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第3グループ(社会イノベーション推進担当) 女性起業家支援(お知らせ)

起業をつうじた社会課題解決⑧ 

~農村部の流通の改善に挑む若き日本人起業家:ATELIER(アトリエ)~

笹川平和財団


2025.08.01

【Atelierの顧客の小規模小売商の女性(写真:Atelier提供)】

【カンボジア Cnai アクセラレータープログラム】

 笹川平和財団は2022年度より、カンボジアで起業家支援の「Cnai(チェナイ:革新)アクセラレータープログラム」を実施している。このプログラムは、2021年度にミャンマーのVC、Emerging Market Entrepreneurs (EME)と共同開発したSanthit(サンティット:革新)アクセラレータープログラムをモデルにしており、世界的に有名なアーリーステージに投資を行うVCであるVillage Capitalのカリキュラムを採用している。

 「Cnai」とはクメール語で「革新・イノベーション」という意味で、このプログラムはジェンダー視点[i]を重視し、女性起業家が男性起業家と対等に参加できる公平な学びの場を提供している。参加起業家はステージごとに選抜され、ファンドを受け取り、伴走支援を受けながら事業を拡大させていく。2023年末から始まった第二期では、昨年度からのパートナーである、アジア開発銀行(ADB) Frontierに加え、カンボジア政府機関のクメール・エンタープライズ、米国政府機関のHarvestIII(ハーベスト・スリー)、オーストラリア政府機関のCAPRED(キャプレッド:Cambodia Australia Partnership for Resilient Economic Developmentの略)が新たに共同パートナーとして参画している。このことにより、Cnaiコミュニティづくりや展示会の実施、カリキュラムの拡充を行うことができた。多くのパートナーを巻き込むことで、コレクティブインパクトを生み出している好例であると言える。第一期に続き、今回、第二期のファイナリストの起業ストーリーや課題、ビジネスにかける思い、そしてビジネスを通じてどのように社会課題の解決に貢献しているかについてお話を伺った。
 
[i] Cnaiアクセラレータープログラムの対象は女性だけでなく男性起業家も含むが、プログラムの設計段階から、ジェンダー視点を有している。例えば、本アクセラレーターのホームページのイメージキャラクターは女性起業家だ。またCnaiのホームページでは、ジェンダーに配慮した言語表現や書きぶりを徹底している。また、多くの起業家支援プログラムは大人数の前でのピッチイベントを実施するが、社会的に人前で話す機会が限られてきた女性には不利となりうる。本プログラムでは、起業家の参加態度とプログラムへのコミットメントを最も重視している。またピッチも大人数に対してではなく、数人の審査員の前で、プレゼンテーションを15分、質疑応答の時間を30分とするなど、実際に投資家と話す際に起こりうる状況を再現している。また、参加起業家は、ジェンダー指標を設定し、事業の実施を通じ、いかにジェンダーへのインパクトを出せるかが審査の際に考慮される。
 
第二期生の第四弾として、2021年に2021年にカンボジアで創業したスタートアップATELIER(アトリエ)の若き日本人起業家、中野陵(なかのりょう)さんにお話しを聞いた。同社は、カンボジアの地方都市であるバッタンバンにおいて、農村部の流通の課題に取り組むため、B2BのEコマースのプラットフォームを提供している。同社の顧客となる小規模小売店の店主は99%が女性である。今回は、起業までのストーリー、起業を通じた社会課題への取り組みに加え、日本人が海外で起業する際に直面する困難や挑戦についても詳しく話を伺った。

- ATELIERの設立した経緯や思いを教えて下さい。

【小規模小売店の様子(写真:Atelier提供)】

私は愛媛県の田舎町で生まれ育ち、自然の中で過ごすことが大好きでした。将来は農業や水産業に関わりたいという思いから、大学では海洋物理学を専攻しました。在学中には2年間休学し、バックパッカーとして世界各地の農村を巡る旅を経験しました。その後、文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」プログラムに参加し、カンボジアのアグリテックベンチャーAGRIBUDDY社でインターンを行いました。そこでは、小規模農家とマイクロファイナンスの間に立ち、情報提供を通じて支援する業務を担当しました。

大学卒業後もAGRIBUDDYに残り、シェムリアップの農村部に住み込みで働く中で、都市と農村の間にある大きな格差を実感しました。カンボジアでは人口の約7割が農村に暮らしているにもかかわらず、物資や金融へのアクセスが限られており、収穫物を市場に届ける流通にも課題があります。こうした現状を改善することで、農村部の人々に大きなインパクトをもたらせると考え、B2B向けEコマースプラットフォームを提供するATELIER社を立ち上げました。

社会人として2年間の経験を積んだ後、日本人エンジェル投資家からの支援を受けて事業を開始しました。創業当初は一人でしたが、現在は大学の後輩も加わり、チームとして活動しています。Cnaiプログラム卒業後も、事業拡大に向けた資金調達を進めており、エンジェル投資家や地域のベンチャーキャピタル(VC)との協議を重ねながら、ピッチコンテストにも積極的に参加しています。

-ATELIERのビジネスモデルを教えて下さい。

【小規模小売店の様子(写真:Atelier提供)】

カンボジアの農村部には多くの小規模小売店があり、そのほとんどが女性によって運営されています。しかし、都市部との間には流通インフラの未整備による大きな格差があり、日用品などの必要な物資は都市からしか手に入りません。そのため、店主たちは片道3時間かけて買い出しに行き、1日の売上が30ドル程度という厳しい状況に置かれています。

こうした課題を解決するため、ATELIERはB2B向けのEコマースプラットフォームを構築しました。現在は、弊社の商品リストをもとに小規模小売店から個別に注文を受け、首都から農村部へ商品を配送するモデルで事業を展開しています。ただし、一回の注文量が小さいことや、インターネットやTelegramにアクセスできない店主も多いことが課題です。

そこで、ATELIERでは「コミュニティーリーダー」という役割を設け、地域内の20〜40店舗分の注文をまとめて受け付ける仕組みを導入しました。これにより、スマートフォンを持っていない店主でもサービスを利用できるようになっています。

さらに、フランチャイズモデルも採用しており、現在は3つの小売店がATELIERの注文を取り扱っています。今後、資金調達が整い次第、専用アプリを開発し、注文プロセスの効率化を図る予定です。現時点では、TelegramやFacebookで商品カタログを配信し、オンラインまたは電話で注文を受け、2日後に配送するモデルを採用しています。

- Cnaiアクセラレータープログラムへ参加することになった経緯と、これまでの学びで印象的だったことを教えて下さい

【小規模小売店で取り扱う商品の例(写真:Atelier提供)】

第一期生ファイナリストのTenbox(テンボックス)社のダネスさんからプログラムを紹介され、参加することになりました。結果として、参加してとても良かったと思っています。弊社のビジネスモデルの改善に加え、投資家との新たなコネクションができるなど、貴重なつながりを得ることができました。伴走支援チームも非常に親身にサポートしてくださり、心強かったです。

プログラムでは、エクセル上級コースなど実用的な内容の講座も提供され、すぐに業務に活かせる知識を身につけることができました。特に印象に残っているのは、ジェンダー視点に関するクラスです。カンボジアの文化に即したジェンダーの考え方を企業文化にどう取り入れるかという内容で、とても興味深く学ぶことができました。

このプログラムの唯一の難点を挙げるとすれば、毎回の宿題が少し多かったことでしょうか(笑)。


 

- 日本人がカンボジアで起業することの難しさとは何でしょうか。どのような課題がありますか。

https://www.spf.org/admin/imgmngr/index.php?units=btxig_img&l=-99

【AtelierのCEO中野陵さん】

カンボジアでの事業展開において、最初の課題は人材の確保です。優秀な人材は都市部に集中しており、農村部では信頼できる人材を見つけるのが難しく、日本人起業家が現地で金銭的な被害に遭うケースもあります。また、起業家支援プログラムの多くはドナー主導で、カンボジア人向けに設計されているため、外国人起業家は参加できないことが多く、JICAの支援も日本に本社がない企業は対象外です。こうした背景から、外国人起業家の挑戦を理解し、共に乗り越えてくれる現地人材の存在が不可欠だと感じています。

さらに、カンボジアは人口が少なく市場規模も限られているため、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達が難しい状況です。VCの多くは、5年で100万ドル規模の成長を求めますが、カンボジア国内だけではその達成は困難であり、将来的にはベトナムやフィリピンなど近隣国への事業拡大が必要だと考えています。

資金調達面では、シード期には助成金やマイクロファイナンス、銀行融資などの選択肢がありますが、10万〜30万ドル規模の「ミッシングミドル」層への資金供給が不足しています。また、インドネシアやフィリピンには存在するエンジェル投資家のネットワークが、カンボジアにはほとんどありません。そのため、現状ではドナーからのグラントや銀行融資を活用しながら売上を伸ばし、事業規模を拡大した上で、小規模VCからの資金調達を目指す戦略を取っています。

- 今後の展望を教えて下さい。

【Atelier社へ注文をする農村部の小規模小売商の店主(写真:Atelier提供)】

現在、バッタンバンでは少しずつ売上が伸びており、今後はシェムリアップや西部のポーサット州などへの事業拡大を検討しています。加えて、専用アプリの開発を進めており、決済機能や弊社との取引履歴(クレジットヒストリー)を記録する機能の追加を予定しています。

このクレジットヒストリーは、顧客である小規模小売商が金融機関から融資を受ける際に必要となるため、アプリを通じて顧客のファイナンスへのアクセス改善を図りたいと考えています。

一方で、カンボジアではマイクロファイナンスの普及に伴い、多重債務に陥る人が増えているという課題もあります。そのため、金融リテラシー教育の重要性を強く感じており、教育活動を担っていただけるNGOパートナーの探索も進めています。

私たちは「農村の可能性を解き放つ(Unlocking Rural Potential)」を合言葉に、地域に根ざした持続可能な事業展開を目指していきます。

- 編集後記

もともと起業を志していた中野さんは、大学卒業からわずか2年でエンジェル投資家から資金を調達し、スタートアップ「ATELIER」を立ち上げた。新たな挑戦に向けて、学び、行動し、果敢にチャレンジを続けるその姿勢は非常に印象的だ。

これまでATELIERに投資してきたエンジェル投資家たちは、短期的な利益ではなく、中野さん自身と彼のビジネスの可能性に期待し、長期的な視点で支援を決断したという。彼のように、世界を舞台に社会課題の解決に挑む日本の若者を、Cnaiプログラムを通じて支援できたことは、「日本人国際リーダーの育成」を重点目標にかかげる当財団にとっても大きな意義がある。

今後も、民間財団ならではの柔軟な発想と広範なネットワークを活かし、次世代の人材育成と、若者たちのグローバルな挑戦を力強く後押ししていきたい。

(笹川平和財団 アジア・イスラム事業ユニット 第3グループ 研究員 伊藤悦子)


 

第3グループ(社会イノベーション推進担当) 女性起業家支援(お知らせ)
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