震災復興へ想いをつなぐ日中交流
中国の無形文化財保護団体が輪島漆芸技術研修所に漆を寄贈
笹川平和財団(東京都港区、理事長・角南篤)は、3月3日(月)、昨年1月に能登半島地震により甚大な被害をうけた現地の伝統工芸関係者を支援するため、石川県立輪島漆芸技術研修所で寄贈品贈呈式を実施しました。
笹川平和財団(東京都港区、田中伸男会長)の海洋政策研究所も参加している、日本財団によるプロジェクト「Change for the Blue」の一環として、産学官民による国内初の大規模調査が行われることになりました。 それに関して、2019年5月22日に日本財団と日本コカ・コーラ株式会社が、『「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」~海洋ごみとして流出する使用済みプラスチック資源を、限りなくゼロに近づけるために~』と題した共同記者発表を行いました。
2018年11月に、日本財団が発足させた、海ごみ対策のムーブメントです。コカ・コーラ社のような企業や自治体、学術研究者、NPO・NGOなど12分野のステークホルダーと連携して、海洋ごみ削減のための具体的な対策モデルの構築と発信、そして「これ以上海にごみを出さない」という社会全体の意識を高めていくことを目指しています。
笹川平和財団は、このChange for the Blueに、海洋政策研究所の塩入同(しおいり・とも)研究員を中心に関わっています。政策研究という視点から、陸上のプラごみがどこでどのように発生し、海へ流出しているのかというメカニズムを明らかにし、効果的な対策を実行可能なものとするための研究をしてきました。
水路や川を経て、町中のごみは最終的に海へと流れ着く
日本では、発生したプラスチックごみの58%が焼却処分され、熱として回収利用されたり、発電のために利用されたりしています。また、プラスチック製品やプラスチック原料としてリサイクルされる割合が23.4%あるとされています。その一方で、適切に回収されなかったプラスチックが、ごみになって町から川を通じて海へ流出しているのも事実であり、海のごみの8割が陸域から発生したものであることが知られています。しかし、これまで、それらのごみがどこで発生し、どういった経路で海へと流出しているのかといったメカニズムを把握するための流域全体を捉えた調査は、行われてきませんでした。また、調査がなされず、現状把握が難しいことは、対策をとることの難しさにもつながっていました。
今回、着手が発表された調査は、まさに海ごみの陸域における発生源や流出メカニズムを明らかにすることを狙いとしています。会長の笹川は、これまで企業や自治体が対策をしようにもどこから手を付けてよいかわからなかった、としたうえで、「共同調査の結果を様々な研究機関とも共有することでデータ等がさらに集まってくることが期待できる。ひいては、海洋ごみ対策の効果的な施策に結び付くもの。海洋ごみ問題の複雑さや大きさをふまえ、日本財団は様々なステークホルダーと連携していく」と述べました。
会見を行う日本財団会長(笹川平和財団名誉会長)の笹川陽平(左)とホルヘ・ガルドゥニョ代表取締役社長(右)
また、日本コカ・コーラ社のガルドゥニョ社長は「今回の共同調査が、日本の資源循環をさらに高いレベルに引き上げ、『World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)』の実現の一助となることを期待しています」と述べました。同社は海洋ごみとして流出するペットボトルを限りなくゼロに近づけるための活動を行っており、今回の共同調査もその一環と位置付けています。国内で販売されているペットボトルの98%以上は何らかのかたちですでに回収されているものの、残り1~2%がごみとして流出していると同社は推計しており、「今回の調査の意義は、その流出メカニズムを解明し、対策に役立てるところにあります」としました。
2019年4月、東京都と神奈川県にまたがる境川流域での現地調査が始まりました。それに続き、富山県、福岡県、岡山県、香川県、兵庫県、長野県、北海道と全国計8か所での調査が企画されており、最終報告は年内に公表される見通しです。
鎌倉市内の川を調査員とともに歩く塩入研究員
この調査の企画・準備に携わってきた塩入研究員は「農業用水路なども含めて、流域を捉えた調査を行うことで、ごみの発生場所や原因にフォーカスして、どのような関係者と連携しながら、いかに対処していけば良いのかを明らかにすることができます」と指摘。これまで、ごみの分布が大きな流域という視点を持って把握されていなかったことから連携が難しかったところもありましたが、この調査を受けて川の上流・下流にいるさまざまな関係者が、発生メカニズムを理解し、当事者意識を持ってこの問題に取り組めるようになるのではないかと期待しています。
同研究員は「今回の調査で得られたデータとネットワークが土台となり、市民、消費財メーカー、縦割りの行政がともに議論し、一つのセクターだけではできない取り組みを形成していく上でのプラットフォームになれば」と語ります。
同研究員が、海洋プラスチックごみについて語った記事「SPF NOW 海を守るという意識をより身近なものとし、ひとりひとりの行動へと結び付けていきたい」(https://www.spf.org/publications/spfnow/0061.html)も併せてご覧ください。今後、調査結果を踏まえた新しい動きが見え始めましたら、追って財団ウェブサイトで記事を掲載していく予定です。