ベトナム軍のレーダーサイトなど視察
日越佐官級交流で防衛省・自衛隊代表団

国防省を訪れた代表団
笹川平和財団(東京都港区、田中伸男会長)が主催する日越佐官級交流で、防衛省・自衛隊の佐官級代表団が12月2日から8日までベトナムを訪問し、人民軍の陸・海・空軍基地などを視察するとともに、軍幹部らとの間で2国間協力を深める重要性を確認しました。
代表団は伍賀祥裕・海将補(海上幕僚監部総務部副部長)を団長に、陸・海・空自衛隊から1佐と2佐各1人、3佐6人、内局から2人の計11人が参加しました。
日越佐官級交流は、笹川平和財団の安全保障事業グループが推進する「日本アジア安保防衛交流」事業のひとつとして、2014年度に始まりました。自衛隊とベトナム人民軍の将来を期待される佐官級の自衛官、軍人が、毎年1回ずつ互いに訪問することにより、相互理解と信頼醸成を促進し、アジア地域の平和と安定につなげることを目的としています。これまでの参加者は今回を含め、計114人にのぼります。
代表団は2日、首都ハノイの日本大使公邸で梅田邦夫大使と面会し、ベトナムの政治、経済情勢や日越関係の現状などについて説明を受けました。
3日には、国防省対外局迎賓館で、同省のシンクタンクである国防戦略院のグエン・コン・スアン国際副課長(上級大佐)ら、また国防国際関係研究所のブイ・スアン・アイン副所長(大佐)らと個別に意見交換しました。この中で伍賀団長は「2014年に始まった笹川平和財団による日越佐官級交流は、今回で9回目になります。今年は日越両国の外交関係樹立から45周年で、戦略的パートナーシップのもと、両国関係が発展していることをうれしく思います。とくに防衛協力が大変活発になっており、歓迎します。今回の訪問を通じ、ベトナムの取り組みを知り、文化も学び、相互理解に基づく協力をさらに深めたい」と述べました。国防戦略院、国防国際関係研究所との間ではそれぞれ、ベトナムの国防政策や地域の軍事情勢、2国間協力などについて話し合われました。

写真左は、代表団に応対する国防戦略院のグエン・コン・スアン国際副課長(左)ら。 写真右は、国防国際関係研究所でベトナム側に質問する代表団のメンバー
この後、代表団は国防省にファン・バン・ザン人民軍総参謀長を表敬訪問しました。総参謀長は「両国の関係は戦略的パートナーであり、ますます価値あるものになっている」と強調したうえで、日本と自衛隊が地域の安定に貢献することへの期待感を表明しました。

国防省でファン・バン・ザン人民軍総参謀長(右端)と会見する代表団
代表団は4日、ノイバイ国際空港に近い防空・空軍の警戒管制レーダーサイトを視察し、361防空師団のグエン・バン・ダイ師団長(上級大佐)らから、防空体制などについて説明を受けました。さらに、代表団はハイフォン市に移動し、海軍司令部でグエン・チョン・ビン副司令官兼幕僚長(少将)らと会い、双方ともに海上自衛隊とベトナム海軍の交流と協力が深まっていることを高く評価しました。

防空・空軍の警戒管制レーダーサイトを視察する代表団
5日には中部ダナン市にある第3海軍区の部隊を視察し、哨戒艇に乗艦しました。また、第3海軍区のボー・バン・トゥエン副司令官(上級大佐)との会見で、代表団に同行した笹川平和財団の茶野順子常務理事は、日越佐官級交流について「財団は安全保障にも力を入れています。日本とベトナムの関係は重要で、忌憚のない意見交換をすることが大事だと考えています。佐官級という国防の将来を担う方々に、実際に相手国を相互に訪問してもらい、友人になって関係を深めていただきたいということが、交流の趣旨です」と述べ、民間主導による交流事業の意義を説明しました。これに対し、副司令官も「こうした交流は相互理解に大いに貢献している」と評価しました。
代表団は6日、同じくダナン市で陸軍第5軍区のドァン・キュウ副司令官(少将)を表敬訪問し、陸軍と陸上自衛隊の関係強化などをめぐり意見交換しました。7日には、カンボジアと国境を接するタイニン省ベンカウ県モクバイにある同省国境警備司令部を訪れ、検問所や国境周辺を視察し、レー・ホン・ボン司令官らから、国境警備の現状と活動などについて説明を受けました。

モクバイでカンボジアとの国境を視察する代表団
日越佐官級交流には、歴史や文化への理解を深めるためのプログラムも組み込まれています。代表団は、ベトナム戦争時代に人民軍の司令部としても使用された、世界遺産の「タンロン遺跡」(ハノイ市)や、かつて貿易港として栄え日本人街もあった「ホイアン旧市街」(ホイアン市)、ベトナム戦争中に米軍に対するゲリラ戦の拠点となり、全長約250キロメートルにおよぶ地下トンネルが張り巡らされた「クチトンネル歴史遺跡」(ホーチミン市)などを見学しました。
(写真 上津原理恵撮影)