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第1グループ(戦略対話・交流促進担当)

政治に広がるSNSの影響力 ―東南アジアと日本の有識者が語る各国事例

経営企画部広報課 髙橋ソフィア


2025.05.27
笹川平和財団の第1グループ(戦略対話・交流促進)は、2025年3月6日、戦略対話・交流プログラムの一環として「東南アジア諸国と日本の政治におけるSNSの普及と民主主義の変化」と題したオンラインイベントを開催しました。本イベントでは、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、日本における選挙に対するSNSの影響について、5名の専門家による発表をもとに議論が行われました。議論では、SNSが有権者の行動や選挙戦略に影響を与えた2023年のタイ総選挙および2024年のインドネシア大統領選挙などの事例が紹介されました。また、マレーシアやフィリピンの政治におけるSNSの役割の発展についても意見交換が行われ、とりわけ若年層の有権者や選挙運動への影響が関心を集めました。

開会挨拶で、当財団 第1グループの小西伸幸グループ長は、SNSと選挙活動の関係を強調し、「SNSは政治の透明性を高める圧力になると共に若年層を選挙に巻き込む要因の1つにもなっている。その一方で政治本来の根幹である政党や政治家の主張や政策を覆い隠し、社会の分断や大衆的で付和雷同的な政治が台頭しやすくなることを助勢しているとも言えます」と述べました。
本イベントは、日本と東南アジアの政治リーダー間の相互理解とネットワーク構築を目的とした「アジア政治リーダー対話」事業の一環として開催されました。本事業では、次世代を担う若手から中堅の政治リーダー間の対話を重視し、毎年、東南アジア諸国および日本の政治リーダーが集うフォーラムを開催しています。今回のセミナーでの議論もこうした対話活動に繋げるものであり、各専門家からの報告に先立ち、当財団の事業担当者から各国の現状についての説明が行われました。

タイ政治におけるSNSの影響

大阪公立大学 大学院法学研究科の永井史男教授が、タイ政治に対するSNSの影響力の増大について論じた

大阪公立大学 大学院法学研究科の永井史男教授が、タイ政治に対するSNSの影響力の増大について論じた

最初の登壇者である永井史男教授(大阪公立大学大学院法学研究科)は、SNSの普及とその影響について、特に2022年のバンコク都知事選挙および2023年の総選挙を中心に説明しました。

まず、タイでは都市部および農村部のいずれにおいてもインターネットやモバイル端末の利用が著しく増加しており、特に最貧地域とされる東北部でも高い利用率がみられることを指摘しました。さらに永井教授は、DataReportalのデータによると、同国のSNS利用時間は1日平均約2.5時間であり、世界17位にランクインしていると紹介しました。

続いて永井教授は、直近のタイ選挙においてSNSが果たした役割について詳述しました。2022年のバンコク都知事選では、元運輸大臣で無所属候補のチャッチャート・シッティパン氏が、対立候補よりも効果的にSNSを活用したことで、劇的な勝利を収めたと指摘しました。チャッチャート氏の選挙キャンペーンでは、200項目以上の具体的政策を掲げ、若者を中心とするチームがSNS戦略を駆使して有権者との対話を実現しました。

永井教授はまた、2023年のタイ総選挙においては、ピタ・リムジャラーンラット氏率いる前進党(MFP)が、SNSを戦略的に活用したことが奏功し、第一党に躍り出たと解説しました。永井教授は、SNSがこの選挙において決定的な役割を果たしたとする研究結果を紹介し、従来の有権者との直接的な対話を重視する選挙運動とは異なる点を強調し、次のように述べました。「他の政党は日本でもよく行われるどぶ板選挙、握手や小さな集会をやっていたわけですが前進党はこのような活動をしなかった。それでもメディア戦略を活用することで、最も多くの票を獲得できたのです」
 
とりわけティックトック(TikTok)は、従来の選挙活動ではリーチできなかった地方の有権者層への波及効果が大きく、高い視聴回数を記録し、最終的に前進党への多くの投票を促しました。

2024年インドネシア大統領選挙におけるTikTokの役割

京都大学東南アジア地域研究研究所の岡本正明教授が、2024年のインドネシア大統領選挙について、特にTikTokの選挙活動への影響に焦点を当てて検証した

京都大学東南アジア地域研究研究所の岡本正明教授が、2024年のインドネシア大統領選挙について、特にTikTokの選挙活動への影響に焦点を当てて検証した

続いて登壇した京都大学東南アジア地域研究研究所の岡本正明教授は、2024年インドネシア大統領選挙の期間中におけるTikTokの活用について見解を示しました。Z世代に対するTikTokの影響について、岡本教授は、インドネシアの若者の70%がTikTokを含むSNSを主な情報源として活用していると指摘し、この割合は今後さらに他の世代にも広がっていくと述べました。

そのうえで岡本教授は、プラボウォ・スビアント氏が2024年の大統領選においてTikTokを選挙戦略の要として活用したことを分析しました。同氏が陽気なBGMに合わせてダンスするショート動画に出演することで若年層へのイメージの刷新に成功し、動画は最終的にバイラルヒットとなったことを紹介しつつ、次のように述べました。「2023年2月11日から2024年2月10日までの選挙キャンペーン期間中、選挙関連のTikTok動画は週平均で21億回再生され、そのうちプラボウォ候補の動画は13億回、つまり全体の62.6%を占めており、最終的な得票率60%と非常に近い数値でした」

この結果を受けて岡本教授は、「TikTokは政治をエンタメ・軽薄化し、TikTokのようなメディアを通じて急速に消費される『ファスト・ポリティクス』に変えつつあるのではないか」と指摘しました。一方で、政策を提案し説明する動画も一定数視聴されており、政治全体がエンタメ化していると結論づけるのは時期尚早であるとも付け加えました。岡本教授は分析のまとめとして、「TikTokの人気は今後2~3年のうちに低下する可能性もあるが、視覚重視型のSNSや動画ベースのプラットフォームは、今後の選挙でも重要な役割を果たし続けるだろう」と予測しました。

マレーシアにおける政治コミュニケーションの変化

名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院の伊賀司特任准教授が、マレーシアの政党によるSNSの活用状況を解説した

名古屋大学アジアサテライトキャンパス学院の伊賀司特任准教授が、マレーシアの政党によるSNSの活用状況を解説した

名古屋大学 アジアサテライトキャンパス学院の伊賀司特任准教授は、マレーシアの政党が、民族や宗教などの属性に基づく既存の社会的分断をSNSによってさらに悪化させることはこれまでもみられてきたと指摘しました。伊賀准教授はさらに、2018年と2022年の総選挙を例に挙げ、WhatsApp、Twitter、TikTokなどのプラットフォームが、従来のメディアと並んで政治の道具として利用されていることに言及し、「マレーシアでは、2008年以降SNSは与野党双方にとって『戦場』としての空間を徐々に拡大させてきた」点を強調しました。

2022年の総選挙では、若年層の投票者数が急増したことにより、SNSの影響が顕著に表れました。この変化は、2021年12月に導入された投票年齢の引き下げと自動有権者登録制度により促進されたものであり、これらの結果、有権者数は2018年選挙と比べて30%増加しました。伊賀准教授は、2022年の総選挙で大きく議席を伸ばした国民同盟(PN)が、「若年層の票を獲得することに注力し、TikTokやYouTubeを活用して音楽付きの魅力的な動画コンテンツを制作することで、10代から20代の若者にうまくアピールすることに成功した」と述べました。また、国民同盟を率いるムヒディン氏が新たに打ち出した家父長的なイメージもSNSを通じて広まり、今回の選挙における投票行動に影響を与えたと指摘されました。

続けて伊賀 准教授は、現在の「団結政府」のもとで言論の自由に対する規制が強化されている現状についても言及し、その一例として通信・マルチメディア法(CMA)の改正を挙げました。そのうえで、マレーシアでは政党政治が確立されていることから、SNS上で民族・宗教的分断が広がるリスクはあるものの、一定の制御が効いていると結論づけました。結果として、大きな体制転換が起こる可能性は低く、選挙を通じた民主的な政権交代の継続が見込まれると述べました。

フィリピン政治におけるSNSの変革力

東京外国語大学大学院総合国際学研究院の日下渉教授が、フィリピンにおける政治変革を後押ししたSNSの役割について発表した

東京外国語大学大学院総合国際学研究院の日下渉教授が、フィリピンにおける政治変革を後押ししたSNSの役割について発表した

東京外国語大学大学院総合国際学研究院の日下渉教授は、フィリピンでSNSがいかに政治を変化させてきたのかについて講演しました。日下教授は、2010年代中頃以降、それまで公共圏で支配的な言説を発信してきた都市中間層のリベラル派にかわって、貧困世帯や地方出身ながら過去20年で一定の社会上昇を果たしてきた人々の声がSNS上で拡散されるようになったとの見解を示しました。彼らの多くは、グローバルなサービス産業に従事し、社会上昇の夢と現実の制約の狭間で不満を溜めてきました。
 
他方、政治家たちは広告業界出身者を雇用し、インフルエンサーと協力してSNS上で組織的なプロパガンダを拡散してきました。そして、「人々はオンライン・プロパガンダに一方的に『洗脳』されたわけではなく、むしろ自身の希望や不満と一致する情報を選択的に取り入れることで、SNSで支配的な言説を共に生み出し、それが選挙戦で決定的な役割を果たした」と論じました。たとえば、2016年選挙では、ロドリゴ・ドゥテルテ氏を法の外部で庶民の正義を実現する「義賊」として描く言説が彼を大統領にしました。2022年選挙では、かつての独裁者マルコス(シニア)政権を「黄金期」とする言説が、彼の長男を大統領に当選させました。
 
日下教授は、リベラル系メディアが偽情報に対してファクトチェックを試みてきたものの、ドゥテルテ氏やマルコス氏の支持者は、ファクトチェックそのものが偏向していると受け取ったため、その効果は限定的だったと指摘しました。こうした動きは、新時代のフィリピン人が、対抗エリートのポピュリズムと共鳴して、既存の「エリート民主主義」に挑戦を突き付けると同時に、自由民主主義を不安定化していると論じました。

日本の伝統的な選挙制度とSNS

東北大学 大学院情報科学研究科の河村和徳准教授が、日本における従来の選挙制度と、デジタル選挙運動に対する厳格な法規制について紹介した

東北大学 大学院情報科学研究科の河村和徳准教授が、日本における従来の選挙制度と、デジタル選挙運動に対する厳格な法規制について紹介した

東北大学大学院情報科学研究科の河村和徳准教授は、日本の選挙とSNSに関するプレゼンテーションの中で、日本の選挙システムは依然として非常に伝統的であり、厳しい法規制によってデジタル戦略が著しく制限されていることを明らかにしました。日本におけるデジタル活用の障壁としては、人と人との直接的なやりとりを強く好む傾向、言語の複雑さ、そしてデジタルコミュニケーションに対する慎重なアプローチが根強く存在していることが挙げられました。

それでも近年では、2024年の東京都知事選挙において小池 百合子氏に挑んだ石丸 伸二氏のように、SNSを積極的に活用する革新的な候補者も現れつつあると述べました。石丸氏はSNSを巧みに活用し、10代・20代の若者から支持を獲得しました。一方で河村 准教授は、これはあくまで一例に過ぎず、日本の政治的コミュニケーションはいまだに伝統的なメディアへの依存が大きいことを強調しました。

河村准教授は発表の締めくくりに、日本の選挙ガバナンスが「動画配信時代」に直面する課題に言及しました。海外からの情報流入が容易になる中で、経済安全保障の観点も踏まえ、次のようにデジタル政治コミュニケーションへの対応を変革していく必要性を訴えました。「アジアで最も古い民主主義国家である日本は、ガラパゴス化しており、世界標準から大きくずれてしまっています。課題を的確に把握し、迫りくる課題にどう立ち向かうかを考える必要があります。東南アジアから学べることもあるかもしれません。その時は、もう来ています。」

SNSの政治的影響に関する比較討論

最終セッションでは、永井教授がモデレーターを務め、登壇者による意見交換を通じて、5カ国の発表に共通する比較的な知見がまとめられました。この議論では、政治変革におけるSNSの役割や、各国の事情によって異なる影響について、人口構成の違い、デジタルを通じた政治参加の機会、選挙管理やディープフェイクといった課題など、多角的な視点から意見が交わされました。
最終セッションでは、SNSが政治変革に与える影響と、それが国ごとの人口構成の違いなどによりどのように異なるかが議論された

最終セッションでは、SNSが政治変革に与える影響と、それが国ごとの人口構成の違いなどによりどのように異なるかが議論された

第1グループ(戦略対話・交流促進担当)
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