東南アジアの持続可能な発展に重要な役割を果たす、女性の社会進出。なかでも起業は、特に農村部において女性が経済力を得るためのほぼ唯一の手段となる。起業を支援する組織の数々が、出資者など多様なステークホルダーと協働し女性の可能性を広げている。 起業エコシステムに影響力を持つ起業家支援組織がジェンダー視点を実装していることが、東南アジア諸国の働く女性たちを取り巻く、さまざまな課題を解決するには必要不可欠なのではないか。そんな想いから、笹川平和財団はオーストラリア外務省やNGOと協力し、起業家支援組織向けにジェンダー視点導入の指南書「ジェンダー・レンズ・インキュベーション&アクセラレーション(GLIA)ツールキット」を開発し、2020年に発表した。

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ジェンダーイノベーション事業グループ エコシステム強化(お知らせ)

実践的なジェンダー視点強化の指南書

GLIAツールキット

一般社団法人Earth Company共同代表/濱川 知宏


2022.04.19
15分

東南アジアの持続可能な発展に重要な役割を果たす、女性の社会進出。なかでも起業は、特に農村部において女性が経済力を得るためのほぼ唯一の手段となる。起業を支援する組織の数々が、出資者など多様なステークホルダーと協働し女性の可能性を広げている。
 
起業エコシステムに影響力を持つ起業家支援組織がジェンダー視点を実装していることが、東南アジア諸国の働く女性たちを取り巻く、さまざまな課題を解決するには必要不可欠なのではないか。そんな想いから、笹川平和財団はオーストラリア外務省やNGOと協力し、起業家支援組織向けにジェンダー視点導入の指南書「ジェンダー・レンズ・インキュベーション&アクセラレーション(GLIA)ツールキット」を開発し、2020年に発表した。

【インタビューの様子】

今回は、GLIAツールキットの開発や、実用化に向けた検証を行う「パイロット・プログラム」に携わったygap(オーストラリア)、 xchange(フィリピン)、SHE Investments(カンボジア)に、GLIAツールキットを使用して、支援プログラムや組織運営のジェンダー視点強化にどのような影響があったのか、今後ツールキットをどのように広めていこうと考えているのか一般社団法人Earth Company共同代表/濱川 知宏が話を聞いてみた。
 

- それぞれの組織の活動について教えてください。

ygap 戦略ディレクターのAudrey Jean-Baptisteさん(Audrey)

より公平で持続可能な世界を創るには、すべての人が社会起業となれる環境が必要だという想いから、ygapはアフリカ、アジア、太平洋諸島、オーストラリアを拠点に起業家支援を行っています。女性に特化した起業家支援プログラム「yher」、女性起業家の市場や金融アクセスの向上など、女性起業家が関わるエコシステム全体が包摂的となれるよう様々な活動を行っています。
SHE Investments 理事のCelia Boydさん(Celia)

SHE Investmentsはカンボジアの女性起業家支援組織で、インキュベーション・アクセラレータープログラムの企画運営と、起業エコステム構築支援を行っています。小さな事業を始めたばかりの女性起業家が男女格差を超え、中小企業として事業を拡大できるよう支援しています。
xchange ディレクターのErika Tatadさん(Erika)

xchangeはフィリピンの起業家支援組織で、高い可能性を持つアーリーステージ社会起業家への支援・投資を行っています。少し変わっているのが、複数の起業家を対象にしたグループ支援や短期支援は行わず、3年から7年の期間をかけて個々の起業家を支援していることです。支援プログラムから卒業した後も、xchangeのスタッフが起業家が運営する事業での理事や支援者となり長期的に関わりを続けることが多いです。

- ygapへ:GLIAツールキットの開発背景や途中経験した課題などについて教えてください。

【(左)GLIAツールキットの開発に関わった9団体】

【(左)GLIAツールキットの開発に関わった9団体】

【(右)パイロット・プログラムに参加した6団体】

【(右)パイロット・プログラムに参加した6団体】

Audrey:包摂的な起業エコシステム構築には、起業家だけでなく、出資家に対しても強い影響力を持つ起業家支援組織を対象にしたジェンダー視点強化の指南書が必要だという考えのもと、GLIAツールキットの開発が始まりました。
 
GLIAツールキットの開発には、笹川平和財団ジェンダーイノベーション事業グループやygap、オーストラリア政府外務貿易省の「Frontier Incubators」プログラムを筆頭に、数多くの団体が関わっています。東南アジアの代表的な起業家支援組織6団体による支援現場での検証を経て、多様な組織運営の形や学びのスタイルに合った、実践的なツールキットを開発することができました。She Investmentsやxchangeもこのパイロット・プログラムに参加した組織です。Erikaのように指南書を最初から最後まで通して読む方もいれば、各項目を必要な時に活用したい方もいるので、どちらにも対応できるよう「ツールキット(特定の目的で使用するように設計された一連の道具)」という形を取りました。

課題としては、GLIAツールキットは規範ではなくあくまでも指南書であることから、「正解」を求める読み手にとっては不安要素を残してしまうかもしれない、という点でした。活動を行う環境が違えば「正解」も異なるため、規範は現実的ではありません。この課題を乗り越えるために、GLIAツールキットに基づく研修を受ける起業家支援組織のコミュニティ「GLIA Community of Practice(COP)」を結成しました。共に学び合い成功事例を共有し合うことで、組織のジェンダー視点強化への知見を深め、自信構築に繋げてもらうことができました。また、多国籍なCOPのメンバーが自分たちの国でGLIAツールキット活用事例を作ってくれることで、それぞれの国でより身近な存在に感じてもらえるようになったと思います。

-xchangeとSHE Investmentsへ:GLIAパイロット・プログラムに参加した感想を教えてください。

【GLIAツールキット】

Celia:オーストラリア政府外務貿易省の「Frontier Incubators」を通してGLIAパイロット・プログラムに参加しました。ジェンダー視点強化の実践に取り組む国際コミュニティの一員になれたことが嬉しかったです。GLIAツールキットを実際に使ってみて気がついた点は、「自己診断ツールが欲しい」ということでした。自分たちの組織がジェンダー視点を持っているのか、強みと弱みはどこなのか、そしてツールキットのどの項目を使うべきなのかが分かる自己診断ツールがあると良いのでは、とGLIA開発チームに伝えました。
 
Audrey:とても良い指摘で、すぐに取り入れました。当初GLIAツールキットは長い、文字だらけの資料で、どこから手をつけて良いか分かりづらかったと思います。まずは自分たちの組織運営やプログラムについて振り返る自己診断から始めることで、GLIAツールキットの活用方法が分かりやすくなりました。
 
Erika: 同じく「Frontier Incubators」を通じてパイロット・プログラムに参加しました。過去に参加したジェンダーに関する研修は理論的なものが多かったので、GLIAツールキットを使って自分たちの組織運営に当てはめてジェンダー視点について考え、議論する場が持てたことに感動しました。xchangeはジェンダーに関しても先進的な組織だと思っていたので、自己診断ツールの結果を見てイメージとの差にショックを受けたのを覚えています。どこから手をつけて良いか分からないくらい多くの改善が必要だったのですが、COPのメンバーと一緒に課題を乗り越えていくことができました。

- GLIAツールキットを使ってみて、どのようなインパクトを感じているのでしょうか?

【xchange チーム写真】

Erika: GLIAツールキットを使い始めて12ヶ月で組織文化・従業員の態度や会話の中にもに変化が見られました。現在は組織の運営戦略、就業規則、人事周りの書類すべてがジェンダースマートであるか、専門家の力も借りながら見直しているところです。

【SHE Investments チーム写真】

Celia: GLIAツールキットを活用してからは、運営するプログラムがすべての女性にとって利用しやすいものであるよう配慮するようになりました。チーム内で多様性の尊重について話す機会を作った際に、「研修でハラール(イスラム教の戒律により合法とされる事や物)の食べ物があると嬉しい」と伝えてくれたイスラム教徒のスタッフがいました。カンボジアではヒジャブを着けないイスラム教徒の女性も多く、スタッフの信仰について把握しきれていなかったので、GLIAから対話の場を設けることの大切さを学びました。この経験から、研修などの運営チェックリストには「会場が女性だけでなく様々な宗教・障がいなどを持つ女性にも開かれたものかどうか」を確認する項目を追加しています。また、GLIAツールキットをきっかけに、スタッフ研修でLGBTQやトランスジェンダーの起業家を招き、多様なジェンダーについて学びプログラム運営に活かす取り組みも始まっています。GLIAツールキットを使い始める前は、男性採用時の職務内容に力仕事など「無意識バイアス」があったことも考えると、大きく進歩したのでは、と感じています。
Audrey: GLIAツールキットを活用してから、組織運営からプログラムすべてにおいてジェンダー視点を取り入れ、男女平等が組織戦略の中心に据えられるようになりました。最近では女性起業家向けの資金調達や電子決済のサービス、起業家の従業員に向けたジェンダー・社会的包摂ハンドブックを発表したばかりです。ygapにもジェンダー視点強化においてまだまだ改善するべき部分は多々あり、COPのメンバーとの交流が大きな原動力になっています。
 

- 他のジェンダーに関する指南書と比べた、GLIAツールキットの特性について教えてください。

Audrey: 東南アジア各国の地域に根差した事例も含む、起業家支援組織が開発に関わった実践的なツールというのはなかなか他に例がないと思います。
 
Celia: 単なる指南書ではなく、ビジョンを共にする仲間と出会える生きたコミュニティであるということが特別です。東南アジアの様々な国を拠点に活動するCOPのメンバーが各国の環境に合わせてGLIAツールキットを活用しており、多様な文化に対応できるツールになっていると思います。
 
Erika: ジェンダー視点強化に向けての取り組みは、終わりのない旅のようなものだと思っています。実験的に導入した施策について、COPのコミュニティの中で共有し合えることがとても心強いです。

- GLIAツールキットをどのように広めていこうと考えているのでしょうか。

【GLIAツールキット関係の内部ワークショップを開催するSHE Investments①】

Audrey: ygapが提供するプログラムや、政府機関との連携の中でもGLIAツールキットを活用することで、より多くの人にツールキットを知ってもらいたいと思っています。また今後は、インパクト・レポートを作成し、ツールキットを使用したことでどのような良い変化が生まれたのかを伝えていく予定です。
 
Celia: ツールキットに書かれていることをテーマに組織内でワークショップを開催し、チームに広めています。今後はカンボジアでのGLIAツールキット活用事例を増やし、カンボジアの起業エコシステム向上に良い影響をもたらすことができるよう活動していきたいと思っています。

【GLIAツールキット関係の内部ワークショップを開催するSHE Investments②】

Erika: xchangeのジェンダー視点強化にとって、GLIAツールキットは大変役立つツールだったので、ぜひみんなに使ってもらいたいです。ツールキットをフィリピンの社会環境に合わせて普及させる役割を担いたいと思っています。xchangeでの経験やCOPで共有された事例を通し、「どんな小さなことでも良いので行動を起こし始めることが大切」というメッセージを伝えていきたいです。

編集後記

ygap、xchange、SHE Investments のような起業家支援組織がジェンダー視点を実装することが、包摂的な起業エコシステム構築に欠かせない。GLIAツールキットが、各国で活躍する起業家支援組織が開発に関わった、アクセラレーターに向けた、実践的なジェンダー視点強化の指南書であることが伺えた。GLIA Community of Practice(COP)は、ビジョンを共にする起業家支援組織のサポートコミュニティだけでなく、多様な文化を持つ東南アジア各国でのGLIA活用事例作りという大切な役割を担っている。次回の記事ではCOPについてより詳しく話を聞いてみたい。
 
GLIAツールキットは下記オンラインサイトにて英語、ミャンマー語、タガログ語(フィリピン)、クメール語(カンボジア)に対応し公開されている。
※https://gliatoolkit.com/         
 (一般社団法人Earth Company共同代表/濱川 知宏)
一般社団法人Earth Companyは「次の世代に残せる未来」を創出すべく、インドネシアのバリ島を拠点に、社会変革を起こす「人」と「団体」を支援・育成しています。社会と自然が共鳴しながら発展する「リジェネラティブなあり方*」を追求するために、事業を展開しています。

*社会の発展が相乗効果をもって地球上全ての命のウェルビーイングを向上するあり方
・詳しくはウェブサイト: https://www.earthcompany.info/ja/

ジェンダーイノベーション事業グループ エコシステム強化(お知らせ)
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