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社会イノベーショングループ

【開催報告】
「新人流時代における多文化共生社会に向けた多様な教育のあり方について」

笹川平和財団アジア・イスラム事業グループ 研究員 岩品 雅子


2024.07.19
14分

主催:笹川平和財団
開催日時:2024年6月17日(月)14:00-17:00 (JST)
会場:笹川平和財団11階国際会議場・オンライン(Zoom)配信

開会挨拶:笹川平和財団 安達一 常務理事

安達一               (笹川平和財団常務理事)

笹川平和財団は、2024年6月17日に公開シンポジウム「新人流時代における多文化共生社会に向けた多様な教育のあり方について」を開催いたしました。 

冒頭の当財団安達一常務理事からの開会の挨拶では、外国ルーツの子どもたちにとって高校卒業資格が得られるかどうかはその後の人生に大きな影響を与える一方、高校年齢の子どもたちが、高校進学においても、また、授業についていくという点でも、大きな困難を抱えているため、当財団として高校教育の調査研究を行ってきたことについて言及がありました。 

岩品雅子             (笹川平和財団アジア・イスラム事業 グループ研究員)

続いて、アジア・イスラム事業グループ岩品雅子研究員から、今回のセミナー開催の背景となっている「新人流時代の共生社会モデル構築」事業における当財団の教育分野における取り組みを紹介しました(詳細は下記の資料参照)。ウクライナ避難民や外国ルーツの子どもたち全般における公立高校に通う上での困難と、日本国内と韓国の先進事例からの学びについて発表がありました(ウクライナ避難民の教育状況調査 報告書要約:https://www.spf.org/global-data/user171/UKR.pdf)。 

基調講演:文化間移動をする子どもたちの高校教育に関わる課題について
齋藤ひろみ氏(東京学芸大学 教職大学院 教授)

齋藤ひろみ氏           (東京学芸大学 教職大学院 教授)

齋藤ひろみ氏(東京学芸大学 教職大学院 教授)より、「文化間移動をする子どもたちの高校教育に関わる課題について」と題して基調講演がなされました。講演では、令和2~3年度文部科学省「高等学校における日本語指導体制整備事業」の調査から東京学芸大学が受託・実施した調査等から見えてきた現状と外国人生徒等教育の方針、受け入れ体制における課題、高等学校における外国人生徒等教育の取り組み事例、教育の公正性とエンパワーメントの視点からどのような学びの場を作っていくべきなのかという問題提起がなされました(詳細は下記の資料参照)。 

実践事例報告1:
「足羽高等学校の多文化共生科における外国人生徒と日本人生徒との協働的な学びを支援する学校環境づくり」

岡崎普記氏             (福井県立足羽高等学校 教諭)

岡崎普記氏(福井県立足羽高等学校 教諭)より、日本人生徒や外国人生徒を問わず、意見の異なる者同士が集まる中で、調整し折り合いをつける構えのある生徒を育てるため、様々な選択肢を提供することで、外国人生徒の強みを活かしつつ弱みを克服した新カリキュラムの形成や学校環境づくりの取り組みについて発表がありました(詳細は下記の資料参照)。

実践事例報告2:
「足羽高校の多文化共生科における外国人生徒と日本人生徒との協働的な学びについて」

礒野心吏氏              (福井県立足羽高等学校 生徒)

福井県立足羽高校Asuwa International Society (AIS) の生徒たちより、足羽高校に入学した当初の課題、英語の合同授業や、部活動であるAISの活動を通して感じたこと、それらの経験を踏まえて多様性・多文化共生を考える際に生徒たちが受けたい授業の形態について発表がありました(詳細は下記の資料参照)。 

実践事例報告3:
「外国ルーツの高校生支援プロジェクトについて~「違いが豊かさとなる未来」を目指して~」

宮城千恵子氏             (認定特定非営利活動法人カタリバ)

宮城千恵子氏(認定特定非営利活動法人カタリバ)のより、Rootsプロジェクトの取り組み、および参加した外国ルーツの子どもたちと彼らを支える先生たちの変化について発表がありました(詳細は下記の資料参照)。 

パネルディスカッション

矢崎理恵氏                  (社会福祉法人さぽうと21学習支援室チーフコーディネーター)

パネルディスカッションでは、矢崎理恵氏(社会福祉法人さぽうと21学習支援室チーフコーディネーター)、宮城千恵子氏をパネリストに迎え、齋藤ひろみ氏にモデレーターを務めていただきました。 

矢崎氏からは「さぽうと21という『週末のご近所さん』」と題して、さぽうと21の活動と特徴、目指すものについて紹介がありました。子どもが学校で輝き、認められ、地域で見守られ成長することが難しい時に立ち寄れる第3の場所として、「一人も取り残さない」、「参加する人たち皆が本領発揮できる」、そして「とりあえず、いつもそこにある」ことを目指していることがご紹介されました(詳細は下記の資料参照)。 

水野愛乃氏              (福井県立足羽高等学校 生徒)

その後、足羽高校の先生、生徒を含めて様々な議論が交わされました。まず、足羽高校が多文化共生科の取り組みをしていく中で学校全体として変わってきたところについては、授業や校内外の活動において、国籍に関係なく多様な人が関わることが自然だとされているため、日本人生徒の意識が変わり、行動が変わっていくということ、そして、それが可能になってきたのは、生徒たちが自分たちでできるような環境、生徒が授業を作れるような環境を先生方が作ってきたため、という議論がありました。

小園ラウラ氏               (福井県立足羽高等学校 生徒)

また、様々な人がいてでこぼこがある中で、でこぼこを平準化するのではなく、出っ張っている部分に皆で近づけていけたら良いという議論がありました。一方で、学校では生徒を社会に出すために、学校の先生は多くの業務を抱える中での優先順位付けの葛藤があり、かつ地域に迷惑をかけてはいけないという非常に強い思いがあるため、活動を開始する最初にエネルギーが必要となる部分をカタリバが支援しているという話が宮城氏からありました。20年間活動をしてきても日本の10代の若者の2%にも届いていないため、生徒の違った側面を見せる機会をさらに作っていきたいとのことでした。  

クリザニフスキー・ナザール氏            (朝日大学 生徒)

さらに、外国ルーツの子どもたちの力をどう測っていくか、今後社会に羽ばたいて行く共生社会の一員としての力をどう評価するのか、という点で、多くの外国ルーツの子どもたちが持つ、環境を俯瞰して見る力、言葉で伝える力、可能性を模索する力、決断力、困っている人を気にかける点、想像力と寛容性などが評価されていくだろうし、学校外の場での評価が子どもたちの将来を作る上で後押しになる、という議論がありました。さらに、支援者側も想像力と寛容性を意識して持てると良い、また、多くの外国ルーツの子どもたちが持つ上記のポジティブな力を肯定的に評価する企業が増えると良い、という議論がありました。 
最後に、多文化共生社会においてそれぞれの多様性が活きる教育、教育の公正性を実現するには、評価の見直しが必要だという点について議論が及びました。試験の成績のみで評価するのではなく、学習参加のプロセスを評価する仕組みが重要だとの指摘がありました。学校での取り組みとしては、評価の対象や方法を再検討することや、日々の活動時の学びの姿を捉え、それを蓄積していくことなどが期待としてあげられました。それは社会構造を批判的に見直すことと、生徒個人の内面の力の発達を促すことという、両側面の相互作用として捉える必要があるとのコメントがありました。登壇者、報告者の皆さんからの、社会をどう変えられるかを考えながら、引き続き若者の教育的包摂に取り組んでいきましょう、という呼びかけで幕を閉じました。 

いただいたご質問への回答:

当日、時間の関係からオンラインの方々からの質問を受けられなかったため、以下、いくつかの質問について登壇者の方々からの回答を掲載いたします。

Q1. 本日ご登壇の皆様の支援対象は主に10代の若者と推察いたしましたが、就労支援について、若者を問わず、在留する外国ルールの方々にどのように行われていらっしゃいますか。 また、在留資格は人によってさまざま有していると思いますが、現在政府が力を入れ始めている特定技能での就労支援は斡旋していらっしゃいますか。 
 

A1. ➡笹川平和財団および登壇いただいた各団体では、就労支援や斡旋は行っておりません。 

Q2. 学芸大の学生さん(院生含)で外国ルーツの子どもたちの教育支援をしているグループなどありますか? 
 

A2. ➡東京学芸大学がある地域は外国ルーツの子どもがそれほど多くない地域であることもあり、本学には外国ルーツの子どもに対象を特定化して組織的に支援を行う学生グループはないようです。ただ、子ども対象のサークルが複数ありますが、そこには外国ルーツの子どももおり、外国ルーツという特定のカテゴリー化をしなくても接点が生まれています。私の周辺の学生には、小金井市や国分寺市、小平市、立川市で活動している国際協会やボランティア活動団体を、近隣の小中学校から支援依頼があった場合にはその学校を紹介しています。学生の中には、教職科目でギチギチのスケジュールの中で、時間を見つけて活動を始める者もいます。その学生たちの報告からは、外国ルーツの子どもとの関わりを通して成長しているなあと感じることが多いです。(少し質問からずれてしまいましたね。) 

Q3.紹介のあった学校では、使命感を持って共有されているとのことでしたが、そのような教員集団はどのようにして作られたのでしょうか。 
 

A3. ➡私も経緯を詳しくは知らないのですが、校長先生は、地域社会における高等学校の役割について、地域と高等学校の歴史、地域の産業構造の特性、そして近年の地域の外国人住民の増加等を、日本の社会構造の変化等に関連付け、広い視野をもって考えていらっしゃるようでした。そうした話をなさっている中で「この地域にある本校の使命」という発言でした。校長先生には本学のフォーラムで報告いただきました。その報告時のレジュメが次のウェブサイトで公開されていますので、ご覧ください。 

https://kodomonihongo.u-gakugei.ac.jp/.assets/M23_sympo_panel_tsutsumi.pdf 

Q4. 足羽高校の生徒さんから「単位制」という提案がありました。既存の学校システム、制度の運用の中に落とし込むことは可能でしょうか? 
 

A4. ➡近年、福井県の定時制高校は人気があります。理由は単位制や校則など自由な部分が多いことです。全日制高校で単位制を採用している学校の事例も参照できますので、問題なのは単位制を既存の学校システムの中に落とし込めるかということより、既存の学校システムのどの機能を残すべきかを考えることだと思います。大学は単位制ですが、ゼミ(クラスルーム制にあるような人間関係を強制する機能があるシステム)がなければ中退する学生が増えると思いますので、要は単位制とクラスルーム制のバランスが必要です。 

Q5. 足羽高校の生徒さんから「生徒間のグループの固定化」というお話がありましたが、卒業までにその固定化は解消されるのでしょうか。また、解消されたのであれば、その具体的な解決策を教えてください。 
 

A5. ➡多文化共生をどんなに目指していても、生徒間のグループの固定化がなくなることはないと思います。むしろ生徒はグループに分かれ、それを固定化するものだという前提で、それでも各グループが衝突したりせず、ほどよい交流をもてるシステムが単位制✖︎ゼミ形式のクラスルームだという提案です。つまり高校の大学化ですが、これは現在足羽高校で実践している英語の合同授業(2クラス合同の3講座展開で生徒は1講座を希望して受講)からヒントを得ています。 

参考資料:
笹川平和財団_岩品氏資料

笹川平和財団_岩品氏資料

東京学芸大学_齋藤氏資料

東京学芸大学_齋藤氏資料

福井県立足羽高等学校_岡崎氏資料

福井県立足羽高等学校_岡崎氏資料

福井県立足羽高等学校_生徒資料

福井県立足羽高等学校_生徒資料

認定特定非営利活動法人カタリバ_宮城氏資料

認定特定非営利活動法人カタリバ_宮城氏資料

社会福祉法人さぽうと21_矢崎氏資料

社会福祉法人さぽうと21_矢崎氏資料

社会イノベーショングループ 新人流時代の共生社会モデル構築(第3グループ)
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