2024年11月30日

第14巻1号

第14巻1号の論説では、海洋関係の国際法と現実的な国家間交渉をテーマにした2本を掲載した。『トンキン湾海洋境界画定交渉にみるベトナムの対中海洋政策』では、1970年代および1990年代に行われたベトナムと中国の海洋画定交渉の事例から、強国に対して衝平な境界画定を行うことができたベトナムの外交について論じている。また、『UNCLOSと占有法規-海域における占領国の権利と義務について-』では、沿岸国の領海、接続水域、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚に及ぶ主権と管轄権を制定した国連海洋法条約(UNCLOS)とその実際例について論じている。

インサイトでは、まず、『米子市立山陰歴史館所蔵の島根県竹島の写真について-その由来と1954年に開催された「竹島説明展』』を掲載している。竹島の韓国による不法占拠の後、島根県では竹島の主権が日本にあることを明らかにする資料の収集保存と研究を粘り強く続けているが、その最新の研究成果である。また、2018年に開館し2020年に虎ノ門に移転した「領土・主権展示館」が、新たに2025年にリニューアルオープンするにあたって、内閣官房領土・主権対策企画調整室が、その狙いと、2D動画やバーチャルリアリティによって一新した展示内容について解説する『領土・主権展示館のリニューアルについて』、さらに、論説において取り上げた越中の海洋境界画定問題を受けて、現在、深刻な緊張状態となっている南シナ海をめぐる紛争について、西沙群島・南沙群島の島嶼領有権及び海域の領有権を主張するベトナムからの視点で論じた『南シナ海に関するベトナムの視点-東南アジアの現実と対応』の3本を掲載している。

コラムでは『スカボロー礁の領有とフィリッピン』を掲載した。スカボロー礁は、南シナ海の中沙群島の一部でフィリピンのEEZ内に位置している。フィリピン政府が生態系に配慮し、海洋資源の保護を行いつつ注意深く漁業を行っていたが、1990年代後半に中国漁船がスカボロー礁で乱獲を行うようになって中比間でスカボロー礁の領有権紛争が起こった。中国は武力でスカボロー礁を占拠、フィリピンはUNCLOSに基づき国際仲裁裁判所に提訴し、国際裁判の開始は決定したが、中国は裁判を拒否。現在もスカボロー礁を占拠し続けている。

目次


1 論説


トンキン湾海洋境界画定交渉にみるベトナムの対中海洋政策 試し読みする(PDF)
内山 美生


UNCLOS と占領法規―海域における占領国の権利と義務について― 試し読みする(PDF)
ルイス・マクドノー・モンロイ



2 インサイト


米子市立山陰歴史館所蔵の島根県竹島の写真について―その由来と 1954 年に開催された「竹島説明展」― 試し読みする(PDF)
井上 貴央


領土・主権展示館のリニューアルについて 試し読みする(PDF)
齋藤 康平


南シナ海に関するベトナムの視点―東南アジアの現実と対応― 試し読みする(PDF)
グエン・フン・ソン



3 島嶼問題コラム


スカボロー礁の領有権とフィリピン 試し読みする(PDF)
髙井 晉






編集後記

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