セミナー 平和構築支援グループ

カルトと暴力的過激主義の交差点

必要とされる介入とは?世界の脱過激化の取り組みから

主催:公益財団法人 笹川平和財団
去る7月の安倍元首相銃撃事件は世界を震撼させ、新たな時代のテロ脅威の予感とともに、容疑者の犯行動機に特定の組織への積年の恨みがあると報じられたことで、思想と宗教が絡むカルト(セクト)の政治性や負の社会的影響に注目が集まっています。戦後、特に日本においては、こうした諸問題は思想や宗教が絡むがゆえに公的介入の対象となりにくく、また、こうした団体の社会的影響についての一般的認識も低く、これが1980年代後半からの一連のオウム真理教事件発生の背景にあったと指摘されています。今回、安倍元首相銃撃事件により、社会的孤立が一層深まる現代のテロ対策の在り方やマインド・コントールにさらされた人々や家族のケアの問題など、官民双方による様々な対応が急務との認識が深まっています。 

カルト団体とマインド・コントロールをめぐる諸問題と近接する形で、世界的には9.11以降、イスラーム過激主義をはじめとする暴力的過激主義への対策(Preventing/ Countering Violent Extremism: P/CVE)が積み重ねられ、急速にテロ対策や元戦闘員の社会復帰の経験が共有されています。実践的な対策のみならず、「過激化」や「脱過激化」とはどのように進むプロセスなのか、また、何を「過激」、誰を「テロリスト」と定義するかについても、政治性が強く、権力側の価値観の押し付けもありうるとの懸念について議論が進んでいます。

笹川平和財団では、こうした状況を踏まえて「カルトと暴力的過激主義の交差点 :必要とされる介入とは?世界の脱過激化の取り組みから」と題したイベントを開催いたします。日本では紹介されることの少ない過激化をめぐる世界的潮流について、本分野における世界的ジャーナル(The Journal for Deradicalization)の共同設立者・編集委員長であるダニエル・ケーラー博士をお迎えし、お話を伺います。ケーラー博士は右翼、左翼、イスラーム過激派メンバーなどの脱過激化に現場で取り組み、さまざまな方法論を開発されている実務者でもあります。また、カルト問題やマインド・コントロールに関する研究を行い、オウム真理教事件では被告人の心理鑑定や専門家証人を担当された西田教授から、カルトにおける過激化や脱過激化を含むマインド・コントロールに焦点を当てた日本の知見や今後の取り組みへの分析もいただきます。思想・宗教の絡んだ犯罪・暴力とどのように向き合うべきなのかについて、考えを深める貴重な機会となりますので、皆様ぜひ奮ってご参加ください。
事務局
笹川平和財団平和構築支援グループ
Email:peacebuilding@spf.or.jp
Tel:03-5157-5181

※取材についてのお問い合わせはコミュニケーション企画部広報課へお願いいたします。
E-mail: spfpr@spf.or.jp
Tel: 03-5157-5389

プログラム

16:30 受付開始
17:00-17:05 開催挨拶
中山 万帆(笹川平和財団平和構築支援グループグループ長)
17:05-17:10 趣旨説明
堀場 明子(笹川平和財団平和構築支援グループ主任研究員)
17:10-18:00 プレゼンテーション
スピーカー:
 ダニエル・ケーラー氏(The Journal for Deradicalization 共同設立者・編集委員長)
 西田 公昭 氏(立正大学心理学部 対人・社会心理学科 教授)
18:00-18:30 コメント・質疑応答
モデレーター:
 堀場 明子(笹川平和財団平和構築支援グループ主任研究員)
18:30 閉会

講演者

ダニエル・ケーラー博士
スピーカー

ダニエル・ケーラー博士

The Journal for Deradicalization 共同設立者・編集委員長

プロフィール

ドイツを拠点に、テロリズム、過激化、脱過激化(右翼、左翼、イスラーム過激派)のプロセスとプログラムに関する研究をおこなっている。12年以上にわたり、複数のプログラムで家族カウンセラーを含む脱過激化に現場で取り組み、脱過激化のための方法論を開発。2014年にドイツ過激化・脱過激化研究所(GIRDS)と共に創設した、脱過激化に関する初のピアレビューオープンアクセスジャーナル(The Journal for Deradicalization www.journal-derad.com)の共同設立者でもある。2016年にアメリカ合衆国ミネアポリスの地方裁判所において脱過激化に関する初の法廷専門家、2017年7月ハーグの国際テロ対策センターの編集委員、2019年11月ワシントンDCのアメリカン大学のPolarization and Extremism Research and Innovation Lab(PERIL)の研究員、2022年イギリスのRoyal United Service Institute(RUSI)のアソシエイト・フェローにも任命され、兼任。博士(政治学、プリンストン大学)。最新の出版物として「From Traitor to Zealot: Exploring the Phenomenon of Side-Switching in Extremism and Terrorism」(ケンブリッジ大学)。

西田 公昭 教授
スピーカー

西田 公昭 教授

立正大学心理学部 対人・社会心理学科 教授

プロフィール

社会心理学を専門とし、マインド・コントロールの問題に関する研究をおこなっている。元日本グループ・ダイナミックス学会長、国際連合安全保障理事会テロリズム対策実行委員会研究パートナー、日本脱カルト協会代表理事。オウム真理教事件でも鑑定人を務めた他、裁判法廷に召喚されること多数。メディアでの解説、国や全国各地の行政機関が主催する講演やシンポジウムに登壇すること多数。安倍元首相銃撃事件を受けて発足した消費庁の検討会「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」や「ステルスマーケティングに関する検討会」 でも委員を務める。博士(社会学、関西大学大学院)。主な著書に、「マインド・コントロールとは何か」 (紀伊国屋書店)、「なぜ、人は操られ支配されるのか」(さくら舎)、「だましの手口:知らないと損する心の法則」(PHP新書)など。

小川 忠氏
コメンテーター

小川 忠氏

跡見学園女子大学文学部 教授

プロフィール

インドネシアを中心に過激化や脱過激化についての調査研究活動をおこなっている。1982年に国際交流基金へ入職、同基金ニューデリー事務所長、日米センター事務局長、東南アジア総局長(ジャカルタ)、企画部長等を経て2017年より現職。博士(国際関係学、早稲田大学)。主な著書に、「インドネシア 多民族国家の模索」(岩波新書)、「原理主義とは何か アメリカ、中東から日本まで」(講談社現代新書)、「インドネシア イスラーム大国の変貌」(新潮選書)、「自分探しするアジアの国々」(明石書店)など。

開催一覧

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