北方領土

島嶼研究ジャーナル
第15巻2号

【論説】 〇「国際関係における戦略的島嶼:年月を通じて変化するその様相」 ケント・E・カルダー 執筆者は自身の提唱する「ユーラシア海事地政学」(北東アジアからインド洋を経てヨーロッパに至るシーレーンの重要性)に則り、島嶼の持つ戦略的かつ時間的な意味合いを、歴史の視点から論じる。 〇「1978年の大量中国漁船による尖閣諸島での領海侵犯事件と日本の政治団体などによる灯台建設」 ロバート・エルドリッヂ 『沖縄問題の起源』『尖閣問題の起源』などの多数の著作がある執筆者が、中国による尖閣諸島侵出と、1978年以降の日本の民間人による尖閣諸島実効的支配の動きについて論じる。 【インサイト】 〇「アジア太平洋地域における安全保障秩序の形成と将来-第1列島線正面とメラネシア地域正面を中心に-」 三輪芳明 2019年、ソロモン諸島は、経済支援と投資を優先した中国との関係構築を巡って、台湾と断交し中国と国交を樹立した。執筆者はこの事態を受けてソロモン諸島国へ特命全権大使として赴任しており、太平洋の島嶼国家を侵食しようとする中国の激しい政治的活動を目前にした。本稿ではそのリアルな国際政治について解説している。 〇「金門事件と中国海警の『法執行』:台湾離島周辺における管轄権挑戦の新常態」 陳育正 台湾の安全保障の研究者である執筆者は、習近平主席の台湾への軍事侵攻発言を背景に、金門島周辺の台湾の警戒線を越えて中国海警船がたびたび侵入してくるようになった件について、口実とされた漁船事故の真相とともに論じている。 〇「領土・主権展示館ゲートウェイホールのオープンについて」 齋藤康平 2025年11月に虎ノ門の「領土・主権展示館」に新施設「ゲートウェイホール」がオープンした。内閣官房の担当者である執筆者が、その狙いを解説している。 【コラム】 〇「竹島資料室の活動について」 島根県竹島資料室 2007年4月に島根県が開設した「竹島資料室」は、日本国政府が、韓国による島根県隠岐市竹島の長きに渡る不法占拠という事態から眼を背けている間も、竹島関係の歴史的公文書を収集・公開し、「竹島問題研究会」を置いて研究成果を積み上げるなど継続的な活動を真摯に続けてきた。ここでは「竹島資料室」の歴史と、最近になって収集に成功した江戸期の貴重な竹島渡海の一次資料について、説明と紹介を行っている。 〇「グリーンランド再考」 髙井晋 MAGAのための「力による平和」を主張するトランプ大統領のグリーンランの買収の発言から始まった、グリーンランドをめぐる欧米間の葛藤について論じている。

島嶼研究ジャーナル
第15巻1号

第15巻1号では、世界各地で次々に勃発する海洋と島嶼の問題を、幅広い視点で取り上げている。 論説は2本を掲載。『トランプ政権下のグリーンランド買収企図を巡る内外情勢分析』では、世界の安全保障に重要な立ち位置であるグリーンランドと、その米国による買収問題を世界情勢に通暁する著者が分析・考察している。将来の選択肢として米国との「自由連合」(Free Association)を、また、日本・グリーンランド協力の一環として氷床下の大規模天然食料・医療品保管庫建設構想を提言している。 『実務的デカップリング-2025年の日露関係』では、少しずつ日本に対し外交的圧力を強めているロシアとの間にある北方領土問題、ロシア産エネルギーの問題への対処方法を論じ、最終的には日露のデカップリングを目指し、日本の外交・経済資源は、インド太平洋秩序を共に支える力と意志を持つ国々に再分配すべきであると論じている。 インサイトは3本を掲載。『仲裁裁定9年目の南シナ海-中国に対するフィリピンの2つの革新的対応措置を中心に-』では、2016年7月、南シナ海仲裁裁判所においてフィリピンがほぼ全面勝訴したにもかかわらず、中国は裁定をあらゆる意味で受け入れないと表明し、9年目の今も南シナ海で妨害行為や威圧的行動を続けている。フィリピンが中国に対抗するために始めたのが「積極的透明化キャンペーン」であり、本論ではその内容や評価、また日本との関係について論じている。 『「ブルー・エコノミー」の認知度拡大に伴う今後の課題』では、外交・安全保障の文脈で提唱された「ブルー・エコノミー」という概念は、流行語のようになって拡大解釈され、主に自然環境・経済の観点からのみ語られるようになってしまっているが、著者はアフリカや中南米の例を挙げて、本来の「ブルー・エコノミー」について具体的に論じている。 『歴史的観点から台湾の地政学的・経済的・文化の地位を考える』では、台湾について、歴史的な観点から東アジアでの立ち位置について考察し、軍事衝突・IT通信機器・米国でのロビー活動・投資の4点において台湾には強みがあり、独立を貫けると論じている。 コラムでは『竹島問題啓発パネル展「出張竹島資料室in浜田」について』を掲載した。「竹島資料室」は島根県が2007年に竹島問題の啓発を目的として開設した。以来、竹島関係資料収集、研究会活動などを続け大きな成果を上げている。本稿では同資料室の啓発活動の具体例を取り上げ、特に島根県水産試験場の竹島周辺調査の歴史を解説している。

島嶼研究ジャーナル
第14巻2号

第14巻2号の論説では、緊張を高める世界情勢のなか、日本の島嶼領土である尖閣・竹島の現在においての問題を提言し、解決を論じる2本を掲載した。 『緊急提言:いま実行すべき日本の尖閣諸島防衛策』では、尖閣諸島の主権に対し執拗かつ周到な現状変更を企て続ける中国に対し、守勢のみの日本政府に即時行動を促し、可能かつ有効な手段を論じる 『韓国の「国史」教育の変遷と独島/竹島』では、韓国が、小学校から高等学校に至るまでのすべての教科書に、竹島主権についての韓国側の主張のみをあたかも真実であるかのように掲載し国民に偏向教育を続けている事実を提示し、この歴史教科書問題には日本側の積極的な対処が必要不可避であると論じている。 インサイトは3本を掲載。『琉球大航海の尖閣航路-西表島から飛鳥時代に遡る』では、尖閣諸島の近代以前の歴史について、かつて八重山諸島に在った貿易航路「尖閣航路」から、首里(琉球王国)とは異なる八重山の貿易勢力の存在を提起し、従来の中国史観のみでは論じられない歴史の可能性を示唆している。 『多元的脆弱性指標とその政策的意味合い 小島嶼開発途上国における対応力強化と持続可能な開発に向けて 』では、小島嶼開発途上国の社会的脆弱性に対策するため、2024年に国連総会で採択された「多元性脆弱性指標(MVI)」について、評価指標である、環境(気候変動)、社会経済、国際制度的枠組みについて、パラオ、モルジブ、バハマ等を取り上げて具体例を考察している。 『フィリピンの海洋安全保障の概念』では、フィリピン大学法学部教授である著者が、フィリピンにおいて「海洋安全保障」という用語についての認識について、「国家安全保障・行動アジェンダ」「国家安全保障」「フィリピン沿岸警備隊法」「国家警察海洋グループ」などに触れて解説している。 コラムでは『対日平和条約第2条が世界に及ぼした影響』を掲載した。日本が直面している「尖閣・竹島・北方領土」の島嶼領土問題は、ほぼすべて第2次世界大戦の講和条約である「対日平和条約第2条」に起因している。この条項はこうした重大な島嶼領土問題のほかにも、日本の国連加盟、自衛隊の法的地位、南極における活動、南シナ海の島嶼領有権問題なども発生させている。

島嶼研究ジャーナル
第11巻1号

今号の論説では、米国の研究者の視点から、尖閣諸島の主権問題を論じた『尖閣諸島に及ぶ日本の主権に関する米国の認識』、また、南シナ海をめぐるフィリピンと中国の紛争に関して、国連海洋法条約に基づいて設立された仲裁廷が2016年に下した判断とその後について論じた『中国による南シナ海での違法な人工島建設の法的結果』を掲載した。 インサイトには、若手研究者による『気候変動が島嶼等に与える影響 ―国際法からのアプローチを中心に―』。『島をめぐる係争水域の共同開発に関する一考察』『2020年から2021 年にかけて登場した韓国の竹島海上警備策の特徴』『インド洋島嶼国セーシェル共和国とモーリシャス共和国の領土問題とブルー・エコノミーの役割』の4本を掲載している。 コラムでは、『島嶼領土に対する日本政府の基本的認識』として、北方領土、竹島、尖閣諸島に関わる日本政府の認識を紹介し、日本は領有主張の根拠を国際法に置いていることを解説している。

島嶼研究ジャーナル
第10巻1号

創刊以来10年、今年度は第10巻を刊行の運びとなりました。これまで10年間のご支援に深く感謝申し上げます。10周年を機に表紙デザインを一新いたしました。新たな表紙にてまたどうぞよろしくお願いいたします。  今号の論説では、海洋法の第一人者であり国連法務局海洋問題・海洋法部長を務めた林司宣早稲田大学名誉教授のご逝去を悼み、2007年に海洋政策研究財団『沖ノ鳥島の維持再生に関する調査研究平成18年度報告書』に掲載された論説「島・岩についての国際法制度」 を再録。島田征夫早稲田大学名誉教授には、林先生の業績をメインにして追悼文を御寄せいただいた。  さらに、太平洋島嶼国の土地に関する憲法と領土主権についての論説、また、サンフランシスコ平和条約(1951)作成過程から連合国の竹島への認識と方針についての論説を掲載。  インサイトでは、2020年1月に虎ノ門に拡張移転した「領土・主権展示館」の前担当者が同館の理念と目的について著述した「新領土・主権展示館メイキング」を掲載。さらに2018年に福島で開催された「第8回太平洋・島サミット」首脳宣言に盛り込まれた、太平洋島嶼国の実施する海洋管理の新たな概念「zone based management」についての論述、そして連載中であるクラスカ米海軍大学校教授による論説「領海内の潜水艦による諜報」第3回の掲載である。コラムでは、尖閣諸島と北方領土に仕掛けられている「興論戦・心理戦・法律戦」の3つの戦争について著述している。

島嶼研究ジャーナル
第9巻2号

今号の論説は、中谷和弘東大教授によるアラブ首長国連邦(UAE) とイランとの領土紛争について考察した『アブムーサ島に関するイラン・シャルジャ間の了解覚書についての国際法上の考察』、下山憲二海上保安大学校准教授による遠隔地の帰属に関する先占基準の適用と沈黙が黙認となるのかを論じた『遠隔地に対する実効支配と関係国による沈黙の効果―尖閣諸島を題材として―』そして、第7巻2号から4回に渡って連載してきた、北方領土の法的諸権利を論じる『北方領土問題の歴史と諸権利(4)』が完結した。 インサイトでは、篠﨑正郎航空自衛隊幹部学校教官による英国の島嶼領土であるフォークランドの防衛についての考察『イギリスの防衛政策にとってのフォークランド紛争―本土防衛と島嶼防衛の均衡―』、第9巻1号から3 回に渡って連載予定のクラスカ米海軍大学教授による『虎の口に頭を突っ込む―領海内の潜水艦による諜報―(2)』では平時における潜水艦の諜報活動と海洋法について豊富な例を挙げて検討・分析を行っている。 コラムでは、2020年3月、虎ノ門に新設された内閣官房の発信事業「領土・主権展示館」について紹介する。

島嶼研究ジャーナル
第9巻1号

今号の論説は、一般社団法人太平洋協会理事長である小林泉大阪学院大学教授による、日本の約30年間にわたる南洋群島委任統治について論じた「南洋群島と日本による委任統治」、および8巻1号に引き続き掲載する「北方領土問題の歴史と諸権利(3)」である。インサイトでは、竹島領有権紛争に利用される小笠原諸島の帰属と地図をめぐる話が全くの架空であると証明する「小笠原諸島のいわゆる林子平恩人説と竹島」、最近の中国原子力潜水艦の領海侵入について法的問題点を挙げた「潜水艦の領海における潜水航行-中国の原子力潜水艦事件-」、平時における潜水艦の諜報活動と海洋法について豊富な例を挙げて検討・分析を行う「虎の口に頭を突っ込む(1)-領海内の潜水艦による諜報-」の3本。コラムでは、内閣官房の「領土・主権をめぐる内外発信に関する有識者懇談会提言」(2019年7月)「内外環境の変化を踏まえた発信強化の実践のために」を掲載した。また、国際事例として、インド洋に浮かぶモーリシャス共和国とチャゴス諸島の分離(1965年)について紹介する。

島嶼研究ジャーナル
第8巻1号

今号の論説では、北方領土の問題を取り上げています。「北方四島とサンフランシスコ条約」では、対日講和条約第2条(領土条項)の起草過程を第一次資料に基づいて検討している。 「北方領土問題の歴史と諸権利(2)」では、前号(第7巻2号)に引き続き、樺太における日本統治と第二次世界大戦に関係する条約等を分析しています。 インサイトは、竹島海域をめぐる日韓漁業協定交渉に、官僚として参加した著者が現場での体験を交えて論じる「合意は守られねばならない」、また、オックスフォード大学研究員からの寄稿として、沿岸国はそのEEZ(排他的経済水域)内における情報収集を規制できるか否かという問題点を論じた「排他的経済水域における諜報活動」、そして連続掲載中の「竹島の日本地図についての韓国側の報道・論文に対する反応(7)-2015年7月17日付韓国・中央日報報道の地図について(4)-」の三本です。 コラムは、第二次世界大戦終戦時より米国占領下にあった小笠原諸島の日本復帰を取り上げた「2018年は小笠原諸島返還50周年」。「国際判例紹介(13)」では、昨年2017年の事例であるガーナ共和国とコート・ジボワール共和国の海峡境界画定問題について取り上げています。

島嶼研究ジャーナル
第7巻2号

今号の論説は、「北方領土問題の歴史と諸権利(1)」、「公式認定最重要史料の「釣魚臺」、尖閣ではなかった」、「竹島問題に関する日韓両国政府の見解の交換について(下)」、の三本で、北方領土・尖閣諸島・竹島問題に係るユニークな視点から島嶼領土について論じています。巻末に我が国が行った唯一とも言える公的な尖閣諸島調査活動の実態を、調査隊のリーダーが報告する「旧沖縄開発庁尖閣諸島利用可能性調査の経緯」を、貴重な現場写真とともに掲載しました。米国研究者からの寄稿として、排他的経済水域を利用する際に生じうる国際法上の問題点の指摘を行った「排他的経済水域における軍事活動」「海洋安全保障時代における海上法執行活動と情報」、そして「島嶼の発見」に関わった「海賊」の存在を指摘する「島嶼の発見と海賊」を掲載。「国際判例紹介(12)」では、カナダと米国の海峡境界の画定問題について取り上げています。

島嶼研究ジャーナル
第7巻1号

北方領土問題についてロシアの主張を分析した「北方四島をめぐるロシアの領有権主張について」、島嶼領土問題と国際裁判との関係を論じる「日本の領土関連問題と国際裁判対応」、韓国の竹島領有主張の推移を分析し領有根拠を論じた「竹島問題に関する日韓領国政府の見解の交換について(上)」を掲載。また、歴史的観点から島嶼問題をとらえた「尖閣問題の原点としての沖縄返還-蒋介石が東アジアに残した禍根-」「ヨーロッパに流布した幕府の琉球領有宣言」を掲載した。「中国の海上民兵と国際法」では尖閣諸島周辺海域で跋扈する海上民兵の国際法上の地位を分析。さらに、中国による南シナ海ベンハム海嶺の海洋調査、黒海における境界画定問題の判例紹介などを取り上げている。