲載することができた。それぞれの個人の内部における利己心、利他心、善意、価値観の違いを前提とする諸行為が、社会全体にとっての好ましい結果、あるいは好ましからざる結果とどう結びつくのか。自らの行為が最終的な社会的選択にもたらす結果を、誰も完全に予知することができないという絶対的条件の中で、なおかつひとりひとりが自らの価値観に従った好ましい結果を意欲するのが人間の宿命である。

◆宇多氏は結果の社会的統御における参加の意義を、石田氏は非日常的な選択を迫られる際の事前の訓練による結果の改善可能性を、またベバリー金子氏は現在のアメリカ社会における選択の方法と結果のひとつの有力な流れを、それぞれに興味深く、高い説得力をもって論じてくださった。心から感謝したい。(了)

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