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戦略対話・人材育成グループ

サファヴィー・イスラム世界未来研究センター長に聞く(聞き手:坂梨中東研究センター長)

中東地域の国際関係
イラン内政関係

第1グループ(戦略対話・交流促進担当)


2025.01.16
26分
笹川平和財団第1グループ(戦略対話・交流促進担当)は、「戦略的日・イラン関係構築」事業において、定期的にイランの有識者やオピニオンリーダーを招へいし、イランおよび中東地域を取り巻く現状などについて、日本の有識者と意見交換を実施しています。今回は、サファヴィー・イスラム世界未来研究センター長(写真右)を招へいし、坂梨中東研究センター長(写真左)を聞き手として、イラン・中東地域を取り巻く現状についてお話を伺いました。特に2023年10月のガザ紛争勃発以降、中東情勢の不安定化・流動化は加速度的に増しています。この対談の直前のタイミングでも、ハマスの高官であるハニーヤ氏がテヘランで殺害されました(この対談は2024年8月6日に実施されました。同氏の暗殺は2024年7月31日に発生しました)。

1.中東地域の国際関係

(1)ガザ紛争

水谷研究員 
サファヴィー様、坂梨様、本日はどうぞよろしくお願いします。さて早速、本日は大きく次の2点に関する見解を伺います。1点目は中東地域を巡る国際関係、そしてイランの内政関係です。まず、ガザ地区で現在も進行中の紛争は、中東地域の国際関係に影響を与える最も深刻な問題の一つです。この問題についてサファヴィー氏の見解をお伺いします。

サファヴィー氏 
まず、このような場に招待いただいた笹川平和財団に感謝します。さてご質問に関して、いくつかの観点から私見を述べます。第一に、イランは10月7日の出来事(注:イスラエルとガザの紛争が開始した日)には関与していません。第二に、イランの立場として、犠牲者が1,000人いた場合の適切な対応というのはそれに比例するべきものであり、決して1,000人を超えてはならないということです。更に、女性や無実の子供たちを含む一般市民への集団的な懲罰の実行は受け入れられません。イランは現状を悪化させようとするのではなく、解決しようとしています。問題は、イランが最善を尽くそうとするその方法です。相手側、つまりイスラエルが、〔敵対者であるハマスの〕交渉者を殺害することで伝えられるメッセージは明確です。つまり、イスラエルは交渉したくないということ、そして、交渉プロセスを最大限の圧力と能力で破壊しようとしているということです。

また別の観点では、イランはテロの犠牲者です。イランはハニーヤ氏の殺害以前から、ガザ問題にある一定程度関与していました。しかし、この関与はガザ問題とも密接に関連する形で、イランとイスラエルの間の直接的な対立にエスカレートしました。2024年4月にシリアで発生したイラン政府の高官に対するイスラエルの攻撃は、イランとイスラエルの間の直接的な衝突の事例でしたが、ガザ紛争と直接の関係はありませんでした。

水谷研究員 
ありがとうございます。坂梨様、サファヴィー氏の見解について、ご質問を頂戴できればと思います。

坂梨氏 
私からは、〔ガザ紛争に関する〕解決の可能性について伺います。おっしゃったように、イスラエルが交渉に消極的であっても、ガザでの紛争を終わらせる必要があるという点では合意できると思います。そこで、イランの次の戦略として、この戦争を終わらせるためにどのような働きかけをすべきでしょうか。

サファヴィー氏 
イスラエルの意図については先ほど述べた以上のことは分かりませんが、イランとして何をすべきかを提案することはできます。物事には複数の側面があります。仮に〔係争中の〕当事者のうち片方に解決する意思がない場合、問題全体を解決することはできません。イランは域内の、および国際社会における利害関係者と共に、ガザの危機を終わらせるべきだという信念の元に団結する必要があります。次に重要なのは、これを達成する方法です。実際的なアプローチとしては、パレスチナとイスラエルの双方に圧力をかけ、紛争を終わらせるという方法があります。現在のところ、パレスチナとハマスの側は大きな圧力を受けている一方、イスラエルは多くの財政的および軍事的支援を受けています。〔当事者の〕一方のみが圧力を受けている状況では、解決が見込めないと思います。

坂梨氏 
つまり、現状では、解決不可能という見方でしょうか。

サファヴィー氏 
このような状況下では、そうだと思います。解決〔のために〕は、先に述べたように、イスラエルとパレスチナ双方に圧力をかけることが不可欠です。私が見るに、パレスチナ人は紛争を終わらせる用意があります。しかし、イスラエルも同様に準備があるかどうかは疑問です。

(2)イランーサウジアラビア関係

水谷研究員 
ありがとうございます。次のトピックに移りたいと思います。ここではサウジアラビアとイランの関係についてお伺いします。なぜならこの二国は中東で最も影響力のある国であり、両国の関係は地域の安定に大きく影響するからです。

サファヴィー氏 
5年前までは、イランとサウジアラビアが数年以内に〔二国間の〕問題を解決できるなどと信じていた人はほとんどいませんでした。従って、私がこのことを達成する方策についての本を書いたとき、両国の関係者から批判を受け、多くの人が私自身の見解を過度に理想的であり、近い将来における達成は不可能と見なしました。しかし3年前、両国は関係正常化を決定し、状況は大幅に改善されました。サウジアラビアにとってのポジティブな結果は、地政学的な対立から経済協力へのシフトということが挙げられますが、これは大きな進歩です。この変化は、イエメン、スーダン、および域内の他の国々にポジティブな影響を与える可能性があります。またサウジアラビアがイエメン内政の調整を通じ、イエメンの状況を改善できることを願っています。現在、〔イエメン情勢安定化に〕欠けている要素は、同国において正統性を有し、かつ公式の政府を設立するための国内諸派の協力です。他方、イランとサウジアラビアの間にある問題をすべて解決するには、まだかなりの道のりがあります。両国は握手をしたにもかかわらず、〔関係改善に向けた〕具体的なステップの進捗は遅れているようです。両国は関係強化のための実際のステップを策定し、実施する必要があります。両国の大使が任命されたことは重要ですが、それだけでは不十分です。両国が論点を地政学的なものから経済協力に移すことも一案でしょう。両国が共通の経済利益を想定し、それを確立できるなら、将来の二国間関係も保証されるでしょう。両国が慎重にことを運べば、経済的に真に重要目的に自らの利害を一致させるメカニズムが開発されるでしょう。

坂梨氏 
ありがとうございました。イランとサウジアラビアの経済関係が期待通りに進展していない現状に関し、その要因は何だとお考えですか。

サファヴィー氏 
私の意見では、国連ではなく米国によって課されている制裁の圧力だと思います。米国の制裁は〔国連制裁に基づくものではなく、したがって〕違法です。これらの制裁が、経済協力の大きな障害となっています。実はこの政策は、米国の利益にも反しています。イランが、米国が考える意味での“普通の”行動を取るということが、米国のイランに対する要求の一つです。しかし、もし米国がイランにそのような行動を望むのであれば、〔イランに〕インセンティブを提供し、イランと他国とのつながりを確立させるべきです。他国とのつながりがあるならば、期待される行動からの逸脱は大きな損失につながりうるとイランは認識するでしょう。逆に、そうしたつながりや利益がなければ、イランには米国の要求に従う動機がなくなります。重要なのは、どちらのステップが最初に来るべきかを決定することです。

坂梨氏 
別の視点からも質問があります。サウジアラビアとイランの相互に対する信頼のレベルは、両国の経済関係が限定的であるという現状に影響を与えているとお考えですか。

サファヴィー氏 
イランとサウジアラビアの間には、相互に対する深い信頼が欠如しており、それが大きな障壁となっています。信頼には様々なレベルがあります。仮に互いを最も信頼している状態を10とした場合、現在はレベル2の水準にあると考えており、最高水準に達するには8レベルの上昇が必要です。一人のイラン人として、今回成立した新政府は外交政策上、サウジアラビアとの関係を優先させるべきことを提案します。さらに、両国間で様々な形の協力を確立することが重要です。例えば〔サウジアラビアの〕ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、宗教ツーリズムだけでなく、自然ツーリズムなどの新しい観光戦略を導入しました。イランとサウジアラビアは観光客の交流を促進することが可能です。さらに、知識人の交流の促進もできます。現在、両国が合同で開催している会議はありませんが、このようなイニシアチブにより、知識人や一般市民が互いにもっと親しくなることができるでしょう。両国間の信頼を高めるためには、これらの方策が取られるべきです。

(3)アンサールッラー(フーシ派)に関して

坂梨氏 
イエメンのアンサールッラーに関する問題についてもお聞かせいただけないでしょうか。特に、サウジアラビアのフーシ派に対する見方をお聞かせいただきたいです。イスラエルや、バブ・エル・マンデブ海峡(注)や紅海を通過する商船を標的としたアンサールッラーの攻撃について、サウジアラビアはどのように見ているでしょうか。

(注)アラビア半島南西部とアフリカ大陸の間にある海峡で、海上交通の要衝の一つ。

サファヴィー氏 
サウジアラビアの視点から説明してみましょう。サウジアラビアが優先させるのは、中東地域における経済的な目標の達成です。中東地域が不安定な状況にあることはこれらの目標を損なうため、地域の安定を脅かす行動はすべてサウジアラビアの利益に反します。従って、サウジアラビアはアンサールッラーの活動、特にイスラエルへの攻撃に不満を持っており、これこそが、彼らがアンサールッラーの活動に反対している理由です。サウジアラビアはまた、アンサールッラーとアメリカ主導の有志連合双方に対し、自制を促すための最大限の努力を行っていますが、これは状況の更なる悪化を防ぐためです。

一方、アンサールッラーの視点に移りましょう。彼らはパレスチナに同情し、パレスチナ人の運命はイエメン人の運命と直接関係していると信じています。アンサールッラーは国民単位ではなく、国境を越えた、ムスリム、あるいは同胞としての団結を提唱しています。彼らはパレスチナ人を兄弟のようにみなし、パレスチナ人が直面する問題を、彼ら自身の問題のように捉えています。この考え方は、米国が、イスラエルの行動が正しいか間違っているかを判断することなく、イスラエルを無条件に支持するという関係に似ています。イエメン人からは、パレスチナ人が助けを求めても、誰も支援の手を差し伸べないとみえています。加えて、イエメンのインフラが破壊されてからすでに何年も経過しており、彼らには失うものがほとんどありません。例えば、もし私が多くの車や家を持っていたら、それらを失うことを恐れるでしょう。しかし、もし何も持っていなければ、どんな行動でも取れることになります。

(4)中東地域内でのイランの役割

水谷研究員 
これがこのセクションの最後の質問です。イランの中東における役割についてのご意見を伺いたいと思います。具体的には、地域を統治する役割に基づいたイランの果たすべき役割についてのお考えを伺いたいです。

サファヴィー氏 
ガザ危機の発生以降も、西洋諸国、つまり米国やアラブ諸国などその他の利害関係者諸国は、イランを交渉から排除してきたというのが私の考えです。このアプローチの問題の一つは、パレスチナと最も強い繋がりを持つイランが交渉プロセスから排除されていることです。短期的には、ガザ危機だけでなく、イエメン危機やその他の地域紛争をめぐる和平交渉にも、イランが含まれるべきです。和平交渉においてイランを孤立させるという政策は誤っています。今や、新しいアプローチを探るべき変化の時です。〔最近成立した〕イランの新政府は、他国との問題解決を優先しています。現在のイラン国内の雰囲気は、積極的な役割を果たすというムードに満ちており、世論もそのようなムードを支持しています。これは望ましい状況ですが、長続きしない可能性もあるため、この機会を逃さず迅速に行動せねばなりません。今行動を起こさなければ、2年後にイラン国内の雰囲気が同じように良好であるかどうかは不確かです。

坂梨氏
他国が地域の和平交渉からイランを除外するのはなぜでしょうか。

サファヴィー氏
西洋諸国の視点に立ってみましょう。彼らは地域におけるイランのハードパワーを危険視しています。地域の様々な問題に関する交渉の席をイランに提供することは、イランに一定の利点と利益をもたらし、そのソフトパワーの強化につながります。イランがハードパワーと強化されたソフトパワーを組み合わせることができれば、〔それは彼らにとって〕重大で解決困難な問題になる可能性があります。これが見方の一つです。

次にイランの視点に切り替えます。具体的な経済的利益を伴う形でのイランへの関与は、現在、財政的な困難に直面するイランの政府と国民の双方にとって有益です。国民の経済状況を改善することで、政府はその正統性を高めることができるため、このアプローチはイラン側を満足させることができます。中東におけるイランの影響力に関しては、ポジティブに活用することができます。例えば、イランはイエメンでの和平〔の実現〕に反対しているわけではありません。イランは、イエメンに公式の政府が存在すれば、イエメン紛争を解決するための建設的な役割を果たすことができます。イエメン政府は国際法に従って、責任ある行動を取らなければなりません。紅海の海上安全保障ももう一つの懸念事項です。イエメンに、この問題に責任を有する政府関係者がいないことが、この問題を引き起こしています。イランはその他の利害関係者と共に、イエメンにおける公式な政府の設立を支援し、紅海の安全を強化することができます。

パレスチナ・イスラエル紛争に関しても、イランは克服不可能な問題ではないと主張しています。イランは、国連の原則に従って、ユダヤ人であろうとムスリムであろうと、すべての人間を平等に認識する重要性を強調しています。まとめると、イランが地域の安定を乱しているという考えは正しくありません。イランは様々な状況において、ポジティブな役割を果たすことができます。

2.イラン内政関係

(1)ペゼシュキヤーン新大統領の強み

水谷研究員 
さてここからは別のトピックに移ります。イランの内閣はまだ正式に発表されていませんが〔注:インタビューは2024年8月6日に実施〕、ペゼシュキヤーン大統領に関する見解を伺えればと思います。まず、新大統領の強みについてご教示ください。


サファヴィー氏 
まず、今回の選挙に先立って、改革派が再び権力を握るとは誰も予想していませんでした。イラン国内外のすべての人々が、改革派がイランで再び権力を握る可能性はないと述べていたので、結果は私にとっても驚きでした。ペゼシュキヤーン氏が候補者として受け入れられた(注)後、多くの人々が、これは単なるショーだと主張しました。国家〔体制指導部〕は、保守派のガーリーバーフ候補氏を支持しているようにみえました。ジャリーリー氏とペゼシュキヤーン氏の決選投票の実施が決まると、全ての体制指導部は国家がジャリーリー氏の勝利を確実なものにするだろうと予測しました。私は、イランが民主主義を完全な形で体現しているとはいいません。しかしイランにはある程度の民主主義があり、それは非常に価値があることだと考えています。

(注)イランでは大統領候補として立候補する前に、候補者としてふさわしいかをはかる審査がある。

もう一つの進歩の指標は、どの候補者が優れているかを見分ける人々の能力です。例えばある候補者は、「選ばれた場合、毎月家族に金を現物で提供する(具体的には、各家庭への金2グラムの配布)」と約束しました。しかし人々は、むしろこの公約に不信感を抱き、また、非現実的だと考えました。これはイランの有権者の成熟度を示しており、称賛すべきことです。さらに、この選挙結果に基づく重要なメッセージは、有権者が他国との交渉への参加を支持しているということです。主要な議論の一つは、外交交渉の重要性に関するものでした。ペゼシュキヤーン氏の見解は、保守派の視点とは著しく異なります。現在の世論とペゼシュキヤーン氏の立場をともに考慮すると、今がイランとの交渉に参加するための重要な時期であることが明らかです。これは非常に重要な点です。例えば、イスラエルの目的に対抗する必要があります。イランの大統領就任式の翌日に起こったハニーヤ氏の暗殺未遂は、イランの国際関係を損なうことを目的としたイスラエルからの明確なメッセージでした。私たちがすべきこと、そしてペゼシュキヤーン氏の政府が注力すべきことは、交渉プロセスの妨害というイスラエルの目標が達成されることを防ぐことです。

ペゼシュキヤーン氏の強みについてもう一つ注目すべきなのは、そのシンプルなライフスタイルであり、それが、同氏がイラン国内で有名になるきっかけとなりました。重要なのは、彼を腐敗や汚職などを理由に非難する人は誰もいないということです。私自身、ペゼシュキヤーン氏の誠実さを尊敬しています。これまでいかなる汚職にも関与してこなかったという事実は、非常に重要です。さらに、最高指導者との個人的なつながりも注目に値します。これはイランの革命後の歴史、特にハーメネイー師のもとで、改革派が最高指導者からこのような信頼を得たことは、率直に言って初めてのことです。私は、この信頼に基づいて、ペゼシュキヤーン氏がイラン国内で体制指導部と政府の統合を促進し、内部および外部の課題に対処する良い機会を提供すると信じています。そしてこの点は、ペゼシュキヤーン氏が持つ最も強力な点の一つです。

また別の重要な点として、保守派にも彼を信頼するグループもおり、ペゼシュキヤーン氏は同派と協力することができます。また、彼はこれまで軍の関係者とも協力してきました。将来は不確かですが、メディアを通じて状況を観察すると、多くの政府高官がペゼシュキヤーン氏の元を訪れ、その意見を求めていることがわかります。これは単なる力の誇示ではなく、最高指導者によって命じられたものです。イスラム革命防衛隊もこれまで彼と協力してきました。この協力関係は非常に重要です。なぜなら革命防衛隊が何かに躊躇した場合には、政策の実現が困難になる可能性があるからです。

水谷研究員 
ありがとうございました。イランの新政府について、坂梨さんからご質問があればお願いします。

坂梨氏 
ありがとうございます。新大統領のペゼシュキヤーン氏には、支持者である一般国民が望むように、制裁の一部を解除するだけの力があるとお考えでしょうか。

サファヴィー氏 
状況は複雑で、対立する二つの勢力が存在しています。まず、国内の強硬派の行動をじっくりと観察する必要があります。強硬派はペゼシュキヤーン氏の努力を妨げる力を持っています。これについては、ペゼシュキヤーン氏の、内部の権力構造のさまざまなレベルと関係を構築し、管理できる能力に依存します。これは、例えばロウハニー前大統領が成功しなかった部分です。ペゼシュキヤーン氏ももちろんこのような力を完全に有しているわけではなく、強硬派もまた重要な影響力を持っています。しかし、将来は双方がどれだけうまく協力できるかにかかってくると思います。

主要なひとつの問題は、欧州諸国〔英・仏・独〕との新しい合意、またはスナップバックメカニズムの延長に関するものです。交渉のための時間が、2025年10月までの1年しか残されていないという課題もあります。ペゼシュキヤーン新大統領は欧州側との関係の再構築に全力を尽くさなければなりません。欧州諸国と米国が中東地域の安全保障の問題に取り組む最中に、イラン政府が制裁の問題に対処することを目指すのであれば、迅速に行動する必要があります。

(2)ペゼシュキヤーン内閣の展望

水谷研究員
ありがとうございました。次の質問が最後になりますが、改めて新大統領の可能性と展望についてお伺いしたいと思います。すでにご説明いただいたとおり、新内閣の形成がポジティブな変化をもたらすことが期待されています。外交政策や社会的影響に関して、新内閣に対する期待を教えてください。

サファヴィー氏
歴史的にみれば、イランが自国を取り巻く政治的および経済的な状況をうまく乗り切るためには、15世紀のサファヴィー朝期に遡る、主要勢力間との関係において均衡を保つという戦略を続ける必要があります。このアプローチは、東西の影響力の間に位置するイランの外交政策にとっての主軸となるものです。サファヴィー朝は歴史的に東西の国々をつなぐ重要なパイプとして機能し、スムーズかつ戦略的に連携を促進しました。このアプローチは、イランの統治にとって最も効果的な戦略であり続けています。地政学的には、イランはその国益を獲得するために、地理的な位置を活用し続けることが最善です。これはイラン・イスラム共和国に限られたことではありません。イランの利益は、東西の協力関係の均衡を保つことにあります。中国や米国のような大国にとっても、イランを一つの同盟の一部に押し込もうとしないことが利益となります。イランの中立的な立場は、主要国にとっての利益となるのです。

ロウハニー元大統領のアプローチの問題点は、すべての面において西側諸国〔との関係〕に重点を置いたことであり、最終的には失敗しました。またライースィー前大統領のアプローチの弱点は、全ての面で東側諸国〔との関係〕に重点を置いたことです。しかし、ペゼシュキヤーン氏は東西双方との関係を構築する可能性を有し、これは前任者たちに比較すると大きな利点です。ただし、これはペゼシュキヤーン氏の決定だけに依存するものではなく、中国と米国の間でイランの中立政策を認め、これを支持する何らかの合意も必要となります。これは中国および米国の双方にとっても利益となります。

水谷研究員
ありがとうございました。坂梨さん、何か他にコメントや質問があればよろしくお願いします。

坂梨氏
先ほどの質問に関連し、2025年1月にトランプ氏が米国大統領に就任した場合、スナップバックメカニズムも関連させる形でイランとの取り引きを仕掛ける可能性はあるのでしょうか。2025年10月の期限について言及されましたが、次期米国大統領の任期中にあたります。トランプ氏はどのような行動を取ると思いますか。

サファヴィー氏
トランプ氏はイランの無条件かつ無制限の降伏を望んでいます。彼がこれを望んでいるとしても、それは本当に実現可能でしょうか。歴史的な証拠は、そうではないことを示唆しています。しかし、トランプ政権が現実的な措置を取るならば、取り引きは可能だと思います。トランプ氏がイランの英雄の暗殺に関与していることから、両国間の直接の交渉は困難かもしれません。しかし、これはすべての交渉の道が閉ざされていることを意味しません。双方が現実的な視点を採用すれば、間接的な交渉もポジティブな結果がもたらし得ると信じています。

坂梨氏
取り引きが成立する可能性はあるということですね。ご意見ありがとうございました。

水谷研究員
本日の対話にご協力いただき、感謝します。

坂梨氏・サファヴィー氏
ありがとうございました。
以上
Seyed Hamzeh Safavi (セイエド・ハムゼ・サファヴィー)氏
イスラム世界未来研究所 所長|テヘラン大学政治学部 教授
【略歴】M.A. in Political Science from Imam Sadiq University(2008)
    Ph.D. in Political Science from Allameh Tabatabai University(2013)

坂梨 祥(さかなし さち)氏
中東研究センター センター長(研究理事) / 専門分野:中東地域の政治・国際関係、地政学とエネルギー
【略歴】東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻修士号取得(1997)
    東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程単位取得退学(2005)

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