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【Ocean Newsletter】バックナンバー

第400号(2017.04.05 発行)

北太平洋漁業委員会の誕生

[KEYWORDS]北太平洋漁業委員会/地域漁業管理機関/漁業資源管理
北太平洋漁業委員会事務局長◆Dae-Yeon Moon

北太平洋の海洋生態系を保護しつつ、条約水域における漁業資源の長期的な保存および持続可能な利用を確保することを目的として北太平洋漁業委員会(NPFC)は誕生した。
漁業に関わるあらゆる国連総会決議に従いつつ、科学的側面および法規的側面を含む作業計画の策定、対象魚種の資源量評価の実施、データ管理システムの構築、他の機関との協力推進等によってこの目的の達成を目指す。

北太平洋の漁業環境

太古より人類はさまざまな形で海に依存してきた。人類にとって、海は食糧を得る場であり、経済的機会を得ることができ、行楽や憩いの場でもあった。国連食糧農業機関(FAO)によれば、2013年に人類が摂取した全タンパク質の6.7%、動物性タンパク質の約17%を魚類がしめ、2014年には、約5,660万人が漁業・養殖業に従事していた。しかし、人口の急増に伴う影響の拡大と科学技術の著しい進歩により、商業的漁獲の対象魚種は恒常的に圧迫を受け、その数は減少を続けている。人類が利用し得る漁業資源の量は著しく低減しており、魚種の50%以上が許容量限界まで漁獲され、資源量が未だ十分存在している魚種はおよそ10%に過ぎなくなっている。
北太平洋地域は、周囲を取り巻く環境に恵まれ世界で最も生産性が高く、環太平洋諸国は公海での操業を自由に行うことができた。近年になって、その海洋資源の将来にわたる持続可能な利用を可能にするため、これら資源の保存と管理を目的とする各種の国際協定が制定され、世界の海には現在、地域漁業機関(RFB)、地域漁業管理機関(RFMO)などの名称で公海漁業、沿岸漁業、内水面漁業、養殖業に関する機関が約50存在する。しかし北太平洋地域には比較的少なく、この地域においての漁業資源の管理と海洋生態系の保全の橋渡しをする制度の必要性が国連によって明確に認識され、北太平洋漁業委員会(NPFC、以下、委員会)が誕生することとなった。

北太平洋漁業委員会とは

図1 北太平洋漁業資源保存条約適用水域

委員会は、『北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約』により設立された政府間機関であり、事務局は東京にある。この条約の目的は、「北太平洋の海洋生態系を保護しつつ、条約水域における漁業資源の長期的な保存および持続可能な利用を確保すること」(第2条)である。2004年、2005年、2006年の国連総会決議(決議番号: 59/25、 60/31、 61/105)に基づき、委員会設立のための最初の会合が2006年に開催され、その後、カナダ、中国、日本、韓国、ロシア、台湾、アメリカが9年間交渉し、委員会が成立した。北太平洋漁業資源保存条約は2012年2月24日に採択され、四カ国目の批准提出より180日後の2015年7月19日に発効。現在、委員会の締約参加国・地域は、カナダ、中国、日本、韓国、ロシア、台湾となっている。

委員会の任務

委員会は、二つの重要な任務を持つ。その第一は科学的分野に関する任務で、各魚種の生息状況の精査および漁業による資源量と生態系への影響についての査定を行い、参加各国に対して資源の持続可能な管理と生態系の管理に関する勧告を行う。第二は基準・規則の遵守に関する分野で、資源および生態系の持続可能な管理を行うために各国が提出する基準や規則(保存管理措置)案が委員会によって受理されるための条件を備えたという承認を与えることである。条約適用水域内において操業する漁船に対しては、海上および港湾内において、その操業が委員会によって承認された諸規則(保存管理措置)に準拠するものであることを確認するための監視が行われる。委員会は、北太平洋内の公海をその法的権限の及ぶ範囲とし、対象魚種には、各漁船が条約適用水域内において捕獲した魚、軟体動物、甲殻類その他の海洋生物が含まれ、沿岸各国の主権的権利の範囲内にある定着性種、脆弱な海洋生態系の指標種、降河性魚種、海洋哺乳類、海洋爬虫類、海鳥、その他すでに既存の漁業関連国際条約で管理されている種は除外される。
現在、当委員会参加国・地域の漁船が操業の対象としている魚種には、底魚および浮き魚が含まれ、底魚については日本、韓国、ロシアが天皇海山海域を漁場として底曳網漁、底刺網漁、底延縄漁を行っている。中でも底曳網漁はクサカリツボダイ、キンメダイを、底刺網漁はキンメダイ、マトウダイ、カガミダイをそれぞれ主要漁獲魚としている。カナダは、北東太平洋水域内で四つの海山を漁場に延縄で操業を行っており、ギンダラを対象魚としている。浮き魚は、中国、日本、韓国、ロシア、台湾が主に棒受網あるいは敷網を用いてサンマ漁を行っている。漁場については、日本とロシアが主として自国の排他的経済水域において操業を行っているのに対して、中国、韓国、台湾漁船は、北太平洋内の公海を漁場としている。本条約適用水域内では、サンマ漁のほかに多鈎式イカ釣り具を使うアカイカ漁も行われており、近年は北西太平洋においてマサバ漁も始まっている。
RFMOとして新しく発足したこの委員会は、事務局開設(2016年3月18日)より日が浅く活動の初期段階にある。現在、内部規則や手続きの作成を進め、また、研究・調査、プロセス、運営方法などに関する情報の交換を可能にするため他のRFMOとの交流、協力関係を構築する努力を行っている。また事務局長は、科学的事項と遵守事項に関して、それぞれ一人ずつ配属された専門家とともに、参加国・地域が条約水域内で操業する自国の船団に適用する保存管理措置(CMM)案の提出および採択を支援している。
これまでに参加国・地域の協力によって、漁船の登録、サンマ漁に関する規制、IUU漁業(違法、無報告、無規制漁業)操業者リストの作成、転載に関する暫定措置、無国籍船に関する措置、底魚漁の管理措置、北西・北東太平洋の脆弱海洋生態系(VME)の保護、マサバ漁獲努力量の削減など重要な保存管理措置(CMM)を採択できるまでに至ったことは、注目に値する成果である。

■図2 適用主要魚種
左から、北太平洋ツボダイ(クサカリツボダイ)、キンメダイ、ロックフィッシュ(メバル)、ギンダラ

課題と今後の計画

他のRFMOと同様に、委員会も本条約の目的達成のためにはさまざまな課題を抱えている。その中で最も重要な課題は、委員会参加国・地域のグッドガバナンスへの取り組み、透明性、再生可能海洋資源の持続可能な管理と海洋生態系の保存の実現を得ることである。これこそがRFMOとして委員会の成功にとって最も重要であり、すべての基本となる必要条件である。また地域漁業管理においては政治も影響を及ぼすことから、委員会事務局幹部が持続可能な管理のためにリーダーシップを発揮することも、委員会の成功のために重要な条件となる。さらに、依存種や関連種も含めた漁業資源や生態系の複雑さを理解することも、長期的・短期的に克服しなければならない課題である。
今後委員会は、北太平洋に生息する公海漁業資源の保存と管理に取組むためにあらゆる努力を行うものである。これは、漁業に関わるあらゆる国連総会決議に従いつつ、科学的側面および法規的側面を含む作業計画の策定、対象魚種の資源量の評価の実施、データ管理システムの構築、他の機関との協力推進によってのみ達成することが可能となるものである。(了)

  1. 北太平洋漁業委員会事務局 http://npfc.r-cms.jp/(東京海洋大学品川キャンパス白鷹館2F)
  1. 本稿は、英語でご寄稿いただいた原文を事務局で翻訳・とりまとめたものです。原文は、HP(https://www.spf.org/opri/projects/information/newsletter/backnumber/2017/400_1.html)でご覧いただけます。
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