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中東コラム⑧イエメン内戦と文化遺産の危機

中東・イスラム事業グループ研究員
河上 夏織

 2015年8月、シリア・パルミラ遺跡のベル神殿が「イスラム国(ISIL)」によって爆破される映像が世界中に衝撃を与えた。複数の文明の交差地点に位置するパルミラは、紀元前2世紀の文献にすでに登場し、紀元1世紀にはローマ帝国の下でオアシスとして栄えた都市である。その後もローマ帝国、ペルシア、インド、中国をつなぐ重要な交易地点としての役割を果たしたが、11世紀には廃墟となった。しかし、18世紀のイギリスの探検隊が発見したことにより、そのユニークな建築様式が西洋における古典的建築様式と都市設計のリバイバルに影響を及ぼした遺跡である。そのパルミラ遺跡の中でも最も重要と言われているギリシア・ローマ様式を色濃く残すベル神殿が破壊されたことは、世界にとって大きな衝撃であり、ISILに対する非難が起こったばかりか、紛争地域における文化財の破壊が一気に注目を浴びることになった。
 大量の難民の流出を引き起こし、大きな世界問題となっているシリア紛争などに隠れて、日本のみならず世界中であまり注目されていない国がある。イエメンだ。本稿では、そのイエメンの紛争と文化遺産の危機について紹介することとしたい。
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