秋山 信将 氏
一橋大学大学院法学研究科 教授/国際・公共政策大学院 院長
笹川平和財団では、2015~2017年度に実施した研究プロジェクトの議論を土台とした書籍「『核の忘却』の終わりー核兵器復権の時代」が出版されたことを記念し、以下の通りパネル講演会を開催いたします。
冷戦終結後、大国間での核戦争の可能性は低下し、オバマ前米国大統領のプラハ演説に象徴されるように、核兵器の役割が縮小するのではないかとの期待が高まりました。しかし他方でこの間、核兵器の安全保障における役割に関する思考が、少なくとも西側において止まってしまったと言われます。「核の忘却(nuclear forgetting)」とはその思考停止の状態を意味しています。しかしその後、地域レベル、グローバルレベルの双方において、核兵器を取り巻く安全保障環境の緊張は高まり、今世界では核戦略論/核抑止論に関する知的基盤の再構築が開始されています。そして「核の忘却の時代」は今終わりを迎えた、と私たちは認識しつつあります。しかし、それは決して核軍縮を否定し、核抑止への依存に安住することを意味するものではありません。
本研究では、21世紀の現在の安全保障環境における核兵器の役割、核抑止の多様性に着目した分析を行い、米ロをはじめ大国の動向、さらに地域レベルでの核抑止の役割、また、科学技術の進展と核兵器との関係にも目を向けつつ議論を試みました。そして日本において、核抑止を巡る議論と現実をタブー視せず、世界の変化の中で、今我々が直面する核兵器を巡る課題に正面から総論的に取り組むことを目指しました。米ソ対立を軸とした冷戦期の抑止論をそのまま適用するのでもなく、時代の変化を捉え、地域や相手によって異なる認識枠組みをもって核兵器、抑止の役割と意味を捉えることが重要となってます。また、核兵器と安全保障を巡る議論の二つの軸、安全保障・抑止論と軍縮・軍備管理の議論を別々に議論し分断させないことも、メッセージの一つです。
本講演会では、執筆陣による本書の議論の紹介と共に、米国から専門家を迎えての特別パネルを行います。核兵器を巡る議論と現実、そして課題について率直な議論を行う機会になればと思っています。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
ビデオを集めたページがございます。ぜひ、ご覧ください。
https://www.spf.org/videos/
10:00 | 開会 |
10:00-10:05 | 開会挨拶 茶野順子 公益財団法人笹川平和財団 常務理事 |
10:05-11:00 | パネル1 “『核の忘却』の終わりー核兵器復権の時代” 執筆者による本の紹介 |
11:00-12:30 | パネル2 特別パネル・ディスカッション |
12:30 | 閉会 |
一橋大学大学院法学研究科 教授/国際・公共政策大学院 院長
防衛省防衛研究所 政策シミュレーション室長
東京大学先端技術研究センター特任助教
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科/総合政策学部 教授
日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター 主任研究員
共同通信社編集委員・論説委員
ブルッキングス研究所上級研究員/元米国国務次官補
元米国国防次官補代理(核兵器・ミサイル防衛担当)