第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
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ウクライナ避難民受入の今-共生社会のあり方と教育の未来について
【公開シンポジウム開催報告】
2023.3.31
笹川平和財団は、2023年3月7日に、NPO法人なんみんフォーラム、NPO法人国際活動市民中心(CINGA)と共催で、日本財団の協力を得て、公開シンポジウム「ウクライナ避難民受入の今 ― 共生社会のあり方と教育の未来について」を開催しました。本シンポジウムは駐日ウクライナ特命全権大使による基調講演、及び国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)からの講演、そして切り口の異なる3部構成となっており、全体を通じ、様々な立場からのウクライナ避難民受入に関する発表・意見交換がなされました。
冒頭の当財団角南篤理事長からの開会の挨拶では、ウクライナへの継続的な支援の必要性と、難民・避難民、そして外国ルーツを持つ子どもたちなど多様な背景や能力を持つ方々が活躍できる社会になっていけるよう教育を改善していく可能性について言及がありました。
冒頭の当財団角南篤理事長からの開会の挨拶では、ウクライナへの継続的な支援の必要性と、難民・避難民、そして外国ルーツを持つ子どもたちなど多様な背景や能力を持つ方々が活躍できる社会になっていけるよう教育を改善していく可能性について言及がありました。
1. 基調講演
基調講演では、セルギー・コルスンスキー氏(駐日ウクライナ特命全権大使)よりウクライナの人々の現状と日本の皆様からのウクライナ避難民への支援に対する謝辞をビデオメッセージでいただきました。更にナディア・ボズディガン氏(同館一等書記官)より”Education in Ukraine in the Times of War”と題して、ウクライナ本国での教育の現状についてご報告をいただきました。
2. 講演
続く講演では、伊藤礼樹 氏(UNHCR駐日代表)より、「世界の難民の状況」と題して、現在1億人を越える世界の難民の状況と、難民に関するグローバル・コンパクトについてお話しいただきました。
第1部「ウクライナ避難民の受入政策と現状」
山形正洋氏(出入国在留管理庁出入国管理課補佐官)より「ウクライナ避難民の受入政策と支援について」と題して、ウクライナ避難民の在留状況及び日本国政府としての支援、身元引受先のない人への支援等についてご講演いただきました。続いて、相田恭輔氏(文化庁国語課日本語教育評価専門官)より「文化庁による日本語教育支援について」と題して、同庁が取り組むウクライナ避難民に対する生活に必要な初期日本語教育、彼/彼女らを受け入れた場合の生活に必要な日本語教育(補助対象事例)、「生活者としての外国人」のための日本語学習サイト(つながるひろがるにほんごでのくらし)、更にオンライン日本語学習プログラムコースについてご講演いただきました。
山形正洋氏(出入国在留管理庁出入国管理課補佐官)より「ウクライナ避難民の受入政策と支援について」と題して、ウクライナ避難民の在留状況及び日本国政府としての支援、身元引受先のない人への支援等についてご講演いただきました。続いて、相田恭輔氏(文化庁国語課日本語教育評価専門官)より「文化庁による日本語教育支援について」と題して、同庁が取り組むウクライナ避難民に対する生活に必要な初期日本語教育、彼/彼女らを受け入れた場合の生活に必要な日本語教育(補助対象事例)、「生活者としての外国人」のための日本語学習サイト(つながるひろがるにほんごでのくらし)、更にオンライン日本語学習プログラムコースについてご講演いただきました。
第2部「実践報告:民間セクターによる取組」
神谷圭市氏(日本財団 経営企画広報部ウクライナ避難民支援室リーダー)より「日本財団の実施しているウクライナ支援について」と題して、日本財団の取組およびアンケート調査結果、新しい取組としての「ウクライナ避難民向け日本語学校奨学金」についてご講演いただきました。
続いてCINGAより3つの報告をいただきました。まず、青柳りつ子氏(Support-R相談コーディネーター/行政書士/社会福祉士 )より「避難民生活相談センター(Support-R)の活動から見える支援者支援の在り方」および相談を通じて見えた課題について、次に、ご自身もウクライナ避難民であるZhuravel Olha氏(心理士)から「ウクライナ語の『心のよりそい電話』の活動報告」と題し、その相談内容と典型的な問題について、更に中川美保氏(Support-R相談コーディネーター/日本語教師)より「ウクライナ避難民への日本語教育支援の問題と新たな挑戦」と題し、「日本語教育支援に関する全国電話調査の結果から、主体的に参加できないと日本語習得・継続につながらないのではないか」という問題意識に端を発したCINGAの新しい挑戦に関してご報告いただきました。
更に第2部最後の報告として、赤阪むつみ氏(なんみんフォーラム理事)から「ウクライナの人々の受け入れから見えてきたこと」と題し、Support-Rが実施してきたウェルカムガイドと避難民の方へのFAQの作成、および今後の課題としての多様な選択肢を想定したスキームづくりと、求められる支援者の倫理についてご報告いただきました。
神谷圭市氏(日本財団 経営企画広報部ウクライナ避難民支援室リーダー)より「日本財団の実施しているウクライナ支援について」と題して、日本財団の取組およびアンケート調査結果、新しい取組としての「ウクライナ避難民向け日本語学校奨学金」についてご講演いただきました。
続いてCINGAより3つの報告をいただきました。まず、青柳りつ子氏(Support-R相談コーディネーター/行政書士/社会福祉士 )より「避難民生活相談センター(Support-R)の活動から見える支援者支援の在り方」および相談を通じて見えた課題について、次に、ご自身もウクライナ避難民であるZhuravel Olha氏(心理士)から「ウクライナ語の『心のよりそい電話』の活動報告」と題し、その相談内容と典型的な問題について、更に中川美保氏(Support-R相談コーディネーター/日本語教師)より「ウクライナ避難民への日本語教育支援の問題と新たな挑戦」と題し、「日本語教育支援に関する全国電話調査の結果から、主体的に参加できないと日本語習得・継続につながらないのではないか」という問題意識に端を発したCINGAの新しい挑戦に関してご報告いただきました。
更に第2部最後の報告として、赤阪むつみ氏(なんみんフォーラム理事)から「ウクライナの人々の受け入れから見えてきたこと」と題し、Support-Rが実施してきたウェルカムガイドと避難民の方へのFAQの作成、および今後の課題としての多様な選択肢を想定したスキームづくりと、求められる支援者の倫理についてご報告いただきました。
第3部「難民/避難民の教育支援」
まず安達一(当財団常務理事)と岩品雅子(同財団アジア・イスラム事業グループ研究員)より、ウクライナ避難民の教育分野に関する状況・支援調査の結果を報告しました(別紙)。
続くパネルディスカッションでは、冒頭にパネリスト2人が、それぞれのフィールドからみたウクライナ避難民受入についての報告をいただきました。まず田中宝紀氏 (NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者)より、「海外にルーツを持つ子ども・若者のための専門教育支援事業:YSCグローバル・スクールにおける支援実践から」と題し、海外ルーツの子どもの現状とYSCによるウクライナ避難民の子どもへの支援状況、海外ルーツの子どもへの学校・地域支援体制の欠如や不十分さ、更に地域間格差が他の事例と同様にウクライナ避難民の子どもの受入においても課題となっているという現状等をご講演いただきました。
一方、明石純一氏(筑波大学人文社会系明石純一教授)より、「ウクライナ避難民の受入れが今の日本社会に提起するもの~政策的文脈~」と題し、避難民受入に関する政策的な進展の説明と論点整理をいただきました。これら2つの報告をもとに、石川美絵子氏(社会福祉法人日本国際社会事業団常務理事・社会福祉士)にモデレーターを務めていただき、パネリスト2人がウクライナ避難民受入に関する様々な論点を議論しました。その中では、ウクライナ避難民の受入を経て、難民・避難民に関して、日本でもこれまでに例をみないほど進展のあった関連の政策が一過性のものにならないようにという点や、難民受入支援も、その他の様々な困難を抱えている人々への支援と繋がることで相乗効果や体制拡充が図られるといった点が議論されました。
最後に閉会の挨拶として山口薫氏(なんみんフォーラム理事)より、今回のウクライナ避難民の方が抱える問題は、突然日常を奪われ、色々な事情・経緯で日本への避難を余儀なくされた人々や、彼らをサポートしてきた人が孤軍奮闘で直面してきた課題との共通点が多くあるため、個々のウクライナ避難民の問題に留まらず、その先もみられると良いといった点が提起されました。
まず安達一(当財団常務理事)と岩品雅子(同財団アジア・イスラム事業グループ研究員)より、ウクライナ避難民の教育分野に関する状況・支援調査の結果を報告しました(別紙)。
続くパネルディスカッションでは、冒頭にパネリスト2人が、それぞれのフィールドからみたウクライナ避難民受入についての報告をいただきました。まず田中宝紀氏 (NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者)より、「海外にルーツを持つ子ども・若者のための専門教育支援事業:YSCグローバル・スクールにおける支援実践から」と題し、海外ルーツの子どもの現状とYSCによるウクライナ避難民の子どもへの支援状況、海外ルーツの子どもへの学校・地域支援体制の欠如や不十分さ、更に地域間格差が他の事例と同様にウクライナ避難民の子どもの受入においても課題となっているという現状等をご講演いただきました。
一方、明石純一氏(筑波大学人文社会系明石純一教授)より、「ウクライナ避難民の受入れが今の日本社会に提起するもの~政策的文脈~」と題し、避難民受入に関する政策的な進展の説明と論点整理をいただきました。これら2つの報告をもとに、石川美絵子氏(社会福祉法人日本国際社会事業団常務理事・社会福祉士)にモデレーターを務めていただき、パネリスト2人がウクライナ避難民受入に関する様々な論点を議論しました。その中では、ウクライナ避難民の受入を経て、難民・避難民に関して、日本でもこれまでに例をみないほど進展のあった関連の政策が一過性のものにならないようにという点や、難民受入支援も、その他の様々な困難を抱えている人々への支援と繋がることで相乗効果や体制拡充が図られるといった点が議論されました。
最後に閉会の挨拶として山口薫氏(なんみんフォーラム理事)より、今回のウクライナ避難民の方が抱える問題は、突然日常を奪われ、色々な事情・経緯で日本への避難を余儀なくされた人々や、彼らをサポートしてきた人が孤軍奮闘で直面してきた課題との共通点が多くあるため、個々のウクライナ避難民の問題に留まらず、その先もみられると良いといった点が提起されました。
3. 事前質問に対する回答
事前に多くのご質問をいただきましたが、時間の関係上、全ての質問に回答ができませんでした。以下、いくつかの質問について登壇者の方々からの回答を掲載します。
【質問1】
(入管庁山形様へ)今後のウクライナ避難民の方の、在留資格の延長や切り替え等はどのようになるでしょうか。また、身寄りのない方に対して、日本政府から一時滞在場所や生活費、日本語学習、地方自治体・民間企業等とのマッチング等の支援が行われていますが、来年度4月以降も継続されるでしょうか。
【回答1】
現時点において、ウクライナ情勢は依然として不透明であることから、情勢不安を理由に本邦への在留を希望するウクライナ避難民の方々については、在留資格の期間更新及び資格変更の手続を行うことができます。これらの手続は入管庁ホームページで案内するとともに、期間更新手続については、本年2月にウクライナ避難民全員に対し、お手紙(日本語、英語、ウクライナ語)を発送して案内しております。
身寄りのない避難民の方々については、本年2月、更に1年間の生活費等の支給継続を決定しました。また、一時滞在施設における日本語教室やマッチング等の支援は4月以降も引き続き実施してまいります。
日本政府としては、避難民の方々のニーズ等をきめ細かくくみ取りながら、政府全体で避難民の方々に寄り添った支援を引き続き行ってまいります。
(入管庁山形様へ)今後のウクライナ避難民の方の、在留資格の延長や切り替え等はどのようになるでしょうか。また、身寄りのない方に対して、日本政府から一時滞在場所や生活費、日本語学習、地方自治体・民間企業等とのマッチング等の支援が行われていますが、来年度4月以降も継続されるでしょうか。
【回答1】
現時点において、ウクライナ情勢は依然として不透明であることから、情勢不安を理由に本邦への在留を希望するウクライナ避難民の方々については、在留資格の期間更新及び資格変更の手続を行うことができます。これらの手続は入管庁ホームページで案内するとともに、期間更新手続については、本年2月にウクライナ避難民全員に対し、お手紙(日本語、英語、ウクライナ語)を発送して案内しております。
身寄りのない避難民の方々については、本年2月、更に1年間の生活費等の支給継続を決定しました。また、一時滞在施設における日本語教室やマッチング等の支援は4月以降も引き続き実施してまいります。
日本政府としては、避難民の方々のニーズ等をきめ細かくくみ取りながら、政府全体で避難民の方々に寄り添った支援を引き続き行ってまいります。
【質問2】
(文化庁相田様へ)避難民の滞在期間が当初の予想より長くなっていると思われますが、現場では150時間の日本語研修の後も日本語のフォローの継続が求められています。それについて何か対策は検討されているでしょうか。
【回答2】
150時間の日本語研修で到達できる熟達度は、日本語教育の参照枠で示された日本語能力レベルのうち、最も低いA1であり、基礎段階の言語使用者として、なんとか意思疎通ができるレベル、サバイバル日本語とでもいうべきレベルを目指す時間数となっております。
シンポジウムでの説明の最後に申し上げましたとおり、私たち文化庁は、日本で自立した言語使用者として安全に安心して日常生活を送っていくためには、B1レベル相当として320~520時間程度の学習時間が必要と考えており、ご指摘のとおり、150時間は十分とは言えないと考えております。
文化庁は条約・第三国定住難民の方を対象とした日本語教事業を実施していますが、日本での定住を前提として572単位時間の日本語教育プログラムを展開しております。
ウクライナ避難民の方全員が日本への定住の意思を固めている状況ではないことから、難民認定を受けた方とは現状同じにはできないと考えていますが、定住を希望する方にはそのぐらいの学習時間が必要であるということです。
文化庁では全国の都道府県・政令市が外国人市民のために実施する日本語教育においても、B1レベルまでの日本語教育が全国津々浦々で展開されるよう自治体の方々と連携して学習環境の整備を推進しており、質が確保された日本語教育が全国展開されるよう今後も努めて参ります。
(文化庁相田様へ)避難民の滞在期間が当初の予想より長くなっていると思われますが、現場では150時間の日本語研修の後も日本語のフォローの継続が求められています。それについて何か対策は検討されているでしょうか。
【回答2】
150時間の日本語研修で到達できる熟達度は、日本語教育の参照枠で示された日本語能力レベルのうち、最も低いA1であり、基礎段階の言語使用者として、なんとか意思疎通ができるレベル、サバイバル日本語とでもいうべきレベルを目指す時間数となっております。
シンポジウムでの説明の最後に申し上げましたとおり、私たち文化庁は、日本で自立した言語使用者として安全に安心して日常生活を送っていくためには、B1レベル相当として320~520時間程度の学習時間が必要と考えており、ご指摘のとおり、150時間は十分とは言えないと考えております。
文化庁は条約・第三国定住難民の方を対象とした日本語教事業を実施していますが、日本での定住を前提として572単位時間の日本語教育プログラムを展開しております。
ウクライナ避難民の方全員が日本への定住の意思を固めている状況ではないことから、難民認定を受けた方とは現状同じにはできないと考えていますが、定住を希望する方にはそのぐらいの学習時間が必要であるということです。
文化庁では全国の都道府県・政令市が外国人市民のために実施する日本語教育においても、B1レベルまでの日本語教育が全国津々浦々で展開されるよう自治体の方々と連携して学習環境の整備を推進しており、質が確保された日本語教育が全国展開されるよう今後も努めて参ります。
【質問3】
共生社会の在り方を考えるときに、自分を含め、日本の一般の社会全体が変化していかなければいけないことがたくさんあると思います。それを1つでも多く具体的に教えていただきたいです。それをもとに自分ができることを考えたいです。
【回答3】
身近なところでは、日本語ボランティア教室に協力をしてみたり、知り合った外国ルーツの人を地域や趣味の活動に誘ってみたりするのはどうでしょうか。今まで外国ルーツの人と縁がなかった人も、顔が見える関係性ができることで、お互いを理解しようとする輪が広がるのではないかと思います。
私が携わっている外国人相談の現場からの視点で申し上げると、外国ルーツの方が困っていることがあれば、適切な相談機関につないでいただきたいと思います。さらには、こうした外国ルーツの方に限らず、すべての人が孤立することがない、共生する社会であればと願っています。
共生社会の在り方を考えるときに、自分を含め、日本の一般の社会全体が変化していかなければいけないことがたくさんあると思います。それを1つでも多く具体的に教えていただきたいです。それをもとに自分ができることを考えたいです。
【回答3】
身近なところでは、日本語ボランティア教室に協力をしてみたり、知り合った外国ルーツの人を地域や趣味の活動に誘ってみたりするのはどうでしょうか。今まで外国ルーツの人と縁がなかった人も、顔が見える関係性ができることで、お互いを理解しようとする輪が広がるのではないかと思います。
私が携わっている外国人相談の現場からの視点で申し上げると、外国ルーツの方が困っていることがあれば、適切な相談機関につないでいただきたいと思います。さらには、こうした外国ルーツの方に限らず、すべての人が孤立することがない、共生する社会であればと願っています。
講演するナディア・ボズディガン在日ウクライナ大使館一等書記官
講演するUNHCR伊藤駐日代表
講演する出入国在留管理庁山形正洋補佐官
講演する相田恭輔日本語教育評価専門官
講演する日本財団神谷圭市ウクライナ避難民支援室リーダー
講演するCINGA青柳りつ子氏
講演するCINGAオリハ氏
講演するCINGA中川氏
講演するなんみんフォーラム赤阪むつみ理事
講演するYSCグローバルスクール田中宝紀氏
講演する筑波大学明石純一教授
閉会の挨拶をするなんみんフォーラム山口薫理事
パネルディスカッション
※ 本シンポジウムの画像につき、事前の許可なくスクリーンショット等の撮影、転載、および資料の二次利用は出来かねますので、ご了承ください。
お問い合わせ先
笹川平和財団 アジア・イスラム事業グループ
担当者:岩品・水谷
E-mail:middleeast-islam@spf.or.jp
笹川平和財団 アジア・イスラム事業グループ
担当者:岩品・水谷
E-mail:middleeast-islam@spf.or.jp