また、フォーラム2000開幕日に笹川氏は、タイの高名な仏教僧ヴィサロ師の言葉を引用し、こう語った。
「この世界では、実に多くのアイスクリームが消費され、その市場規模は年間110億米ドルに上る。香水の消費も120億ドルの市場だ。しかし、60億ドルもあれば、世界中の子どもたちに初等教育を受けさせることができる」
だが、暖房の効いた住まいの中で、あるいは高級なコーヒーショップや贅沢なレストランで、豊かな暮らしを享受している裕福なグローバル人、すなわち米国、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、日本をはじめ、その他北半球のいわゆる都会人である我々が、たまの努力さえできないのは残念なことである。
我々は、この世界的規模の問題について、どれほど考え、どれほど貢献しているだろうか。
笹川氏はさらに、「現代社会は、あらゆる人々が平等に受け入れられる世界の実現のために努力を重ねてきた。その一方で、グローバル化によって持てるものと持たざるもののギャップが拡がり、確固たるものになってしまった。我々はこのような不平等を黙認することはできない」と語った。
グローバリゼーションは、我々の信念を揺るがし、我々の文明が真に直面する問題について問いかけた。私のように物質的に恵まれた人間たちは、増加する薬物、通信機器、テレビ、車、加工保存食品に関するニュースといった目に触れやすいものだけを見る傾向があり、この脆い世界を根本から構築し直すことや、壮大で美しい展望を描くことに関するニュースにはあまり興味を示さない。
基本的な立場の再構築が緊急課題である。グローバル化によって、多くの知識と情報がもたらされた。それを活用しようではないか。我々は社会的不平等を解消する計画の策定という役割を果たさなければならない。私は理性が勝利することを望んでいるが、あてにはできない。我々は理性の優位性を失ったのかもしれないからである。