2025年11月30日
第15巻1号
第15巻1号では、世界各地で次々に勃発する海洋と島嶼の問題を、幅広い視点で取り上げている。
論説は2本を掲載。『トランプ政権下のグリーンランド買収企図を巡る内外情勢分析』では、世界の安全保障に重要な立ち位置であるグリーンランドと、その米国による買収問題を世界情勢に通暁する著者が分析・考察している。将来の選択肢として米国との「自由連合」(Free Association)を、また、日本・グリーンランド協力の一環として氷床下の大規模天然食料・医療品保管庫建設構想を提言している。
『実務的デカップリング-2025年の日露関係』では、少しずつ日本に対し外交的圧力を強めているロシアとの間にある北方領土問題、ロシア産エネルギーの問題への対処方法を論じ、最終的には日露のデカップリングを目指し、日本の外交・経済資源は、インド太平洋秩序を共に支える力と意志を持つ国々に再分配すべきであると論じている。
インサイトは3本を掲載。『仲裁裁定9年目の南シナ海-中国に対するフィリピンの2つの革新的対応措置を中心に-』では、2016年7月、南シナ海仲裁裁判所においてフィリピンがほぼ全面勝訴したにもかかわらず、中国は裁定をあらゆる意味で受け入れないと表明し、9年目の今も南シナ海で妨害行為や威圧的行動を続けている。フィリピンが中国に対抗するために始めたのが「積極的透明化キャンペーン」であり、本論ではその内容や評価、また日本との関係について論じている。
『「ブルー・エコノミー」の認知度拡大に伴う今後の課題』では、外交・安全保障の文脈で提唱された「ブルー・エコノミー」という概念は、流行語のようになって拡大解釈され、主に自然環境・経済の観点からのみ語られるようになってしまっているが、著者はアフリカや中南米の例を挙げて、本来の「ブルー・エコノミー」について具体的に論じている。
『歴史的観点から台湾の地政学的・経済的・文化の地位を考える』では、台湾について、歴史的な観点から東アジアでの立ち位置について考察し、軍事衝突・IT通信機器・米国でのロビー活動・投資の4点において台湾には強みがあり、独立を貫けると論じている。
コラムでは『竹島問題啓発パネル展「出張竹島資料室in浜田」について』を掲載した。「竹島資料室」は島根県が2007年に竹島問題の啓発を目的として開設した。以来、竹島関係資料収集、研究会活動などを続け大きな成果を上げている。本稿では同資料室の啓発活動の具体例を取り上げ、特に島根県水産試験場の竹島周辺調査の歴史を解説している。
目次
1 論説
2 インサイト
仲裁裁定 9 年目の南シナ海
―中国に対するフィリピンの 2 つの革新的対応措置を中心に―
試し読みする(PDF)
上野 英詞
「ブルー・エコノミー」の認知度拡大に伴う今後の課題
試し読みする(PDF)
濱 美惠子
歴史的観点から台湾の地政学的・経済的・文化の地位を考える
試し読みする(PDF)
エマニュエル・パストリッチ
3 島嶼問題コラム
編集後記
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島嶼研究ジャーナル
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