震災復興へ想いをつなぐ日中交流
中国の無形文化財保護団体が輪島漆芸技術研修所に漆を寄贈
笹川平和財団(東京都港区、理事長・角南篤)は、3月3日(月)、昨年1月に能登半島地震により甚大な被害をうけた現地の伝統工芸関係者を支援するため、石川県立輪島漆芸技術研修所で寄贈品贈呈式を実施しました。
第12回日越佐官級交流(2023年12月9日~16日)でベトナムを訪問した防衛省・自衛隊代表団の団長、白井亮次空将補に、交流の成果などについて聞きました。
——ベトナム訪問の評価と成果は
白井氏 私は今回初めてベトナム訪問をさせていただいたのですが、ベトナムというイメージからしますと、やはりベトナム戦争などの印象と知識しかもち合わせていませんでした。実際にハノイやホーチミンを訪れてみると、街には活気があり若者が非常に多い。平均年齢が33歳という若い国、人口も右肩上がりで数年後には1億人を突破するということで、活気に溢れている街を目の当たりにして強い印象を受けました。
それからベトナム戦争のみならずインドシナ戦争でフランスと戦い、勝ち抜いてきた歴史があり、なぜ負けずに生き抜いてきたのだろうか、という強さの秘密のようなことも印象に残りました。ベトナム戦争ではしっかりと北ベトナムからの補給路を確保していたことや、ベトナムの軍人の精神的な支柱といったことなどが、今回の交流で理解することができました。
それはホーチミンの教えであったり、家族と国を守り、そのための犠牲をいとわない精神であったり、組織に忠誠を尽くすといったことです。それらを重視しているという話を各方面で聞くことができたので、我々も参考にしたいと思っています。一方で、若者の価値観が変わってきており、ベトナム軍も人材育成において世代間ギャップという課題を認識しているようです。
——日本とベトナムの関係は「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされましたが、協力と交流のレベルをどうみていますか
白井氏 ベトナム軍はまだまだ装備に不十分なところがあると認識しており、防衛省・自衛隊にも協力をお願いしたいという話がありました。我々としても、装備に限らず能力構築支援や教育、人的交流を行うことは、関係を強化するうえで効果があると考えます。また、ベトナム側では能力構築支援という枠を超えて、人的交流を通じてお互いの考え方を共有するという姿勢が強くなってきているように感じました。
——日越の防衛当局者は様々なレベルで交流していますが、笹川平和財団という民間によるいわば「1.5トラック」の交流の意義をどう考えていますか
白井氏 いろいろな防衛交流というのがあります。首脳間の戦略的レベル、防衛省・自衛隊の大臣、高官、各幕僚長のレベルによる交流で、我々のような作戦レベルの指揮官同士の交流もあるわけです。さらに、部隊による共同訓練など戦術レベルでの交流です。大きく分ければ3段階あるかと思いますが、それぞれのレベルでしっかりと交流と連携を図っていくことが重要です。
ただ、ベトナムは社会主義の国で、欧米諸国と同様の交流はできないので、笹川平和財団という民間の力を借りることが非常に有効なのではないでしょうか。笹川平和財団のこのプログラムの目的にあるとおり、知アジア、知ベトナムの人材を育成するという意味においても有効だと思います。
知アジアの人材を育成するという効果はすでに発揮されており、幹部、とくに将来を担う佐官の人材育成に非常に役に立っていると実感しています。できればこういう事業を続けていっていただきたいと思います。
欧米諸国との関係は急速に深まってきており、連携を密にしています。ただ、我々が住んでいるところはアジアですので、東南アジア諸国とのパートナーシップを強化していかなければなりません。東南アジア諸国に対する取り組みは重要で、今回の日越佐官級交流に参加したメンバーには、将来に向けて知アジアの人材としても活躍してほしいです。
※日越佐官級交流の記事はこちらからご覧ください。