東南アジアにおける対日世論調査の課題と可能性:ヘッジングを具体的に語るために
2023年は、日本ASEAN友好協力50周年である。日本では、日本と東南アジア諸国、あるいはASEAN(東南アジア諸国連合)と戦略的にどのように付き合っていくべきか、日本の国益を東南アジアでどのように最大化するかといった点が大きく注目されている。
表1: 東南アジア主要国のコロナ患者の現状
国名 | 感染者数 | 死者数 | 死亡率 |
---|---|---|---|
インドネシア | 511,836 | 16,225 | 3.17% |
フィリピン | 422,915 | 8,215 | 1.94% |
ミャンマー | 83,566 | 1,810 | 2.17% |
マレーシア | 59,817 | 345 | 0.58% |
シンガポール | 58,195 | 28 | 0.05% |
タイ | 3,926 | 60 | 1.53% |
ベトナム | 1,321 | 35 | 2.65% |
出所: ロイター「新型コロナウイルス感染の現状」2
さらに第二波で大規模化したクラスター群の性質自体も政府の果断な対応を呼び込んだ。第二波において最大のクラスターを生んだのは、クアラルンプールのスリプタリン地区のモスクで2月27日から4日間の日程で実施されたタブリーグのイベントである。タブリーグとは1926年に北インドのメーワートで生まれたイスラム教の宣教活動であり、一般信徒がグループとなって国内外で宣教をおこなってきた。
政府はこのイベントには約1万6000人が参加し、そのうち1500人程度が外国人だったと発表している。3月末の時点で当局が把握しているだけでも国内では600人を超えるイベント参加者からコロナの陽性反応がみられ、彼らを通じて国内で2次、3次の感染が次々と広がっていった。さらに、コロナ感染がイスラム教のネットワークにのってインドネシアやブルネイなど国境を越えて拡大する気配をみせていたことも政府の早急な対応を必要とした。
マレーシアのコロナの第二波では、このタブリーグのイベントを含めてイスラムの寄宿学校、コーランの学習センター、キリスト教教会などの宗教関連の施設や集会で大きな感染者数を伴うクラスターが発生した。そこで政府は宗教関連のクラスターへの警戒を強め、第二波が4月から5月にかけて断食月のラマダンの時期と重なっていたこともあって国民に外出および不特定多数との対人接触の抑制を強く訴えることになった。
宗教に加えて、第二波で主要なクラスター群を形成したのは後述する移民関連のクラスターである。3月から6月にかけてのコロナ第二波の特徴は、宗教や移民に関連した大規模なクラスターが発生し、その大半が、連邦直轄地のクアラルンプールとプトラジャヤ、スランゴール州、ヌグリスンビラン州を含んでマレーシアの首都圏を構成するクランバレー地域でのものだったことにある(表2参照)。
表2: 各州および連邦直轄地のコロナ患者数の推移
3月18日 | 5月4日 | 6月10日 | 9月26日 | 11月30日 | |
---|---|---|---|---|---|
プルリス州 | 8 | 18 | 18 | 33 | 43 |
クダ州 | 38 | 95 | 96 | 352 | 2563 |
ペナン州 | 31 | 121 | 121 | 142 | 2088 |
ペラ州 | 31 | 253 | 256 | 269 | 1785 |
スランゴール州 | 204 | 1550 | 1973 | 2227 | 13935 |
クアラルンプール | 123 | 1334 | 2399 | 2660 | 6206 |
プトラジャヤ | 5 | 86 | 97 | 99 | 205 |
ヌグリスンビラン州 | 49 | 598 | 921 | 1047 | 4915 |
マラッカ州 | 19 | 207 | 242 | 263 | 387 |
ジョホール州 | 93 | 667 | 677 | 756 | 1379 |
パハン州 | 30 | 305 | 363 | 374 | 403 |
クランタン州 | 36 | 155 | 156 | 161 | 360 |
トレンガヌ州 | 10 | 110 | 111 | 116 | 237 |
サラワク州 | 50 | 523 | 556 | 705 | 1064 |
サバ州 | 107 | 316 | 355 | 1586 | 28771 |
ラブアン | 5 | 16 | 17 | 26 | 1356 |
合計 | 839 | 6354 | 8358 | 10816 | 65697 |
出所: Kementerian Kesihatan Malaysia
注1: クアラルンプール、プトラジャヤ、ラブアンは連邦直轄地
注2: 3月18日はMCOの実施開始日、5月4日はCMOの実施開始日、6月10日はRMCO実施開始日、9月26日はサバ州選挙投票日。
表3: ロヒンギャを自分たちの国に再定住させるのを支持するか
否定 | 肯定 | |
---|---|---|
ASEAN | 61.3% | 38.7% |
ブルネイ | 68.0% | 32.0% |
カンボジア | 80.8% | 19.2% |
インドネシア | 43.9% | 56.1% |
ラオス | 82.6% | 17.4% |
マレーシア | 56.4% | 43.6% |
ミャンマー | 66.0% | 34.0% |
フィリピン | 38.7% | 61.3% |
シンガポール | 68.5% | 31.5% |
タイ | 61.5% | 38.5% |
ベトナム | 75.0% | 25.0% |
出所: ISEAS8
1 京都大学東南アジア地域研究研究所連携講師。
2 ロイター「新型コロナウイルス感染の現状」(https://graphics.reuters.com/CHINA-HEALTH-MAP-LJA/0100B5FZ3S1/index.html)2020年11月26日確認。
3 マレーシア保健省のデータによれば、3月31日時点での累計感染者数はマレーシアが2766人、タイが1651人、フィリピンが1546人、インドネシアが1528人、シンガポールが879人である。Kementerian Kesihatan Malaysia (http://covid-19.moh.gov.my/)2020年11月26日確認。
4 Malaysiakini. 2020. “Online poll reveals majority supports another MCO extension.” 23 April. https://www.malaysiakini.com/news/522227 2020年11月26日確認。
5 Department of Statistics. 2020. “Report of Special Survey on Effects of Covid-19 on Economy and Individual (Round2).” https://www.dosm.gov.my/v1/uploads/files/covid-19/Report_of_Special_Survey_COVID-19_Individual-Round-2.pdf 2020年11月26日確認。
6 Merdeka Center. 2020. “Perceptions towards Economy, Leadership & Current Issues, 15 July – 10 August 2020.” https://merdeka.org/v2/download/perceptions-towards-economy-leadership-current-issues/ 2020年11月26日確認。
7 UNHCR. “Figures at a Glance in Malaysia.” https://www.unhcr.org/figures-at-a-glance-in-malaysia.html. 2020年11月26日確認。
8 ISEAS 2020. The State of Southeast Asia: 2020. https://www.iseas.edu.sg/wp-content/uploads/pdfs/TheStateofSEASurveyReport_2020.pdf. 2020年11月26日確認。