ベトナム陸・海・空軍基地など視察
防衛省・自衛隊代表団
第11回日越佐官級交流

2019.12.09

 笹川平和財団(東京都港区 会長・田中伸男)の安全保障研究グループが主催する日越佐官級交流で、防衛省・自衛隊の12人で編成する代表団が11月10日から16日まで、ベトナム人民軍の主要基地などを視察し、両国の安全保障分野におけるさらなる関係強化へ向け意見交換しました。
 代表団は陸上自衛隊富士学校普通科部長の遠藤充陸将補を団長に、陸佐3人、海佐2人、空佐3人、防衛省内部部局3人。2014年にスタートした日越佐官級交流による防衛省・自衛隊とベトナム人民軍の相互訪問は、今回で11回(訪日6回、訪越5回)を数え、日本から56人、ベトナムから84人の計140人が参加しています。
 今回は国防省、国防戦略院、国防国際関係研究所(ハノイ市)=以上11日▷ラオカイ省国境警備隊司令部、ラオカイ検問所(同省)▷陸軍第2軍区司令部(フート省)=以上12日▷海軍司令部、第126海軍特殊部隊(ハイフォン市)=以上13日▷陸軍ホーチミン市軍事司令部特殊偵察中隊、防空・空軍第370師団第935連隊(同市)=以上14日―などを訪問、交流しました。

共通の利益と課題

グエン・チ・ヴィン国防次官(中央)を表敬訪問

グエン・チ・ヴィン国防次官(中央)を表敬訪問

 国防省ではグエン・チ・ヴィン国防次官(陸軍上将)を表敬訪問しました。双方は日越関係と防衛協力が、広範な戦略的パートナーシップに基づき着実に進展し進化しているとの認識で一致。ヴィン次官は日越には「共通の利益と課題がある」と指摘しました。南シナ海に面するベトナム中部の軍事要衝カムラン湾には、海上自衛隊の護衛艦「いずも」や「ありあけ」「せとぎり」、潜水艦「くろしお」など多数が寄港していますが、ヴィン次官は、ベトナムが日本を重視し信頼している証左だとの認識を示しました。
 国防戦略院は、ベトナムの国防政策・方針について①共産党の指導のもと人民軍が中核的な役割を果たし、政治と国民が力を合わせ国防に当たっていることが強みである②いかなる外国にも利用されることなく、独立と国土を守ることを基本に、臨機応変に対応する③他国と軍事同盟を結ばず、外国軍がベトナムに基地を置き駐留し、第三国を攻撃することに使用させない―などを基本としていると説明。同時に、他国との協力関係を構築することを通じ、共通の安全保障課題に対処できるようにしていると指摘しました。また、正規軍を「コンパクトで強靭、高い機動性をもつ」ものへと更新・近代化を図っていると強調しました。
代表団メンバー①
 国防国際関係研究所との意見交換では代表団側が、情勢次第で外国軍を駐留させないという方針を変える可能性があるか、問いかけました。質問で例示されたのは、米軍の中距離ミサイルのベトナム配備です。米国とロシアの中距離核戦力(INF)全廃条約が8月に失効したことを受け、トランプ米政権が地上配備型の中距離ミサイルのアジア配備に、前向きな姿勢を示していることを踏まえたものです。
 これに対し、ベトナム側は「米軍基地を置きたくない気持ちが強く、米国だけではなく伝統的なパートナーであるロシアにも置かせない。ベトナムの長期的な政策であり、これを現在は継続する方針だ」との見解を示しました。
代表団メンバー②
 代表団側は北朝鮮の弾道ミサイルの発射状況や、日本とベトナム周辺の軍事情勢などを説明。ベトナム側の質問に答える形で、南シナ海に関して、ベトナムを含む周辺国が「力の空白」をつくらず、また東南アジア諸国連合(ASEAN)の来年の議長国であるベトナムと、フィリピンが連携し強いリーダーシップを発揮することへの期待感を表明しました。日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」構想の下、日越防衛協力をいっそう発展させたいとの考えも示しました。

中越国境の警備隊

中国と国境を接するラオカイ省の街並み

中国と国境を接するラオカイ省の街並み

 ハノイから約300キロの北部ラオカイ省は、中国の雲南省と国境を接する山岳地帯です。国境の総延長は陸と河川を合わせ約200キロに及び、11カ所に検問所、127カ所に国境標識が設置されています。
 国境警備隊司令部のド・ゴク・トゥアン司令官(上級大佐)によると、警備隊は平和維持の観点から、中国側と合同巡視活動や対テロ合同演習などを行っているほか、問題と課題が生じた場合は、現場で速やかにコミュニケーションを取り情報を交換することにより、解決を図り事態の拡大を防いでいるということです。
 
ラオカイ検問所を訪問

ラオカイ検問所を訪問

 この後、代表団はフート省にある陸軍第2軍区司令部へ移動。陸軍は8軍区、4軍団体制を敷いていますが、第2軍区はラオカイ省を含む9省、総面積約6万平方キロメートルの区域を管轄しています。北は中国、西はラオスと接しています。
 代表団に応対したのは、日越佐官級交流で今年6月末から7月初めにかけ訪日した代表団の団長、ホアン・ゴック・ズン副司令官(少将)です。ズン副司令官は第2軍区の役割、2年の徴兵制(2年)、予備役、民兵について説明し、代表団の民兵に関する質問に、軽武装し訓練を実施しており、有事には本格武装し正規軍に組み込まれ、給与は国防予算ではなく地方政府機関から支給されることを指摘しました。
 
談笑するホアン・ゴック・ズン副司令官と遠藤充団長(中央)

談笑するホアン・ゴック・ズン副司令官と遠藤充団長(中央)

海軍司令部

海軍司令部での意見交換

海軍司令部での意見交換

 5海軍区体制のベトナム海軍は、北部最大の港湾都市であるハイフォンに司令部を置き、ハイフォンはトンキン湾など北部海域を管轄する第1海軍区に属しています。ホアン・ホン・ハー副司令官(少将)との間では、以前は海軍所属の「海上警察」だった現在の「沿岸警備隊」と海軍との役割分担や、ベトナム海軍と自衛隊の交流などをめぐり意見が交わされました。

対テロ訓練、Su-30MK2

 ホーチミン市軍事司令部特殊偵察中隊は対テロ部隊で、1945年に創設され、司令部は幕僚、政治、兵站、技術の4部門で構成されています。
 代表団は、テロリストに占拠されたビルに拘束された人質を、夜間に解放するという想定の訓練を見学しました。レー・ゴック・ハイ副司令官(上級大佐)によると、隊員1人の養成には概ね2、3年を要するということです。

特殊偵察中隊による対テロ訓練

特殊偵察中隊による対テロ訓練

 防空・空軍第370師団第935連隊では、ロシア製の第4世代戦闘機Su-30MK2を視察し、2席あるコックピットに乗り込みました。防空・空軍は同機のほかSu-27SK、MIG-21などの戦闘機も使用。Su-30MK2は中国、インドネシアも装備しています。意見交換では、空海に関する将来的な情報交換への期待が双方から示されました。

防空・空軍との意見交換

防空・空軍との意見交換

歴史と文化を体感

梅田邦夫大使

梅田邦夫大使

 こうした基地視察に先立ち、代表団は10日、ハノイで梅田邦夫駐ベトナム日本大使を表敬訪問し、大使からベトナムの政治、経済、社会情勢、両国関係の現状について説明を受けました。
ベトナム戦争時代の司令部

ベトナム戦争時代の司令部

 日越佐官級交流には、歴史や文化への理解を深めるためのプログラムも組み込まれています。代表団は、ベトナム戦争時代に人民軍の司令部としても使用された、世界遺産の「タンロン遺跡」(ハノイ市)や、ベトナム戦争の歴史と悲惨さを綴った「戦争証跡博物館」、ベトナム戦争中に米軍に対するゲリラ戦の拠点となり、全長約250キロメートルにも及ぶ地下トンネルが張り巡らされた「クチトンネル歴史遺跡」(いずれもホーチミン市)などを見学しました。

(シニアアドバイザー 青木伸行、写真:コンテンツ企画課/メディアリレーション課 上津原理恵)


※遠藤充団長のインタビューはこちら

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