「マレーシア 民主化への道のり」
作家のファイザル・テヘラーニ氏が講演

マレーシアの民主化の行方などについて語るファイザル・テヘラーニ氏

マレーシアの民主化の行方などについて語るファイザル・テヘラーニ氏

 笹川平和財団(東京都港区、会長・田中伸男)は7月27日、マレーシアの言論弾圧や排外主義と闘う作家、ファイザル・テヘラーニ氏を招き、講演会「マレーシア 民主化への道のり」を開きました。この中でテヘラーニ氏は、自身の著作がナジブ前政権下で発行禁止処分を受けるなど、言論の自由や人権が侵害されてきた状況を批判する一方、5月の連邦下院選挙で政党連合の「希望連盟」を率いて勝利し、15年ぶりに首相に返り咲いたマハティール氏の下で、民主化と改革が進むかは極めて不透明だとの認識を示しました。

 テヘラーニ氏は10代の頃から小説や詩、戯曲の執筆を始め、一貫して社会派作品を発表してきました。民族・宗教・性的なマイノリティが直面する差別と苦難を取り上げ、民主化や表現の自由、イスラム社会における多様性の問題を提起してきました。著作は30を超え、「1515」などの代表作が英訳されており、国際的にも高く評価されています。しかし、そのセンシティブなテーマと影響力ゆえにマレーシア当局から弾圧を受け、7つの著作が発行禁止処分となりました。

 この処分についてテヘラーニ氏は「2012年以降のことですが、私はナジブ前政権下で政府から、『逸脱した異端児でありリベラル派だ』という烙印を押されレッテルを張られました。マレーシアやインドネシアにおいては、『リベラルなイスラム教徒』というのは決して好意的な表現ではありません。『リベラル』は言うなれば、宗教心や信仰心がない人間だということなのです。ナジブ前政権下における人権、表現の自由の侵害はひどかった」と強調しました。また、発行禁止処分以外にも妨害や圧力があったとしながらも、「具体的には言えませんが、殺害予告を受けたということだけで十分ではないでしょうか。マレーシア国内の人権状況がいかに厳しいか、推察していただければと思います」と、詳述することは避けました。

 そのうえで、長年にわたり政権を担当してきた国民戦線(BN)が選挙で敗北した要因のひとつには、「人権侵害が余りにも多かったということがある」との見解を示し、「民主化を今後、進めるためには人権こそが重要であり、人権意識の向上や集会、結社、報道の自由を正しく認めていかなければならない」と力説しました。

 かつて1981年から2003年までの22年間にわたり首相を務め、いわゆる「開発独裁」を進めたマハティール氏ですが、マハティール新政権下で民主化はどうなるのか。この点についてテヘラーニ氏は「マハティール氏は選挙期間中に、『(人権侵害や言論統制など)過去の過ちをただすチャンスを与えてください』と訴え、後悔していると言って涙を流した。その動画がインターネット上に出ています。後悔し懺悔(ざんげ)しているわけです」と指摘しました。ただ「彼は素晴らしい役者ですから、果たして本当に後悔しているのかどうか―。私にはそれを判断する機会がまだなく、信じる以外に選択肢はありません」と語り、民主化が前進するかは不透明だとの認識を示すとともに、期待感も表明しました。

 さらに「マハティール氏は改革を約束している」とし、改革を実現するうえでは「伝統的なイスラム主義の抵抗」と「希望連盟の脆弱さ」が障害になるとの見方を示し、希望連盟は構成する各政党間の理念や政策などの違いをめぐり今後、「確実に対立するだろう」と語りました。
(特任調査役 青木伸行)
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