[社会的インパクト投資フォーラム2018]投資と収益で社会を変える

2018.02.22

国際社会はなお、貧困や人口高齢化、地球温暖化など数多くの社会問題を抱えています。こうした諸課題の解決へ向けた取り組みに投資し、現状を改善する成果を追求しつつ、経済的リターン(収益)もあげるという「社会的インパクト投資」が、世界的に注目されています。

この社会問題の解決と収益の両立を目指す試みへの理解を深め、今後の可能性を探ろうと、公益財団法人・笹川平和財団と一般財団法人・社会的投資推進財団は2月19、20の両日、笹川平和財団ビル(東京都港区)で、「社会的インパクト投資フォーラム2018」 を開催しました。会場は連日、約300人の聴衆で満席となり、関心の高さがうかがわれました。

先駆者たちに続こう

開会にあたり、笹川平和財団の大野修一理事長は「『社会的インパクト投資』という言葉は、日本ではまだ一般的に使われていないのではないかと思います。しかし、比較的新しい分野とはいえ、欧米はもちろん、日本でもさまざまな立場で活躍されている先駆者の方がおられます」と述べました。

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主催者挨拶 大野修一氏(笹川平和財団理事長)

そして「欧米を中心とした財団における公益活動の分野においては、これまでのような非営利団体を通じた助成金の支援一本やりではなく、公益を目的にした『社会的企業』といわれる組織が増えるにつれ、それらに対する投資や融資、信用保証などでの融資の仕方が広がりつつあります」と指摘しました。

笹川平和財団は昨年、アジアの女性の経済活動を支援するため、100億円の「アジア女性インパクトファンド」を設立することを決め発表しています。この事業について大野理事長は「笹川平和財団の金融資産の一部を、アジアの女性起業家向けを中心に運用し、その収益を、東南アジアを中心とする途上国での女性起業家を育成、支援する活動に振り向けようというアイデアです。実際の資金的展開はまだこれからという段階ではありますが、このファンドは民間財団によるインパクト投資基金としては、アジア初の本格的な取り組みです」と強調しました。※開催挨拶の全文はこちら※

2020年が投資の転換点

この後、社会的インパクト投資を世界的に推進するために創設された「グローバル社会的インパクト投資運営グループ」(GSG)の会長であるロナルド・コーエン氏が講演しました。コーエン氏は、英国で社会的インパクト投資が成果を上げた具体的な事例として、受刑者に再犯防止教育などを施した結果、 再犯率が低下したことを指摘しました。こうした事例によって、「社会分野ではインパクト(成果)を測定することができないとされてきましたが、数字を出すことはいろいろなケースにおいて可能なのです」と説明しました。

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基調講演 ロナルド・コーエン氏(GSG会長)

そのうえで「以前は単に、リスクとリターンに基づき投資の意思決定をしていました。しかし、今ではリスク、リターン、インパクトという3点で考えるようになり、これはモノを考えるうえでの革命だと言ってもいい。この3つを最適化することは可能だということが証明されています」と語り、投資による成果を厳しく評価する重要性を強調しました。

英国ではすでに、金融機関に預けられたまま長期間取引がない休眠預金を、社会課題の解決に活用しており、日本でも休眠預金等活用法が今年1月に施行されました。この事実にコーエン氏は着目し「日本には世界の中でリーダーになるチャンス、最大の潜在力があります」と、日本の役割と市場拡大に大きな期待を寄せました。

コーエン氏はまた、今回のフォーラムのメディアパートナーである朝日新聞社常務取締役の西村陽一氏とも対談し、2020年を「社会的インパクト投資の転換の年」と位置づけ、「理由は20年ごろには市場は急成長すると思うからです。すでに分岐点に近づいているという証左もあります」と述べました。

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対談 西村陽一氏(朝日新聞社常務取締役)=写真左=、ロナルド・コーエン氏(GSG会長)

※対談の詳細記事はこちら※

女性への投資「強いうねり」

2日目の20日には、「ジェンダーレンズと社会的インパクト投資」をテーマにしたパネルディスカッションが行われ、投資をするときにジェンダー、とりわけ女性という要因をいかに考慮すべきか、などをめぐり論議されました。

司会の笹川平和財団の小木曽麻里ジェンダー・イノベーション・グループ長が、「ジェンダーレンズは非常に新しい響きだと思います」と口火を切ると、ジェンダーレンズ投資の第一人者、スーザン・ビーゲル氏は「ジェンダーに留意することは、様々なリスクを特定する方法でもあります」と指摘。「投資家は常にリスクとリターンについて考えており、ジェンダーの多様性と女性に留意しなかった場合のリスクがどこにあるのか、何か欠如することが出てくるのではないかということなどを考えなければなりません」と述べ、ジェンダーの視点が重要だとの認識を示しました。

オーストラリア政府が推進している、女性の起業家などへの投資促進に携わるジェームズ・ソーカムネス氏は「女性のエンパワーメントを支援するために女性に投資しています。総じて言えば、女性の起業家らは男性よりもっと成果を求めています。ジェンダーレンズをつけて投資をする市場機会があると考えています。新規ファンドがどんどんできており、女性に投資をしようという強いうねりがあります」と語りました。

一方、社会的インパクト投資家のリサ・クライスナー氏は「女性にとって意味がある投資が必要です。人々は社会的な価値ある成果を求めており、こうした変化の原動力に、金融界では女性がなっています」と述べました。

最後に小木曽グループ長は、アジア女性インパクトファンドについて「ジェンダーを考慮の対象にすれば成果が得られると考えました。それが私たちのビジョンです。女性に投資をし、いろいろな方々とつながり、その流れを主流化したいと思っています」と抱負を語り、議論を締めくくりました。

(特任調査役 青木伸行)

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フォーラム2日目、パネルディスカッション「社会的インパクト投資の先駆者として」では、各界のリーダーたちが、これまでの経験を熱意を込めて話され、活発な意見交換がなされた。(写真左から)玉木林太郎(国際金融情報センター理事長)、マロリー・ヴァン・ゴルステイン・ブラウアー(Triodos Investment Management BV 取締役会長)、チャーリー・クライスナー(KL Felicitas Foundation 共同創設者/Toniic 共同創設者)、ヴィニート・ライ(Aavishkaar 会長)の各氏
【社会的インパクト投資の市場規模】
社会的インパクト投資の世界市場規模は、2015年の1380億ドル(約14兆8600億円)から2020年には3070億ドル(約33兆600億円)に成長すると予測されている。日本の市場規模は、2014年の約170億円から2016年には約337億円へと成長している。(出典:GSG国内諮問委員会刊行「日本における社会的インパクト投資の現状(2017)」より)

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