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第114号(2005.05.05 発行)【特集】海のゴミはどこへいく
第114号(2005.05.05 発行)

海洋ゴミ問題への効果的な取り組み -韓国の海洋ゴミ買い取り制度に関して-

韓国海洋水産開発院海洋環境・沿岸研究室◆金 鍾悳 Kim, Jong Deog

韓国の沿岸で発生する海洋ゴミは15万2千トン/年にのぼり、この海洋ゴミにより生じる漁業生産額の損失は330億円に及ぶ。
海洋ゴミを回収・処理するには膨大な費用とエネルギーが必要になるため、問題はなかなか解決されない状況にあったが、韓国政府は、2003年から漁民に対する「海洋ゴミ買い取り事業」をパイロット事業として実施し、海洋浄化費用の削減のみならず、漁民の意識改革を目指している。

海洋のゴミ問題

白い砂浜と緑の森、青い空と海。そして豊かな海の恵み。誰もが夢見る海の景観である。しかし、現実の海は人間の活動に起因する廃棄物のため悲鳴をあげている。このような海洋廃棄物問題に立ち向かうため、国際条約に従って沿岸国はさまざまな取り組みを強化してきたが、主に油汚染や水質管理に集中して、海洋ゴミ問題に関しては一部を除いてほとんど手が届かないまま放置されてきたといっても過言ではない。

特に、製造業の発達が著しい1950年代以後、海は今までになかったさまざまな廃棄物を経験することになった。プラスチックを原料として作られた魚網、養殖材料や生活ゴミがそれである。最近の調査ではこの海洋ゴミによる被害が沿岸の景観を損ねるだけではなく、実際的に海洋生態系に大きい影響を与えていることが分かってきた。海上や海中の浮遊物を食べ物と勘違いして苦しんで死んだウミガメや渡り鳥、大型魚類を目にすることもまれではない。さらに目に見えない海の底に沈んでいる沈殿物は今も海洋生物たちに致命的な影響を与えているかも知れない。

海洋ゴミについては、川の水系から流れてきたもの、海岸での人間活動によって発生したもの、漁業または船舶などの海上活動から発生したものなどいくつかの原因が知られている。河口や港、漁場を中心に集まったゴミは浮遊または沈殿し、海の生態系や安全を脅かしている。

海洋ゴミの被害

長い間海を活用してきた韓国の場合も海洋ゴミの被害を免れない。2004年現在、約9万3千隻の漁船が韓国の沿近海で漁獲活動を行っており、沿海には12万ヘクタールを超える養殖場が分布している。漁船からは船上ゴミや漁業作業中のゴミ、養殖場からは台風や荒天の際に大量のゴミが発生してさまざまな形で海洋環境に影響を与え、深く傷つけている。韓国で海洋政策を全般的に担っている海洋水産部の研究調査によると、韓国の沿岸で発生する海洋ゴミは15万2千トン/年にのぼり、この海洋ゴミにより生じる漁業生産額の損失は330億円に及んでおり、海難事故の10%ほどが海洋ゴミなどの沿岸廃棄物が原因になっていると推定されている。ゴミの発生原因を見ると、陸上起因のものが5万2千トン程度、残り10万トンが漁業廃棄物である。全国沿近海の漁場に沈んでいる廃漁具は50万トンに上るといわれている。

このような海洋ゴミを回収・処理するには膨大な費用とエネルギーが必要になる。例えば、港などごく一部の沿岸地域での海洋ゴミ回収と処理費用を算出すると、陸の処理費に比べて7-10倍に達していることからも、海でのゴミの収集や処理が難しく、費用が掛かるものだということがうかがえる。もし処理範囲を近海やEEZにまで広げた場合、調査費などを全部含めると、想像を超える費用、努力、エネルギーや技術が必要になるのは明らかである。

 
漁船が操業中引き上げた海洋ゴミとその回収光景(写真:韓国漁港協会)
 
■表1 海洋ゴミ買い取り事業推進実績および今後の計画
区分2003年2004年2005年計画2006年以後合計
事業量(トン)5782,4533,90028,70035,631
事業費(百万ウォン)7312,1263,40025,00031,257
*2005年度参加市郡:11カ所  *1,000ウォン=約100円
 
■表2 海洋ゴミ買い取り事業の変遷
年度買い取り範囲予算構成
2003年近海漁船国庫100%
2004年沿近海漁船国庫80%、地方費20%
2005年沿近海漁船国庫70%、地方費30%

海洋ゴミ問題解決への新しい取り組み

韓国の場合、海洋ゴミの発生原因の中で漁業活動が主な原因になっていることから、この問題に立ち向かうためにはまず漁業者の意識変化が最も重要な要素である。つまり、海洋環境の大切さを認識し、漁業者自らの活動によって問題解決に臨む必要がある。このような海洋ゴミ問題を取り巻いている状況を踏まえて、韓国政府は2003年からいわゆる「海洋ゴミ買い取り事業」をパイロット事業として実施している。

この事業の目的は、漁船が操業中引き上げたゴミや、漁船から発生したゴミなどの海洋投棄を防止することによる海洋浄化費用の削減と、国-自治体-漁業者が立体的に海洋ゴミ回収や処理活動に力を合わせ、海洋環境保護効果はもちろん漁民の意識転換を目指したものである。すなわち、海洋ゴミ問題に対して、国は技術開発とパイロット事業の実施の役割を担い、自治体は管轄区域での管理施行、漁業者は自分の漁場を自分の手で守ることによって、海域の主な管理者である3主体の力がそれぞれ発揮できる仕組みである。2005年現在、買い取り価格は40リットル( 13-15kg )あたり4千ウォンで、買い取り対象になる漁船は水産業法第41条の規定によって漁業許可を得た漁船が操業中引き上げた海洋ゴミに限定される。

事業の実施当初は、汚染原因者に補助金を提供するのは矛盾であるという議論もあったが、海洋ゴミ問題に対応する現実的な代案として受け入れられ、政府としては今後事業を拡大して普及をはかる予定である(表1参照)。

予算構成面では2003年パイロット事業においては100%国の補助金で始まったが、2007年以後は自治体の事業費負担を50%まで拡大し、全国沿岸市郡の参加を求めて実施していく予定である(表2参照)。

この事業は海洋環境回復の効果はもちろん、漁業者の環境保護意識を高めて海洋ゴミ投棄を防ぐ一石二鳥の成果が出ているといわれている。今後、他の海洋浄化事業との連携、自治体の積極的な参加が実現すれば、海洋ゴミを減らす効果的な対策として位置付けられるだろう。(了)

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